2021.08.26

在宅介護|終末期の食事・排泄・清潔保持について

最終更新日:2021.08.26

終末期は生きていれば必ず訪れます。最期の時間を住み慣れた自宅で迎えたいという方もいらっしゃいます。終末期における在宅介護は、体調に応じたケアが重要なポイントとなります。こちらの記事では、終末期の食事や排泄、清潔保持のケアについて分かりやすく解説していきます。

終末期とは

看護

「終末期」とは、人生の最期を間近に迎えた状態を意味し「ターミナル」とも呼ばれます。病気に対して治療が望めない方に対し、延命治療をせず満足いく最期を迎えるためのケアは「終末期ケア」。治療を平行しながら、終末期の苦痛を緩和していくケアが「緩和ケア」です。自宅で終末期を迎えるためには、医療と看護、介護との連携が重要となります。食事や排泄、清潔保持といった基本的なケアも、日々変化する身体状況に合わせたものでなくてはいけません。不安なことはひとつひとつ確認しながら、本人が心地よく過ごせる環境づくりを心がけましょう。

終末期の食事について

食事_介護

終末期は体力が低下し、口から食事を摂取することが難しくなる場合もあります。食事形態や回数、摂取方法などは、医師と相談しながらその都度判断していきましょう。

終末期の食事量低下

終末期を迎えると、食事量や水分量が低下していきます。しかし、口から食事を摂ることは口腔機能や嚥下機能維持のためにも大切です。好みのものを「食べる」という行為は、精神の安定にもつながるでしょう。嚥下機能が維持できている場合は、食べたいものをひとくちサイズにカットし、好きなときに食べられるよう準備しておきます。身体状況が悪化しているときには、食べられる時間も不規則になってくるからです。ただし、経口摂取にこだわりすぎると体調悪化へとつながる可能性もあります。食事内容や形態は、主治医と相談しながら検討していきましょう。

経口摂取が難しい

終末期になると「飲む」「食べる」といった嚥下機能が低下していきます。そのため、それまでのように口から食事を摂ることが難しくなっていくのです。嚥下機能が低下した場合には、食事をミキサーにかけペースト状にしたり、プリンやゼリーのような軟らかいもので対応したりします。しかし、本格的に経口摂取が難しくなると、これらの形状でもむせてしまうこともあります。経口摂取が難しくなった時に心配されるのが「誤嚥(ごえん)」です。食物が気管に入り込こむと感染を引き起こし、状態が悪化する可能性もあります。そのため、終末期には経口摂取が可能であるか慎重に判断する必要があるのです。

経口摂取が難しい場合の対応方法

看護師

医師により経口摂取が難しいと判断された場合には、以下の4つの対応が検討されます。

● 中心静脈栄養法
● 末梢静脈栄養法
● 胃瘻
● 経鼻経管法

それぞれの方法について詳しく確認していきましょう。

中心静脈栄養法

中心静脈栄養法は、鎖骨の下にある静脈などにカテーテルを通し、高カロリー輸液を投与する方法です。生命維持に必要な栄養素を、点滴によって身体の中に取り込みます。末梢静脈栄養法に比べ、長期間カテーテルを留置できるのが特徴です。

末梢静脈栄養法

腕などの末梢静脈にカテーテルを通し、栄養補給する方法です。輸液やアミノ酸製剤、脂肪乳剤などの組み合わせにより、1日1,000~1,200kcl摂取することができます。中心静脈栄養法とともに、腸の消化機能が不十分な場合に選択される方法です。

胃瘻

胃に直接穴をあけ専用のチューブを挿入し、栄養を送り込む方法です。在宅でも管理が可能であり、誤嚥が改善されるケースもあります。消化機能が正常であり、経口摂取が長期にわたり難しい場合に検討される方法です。

経鼻経管法

鼻または口からカテーテルを通し、栄養を送り込む方法です。胃瘻と比べ、経口摂取が難しい期間が短い場合に検討されます。チューブを定期的に交換したり、顔に当たる部分の皮膚がかぶれたりしないように留意する必要があります。

終末期の排泄について

介護士

終末期になると体力が低下し、それまでのように自力で排泄することが難しくなるものです。また、身体状況が悪化すると排泄が困難になるケースも見受けられます。排泄状況から体調を確認するためにも、介護者は以下のような点に注意しましょう。

おむつの着用

終末期になりトイレでの排泄が難しくなると、おむつを着用する必要があります。しかし、介護される側にとって、排泄は自尊心に深く関わる問題です。家族におむつ交換されることに抵抗を感じるケースもあるでしょう。おむつ交換をする場合には、思いやりをこめた声かけが大切です。「きれいにしましょう」「今日の体調はどう?」と声をかけながら行うとよいでしょう。

便秘での苦しみ

終末期になると、薬や消化機能低下の影響で便秘になるケースが多く見受けられます。便秘でお腹が張るのは、終末期の方でも苦しいものです。便秘に対応するためには、まず原因を明らかにしなくてはいけません。適切な薬を服薬したり、浣腸や摘便を行ったりするのもひとつの方法です。決して素人判断せず、主治医に相談しながら対応を検討しましょう。

血尿・尿の濁り

終末期になると、食事や水分摂取量の低下により尿量も減少していきます。しかし、そのような中で尿に血液が混じっていたり、濁っていたりする場合には、なんらかの異常が予測されます。介護者は発見次第、なるべく早急に主治医や看護師に相談しましょう。

終末期の清潔保持について

介護_清潔保持

終末期の清潔保持は、感染予防にもつながります。身体が温まる入浴には、リラックス効果も期待できます。終末期だからこそ、スキンシップをはかりながら行う清拭や入浴は大切な時間。一方で介護負担も大きくなるため、周囲のサポートを活用することがポイントです。

清拭

清拭は、温めたタオルやガーゼなどで身体を拭いて清潔にするケアです。寝たきりの場合には、褥瘡ができていないか皮膚状態を確認できるというメリットもあります。ベッド上で清拭を行う場合には、体の部分ごとに分けることがポイント。拭く部分だけを露出させ、身体が冷えないように気を付けましょう。一度に全身を行うのでなく、日によって清拭部分を分ければ介護負担を軽減することもできますね。また、可能な場合は洗面器にお湯を張り、足浴をするのもおすすめです。体力がなく浴槽につかるのは難しい場合でも、満足感を得られます。家族にとって、本人が気持ちよさそうにしている姿は大きな喜びへとつながるでしょう。

訪問入浴介護の利用

本人の体力が弱っている場合には、入浴介助には複数人のサポートが必要になります。特に、入浴は血圧の変動をもたらすため、看護師や介護職の力を借りるのが安心です。胃瘻のチューブや褥瘡の処置にも対応できるため、終末期には「訪問入浴介護」を利用しましょう。訪問入浴は、看護師1名を含めた2~3名が自宅を訪問し入浴を提供する介護サービスです。医師から入浴の許可があり、要介護1~5に認定されていれば利用できます。希望する際は、まずは担当のケアマネジャーに相談してみましょう。

終末期での介護者の注意すべきこと

介護

終末期には、食事や排泄といったさまざまな面で変化が訪れます。家族にとって在宅でそれらをケアすることは、身体的にも精神的にも決して簡単なことではありません。終末期を迎える本人にとっては、ともに過ごす家族の健康があってこそ、穏やかな時間を過ごすことができます。そのため、終末期には医療や看護、介護といった周囲のサポートを活用し変化を見守ることが大切です。多くの人と支え合いながら、本人にとって最善の環境を整えていきましょう。

 

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。