2021.07.12

在宅介護|寝室・居室での環境整備

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

家で最後を迎えるという在宅介護は、行き当たりばったりではできません。事前に環境整備をすることが必要であり、寝室や居室の環境づくりから、衣類にも気を配りたいもの。介護する側もされる側も気持ちよく過ごせるようにし、お互いがストレスを感じさせないような環境作りを行いましょう。

在宅介護の寝室の環境づくり

お年より

寝室の環境として求められることは、睡眠や休息をとる空間として、落ち着くことができる場所であるかということ。安眠のために、ブルーライト対策を取ることが望ましく、テレビやパソコンの設置についてはできるだけ避けるようにしましょう。このほか、照明については、照度は30ルクス以下の設定ができるものを用い、暖色系の明かりを選ぶようにすると、快眠しやすくなります。温度や湿度については、季節や心地よい温度は個人差があるもの。それぞれが心地よいと感じる温度となるように、エアコンなどで調整することが必要です。同時に気を付けたいのが、湿度。湿度は年間を通して50%前後にすることが望ましく、夏の不快感を防ぎ、冬の肌の乾燥や風邪を防ぐことができます。

寝室のリフォームについて

最後まで在宅で診る場合に、寝室のリフォームをするというご家庭が多くなっています。寝室のリフォームで大事なことは、介護する側もされる側も無理がなく、楽に日常生活や介護に関することができるということ。まず、寝室はできれば1階にするようにし、不用意に階段を使わなくても済むようにしましょう。階段を使う生活をすることによって、転倒などの事故の可能性がでてきますし、介護する側にとっても移動が大変です。また、トイレやリビングに近い場所であると、介護される側も生活がしやすく、安心感が違います。介護用ベッドを置き、介護する側も目が離せないときには同室で眠ることができるように、布団を敷くスペースが欲しいところ。床については、フローリングでもクッションフロアにすると、クッション性があって安心ですし、液状のものをこぼしても拭き取りやすく、お手入れが楽です。また、窓から外の風景が見え、できれば緑の木々が見えれば、癒しの効果もあるでしょう。難しい場合は、室内に植物を置くのもおすすめです。

寝たきりならないようなベッド選びを

介護ベッドを選ぶ際には、あらゆることを考慮しなくてはなりません。そのなかでも一番大事なのは、安全性。介護ベッドの場合、JIS規格が表示されている製品かどうかをチェックするようにしましょう。さらに、介護する人の体格や部屋の広さなどを考慮し、ベッドのサイズ選びも重要です。介護ベッドには付属品である、手すりやサイドレール、ベッド上で食事をするときに使う介護用ベッド専用のテーブルの使い勝手もチェックしたいところです。マットレスは、体圧分散マットレスを使うといいでしょう。これは、寝たきりになった場合に、床ずれを防ぐこともできますし、一般的なマットレスより柔らかいので疲れにくいです。これまで自宅で使っていたベッドを介護用ベッドに使われる場合もあるかと思いますが、ベッドの下の部分に空間の無いタイプは避け、ベッドの高さは40~45cm程度が適切とされています。無理なく立ち上がることができる高さのベッドを使わないと、寝たきりになりやすいと言われています。

居室の環境づくり

階段_手すり

居室の環境づくりで大事なのは、部屋の整理整頓、清掃、トータルで清潔な環境を作ること。在宅介護をしている際に、寝たきりという場合を除いて、居室は日中の大部分を過ごす場所。物を取る際には、取りやすい高さや場所にし、たんすの中も用途別に分かりやすく整頓しておきましょう。普段使いのものが取り出しにくい場所に置いてあると、あらゆる場所を探すことになり再度整頓をするというパターンになりがちです。日当たりが良い場所にすることはもちろんですが、温度や湿度もこまめにチェックするようにしましょう。特に介護される側のほとんどはお年を召された年配者であることが多く、湿度の低下は、老人性乾皮症という肌トラブルを起こしやすいので注意したいところです。

居室での衣服について

在宅介護では、要介護者の衣服についても気を配らなければなりません。衣服は、要介護の状態によって、選ぶ衣服が変わります。また、清潔に過ごすために、着替えの回数も注意し、心地よく過ごせるようにしたいものです。

離床できる場合

基本的に前開きのシャツが望ましいでしょう。頭からかぶるタイプのものは、腕や首などに負担が掛かりやすく、介護する側もされる側も大変なことになりがち。袖穴があり、肩幅も広く、少しゆったりしたものがおすすめです。素材は肌に優しいことはもちろんですが、伸縮性のある生地だとストレスも少ないでしょう。ズボンもウエストにゴムの入っているものが望ましく、できれば裾もゴム入りのものがおすすめです。裾にゴムが入っているものは、裾を踏んで転倒を防ぐことができ、着替えもしやすいです。

麻痺などで、普段着が着られなくなった場合

麻痺があると、自分で洋服を着ることができなくなり、着る洋服も難しくなってきたります。前開きのシャツが望ましいのは、要介護の普段着選びの基本です。麻痺がある場合は、麻痺のある方から先に着るようにし、右腕や右側に麻痺がある場合は、右側から着ると、着替えが少し楽になります。また、気を付けたいのが寒い時期。多めに着こむと着替えがしにくいので、保温効果のある肌着を上手に利用することで、着こむ枚数を減らすことができます。

要介護度が4・5で寝たきりに近い場合

要介護度が4・5となると、自分で着替えることができず、介護する側が着替えをさせることになります。この場合、前開きはもちろんのこと、さらに上下がつながったタイプだと着替えをさせやすいでしょう。浴衣はこれらの条件にピッタリです。素材も肌に優しく、大きさもゆとりがあるのでおすすめ。介護する側も毎日のことですから、少しでもストレスをないような衣類を選ぶようにしましょう。浴衣は柄に個性があるので、好きな柄を選んでもらうのも介護される側にとって楽しみになるはずです。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。