2022.01.05

簡単生活リハビリ「歩行と目線の関係|転倒しやすい時期とは」

最終更新日:2023.02.01
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

歩行と目線の関係について

歩行と目線の関係

皆さんは、普段歩いているときにどこを向いて歩いていますか。このようなことは普段歩いている際、全く気にしない方がほとんどだと思います。しかし、歩く際の目線が歩きの安定性に大きく関わっています。

意識するポイント

足腰が丈夫で、歩きに不自由のない方であれば、目線は自ずと進みたい方向や目標となる物に向かっているはずです。しかし、加齢とともに足腰が弱くなると歩きに自信がなくなり、足元を気にするようになり、目線が徐々に下に向いていきます。

歩行と目線の関係

人は歩いている際に、目の前の障害物をいち早く察知するため、どんなに足元が悪い状況でも数メートル前方を向いています。そして、障害物を事前に認識し、安全に避けるための方法を考え、余裕を持って障害物を避ける動作に移ります。しかし、目線が下を向いている方の場合は、視野が前方を向いていないため、事前に障害物を察知することが出来ません。そのため、障害物に近づいてから察知し、安全に避ける方法を考える間もなく、急いで障害物を避ける動作に移ります。急いで避けようとすると、不意に足がもつれたり、ふらつく危険性が高くなります。若い方であれば、足がもつれたとしても体が反応し、体勢を立て直すことが出来ますが、お年寄りの方では、体が反応できず転倒してしまいます。歩きに自信のない場合、どうしても目線を足元に向けてしまいがちですが、転倒を防ぐためには目線を前方に向け、少しでも早く障害物を察知し、安全に避けるための余裕を持つことが非常に重要です。

以下、歩く際のポイントです。
① 少し歩幅を広げて大股で歩く。
② 「踵から着いて、親指の付け根で蹴る」意識をもつ。
③ 顎を引いて、目線は高く、前方に向ける。
④ 腕を振る時は、肘を後ろに引く意識を持つ。
まずは普段から歩いている際の目線を意識し、目線を1mでも前に向けるような意識で歩いてみましょう。

歩く力を維持するために意識したいポイント

歩く力を維持するために意識したいポイント

歩幅を広げて大股で歩く

衰えやすい股関節の動きや筋力を保つ上でとても大切なポイントです。急に大股で歩くと筋肉を傷める場合がありますので、普段の歩幅よりも気持ち広くする程度から始めるようにしましょう。

踵から着いて、親指の付け根で蹴る

歩く際に足首や足先の力を効率的に使う上で重要なポイントです。また足首も動きが固まりやすく、筋力が低下しやすい部位になりますので、ポイントを意識することで足のはたらきを維持しましょう。

顎を引いて、目線は高く、前方に向ける

前方の障害物に注意を向けやすくすることと併せて、体幹の効率よく使うことが出来たり、周りの視覚情報を手掛かりにバランスが取りやすくなります。

腕を振る時は肘を後ろに引く意識をもつ

腕を後ろに引くことで、体の捻りなど、全身を使って歩く事ができ、歩き=全身運動にするにはとても大切なポイントになります。皆さんもおでかけや散歩の際には、ぜひ意識してみてください

転倒の危険性について

転倒の危険性

転倒は季節ごとに発生率が異なると言われています。季節別には「冬」に最も発生しやすく、「夏」に少ないと言われています。今回は転倒が「冬」に多くなる原因と対策について、取り上げていきたいと思います。

なぜ冬に転倒発生率の上がるのか

日が短くなり、暗い時間帯が増える

人は目からの情報、体(足の裏や関節)からの情報、耳(三半規管)からの情報で体のバランスを取っています。中でも目からの情報はとても重要で、3つの情報のうち60%を目からの情報に頼っていると言われています。特に高齢者の場合、バランスを取る上で目からの情報に頼りやすくなります。そのため、日が短くなり暗い時間が増えると目からの情報が少なくなり、バランスを崩しやすくなってしまします。

厚着になることで感覚が鈍くなり、動きも制限される

厚手の靴下や靴下の2枚履きなどをすることで体からの感覚も鈍ってしまい、更にバランスを崩しやすくなってしまいます。

筋肉がこわばりやすく、柔軟に動けない

冬になり気温が低くなると体は無意識に筋肉を震わせ熱を生成しようとします。冷え込みが強くなってくると体を守るために、筋肉を動かす働きより熱を生成する働きを優先するようになります。そうすると筋肉がこわばりやすくなり、柔軟な動きができなくなってしまいます。

転倒の対策方法

家の外にでる用事は明るい時間に済ます

外出する場合はリュックなどで両手を空けるようにしましょう。

 家の中にいる際は照明をつけ明るい状態を保つ

可能であれば、就寝時も間接照明などを点けておくことをお勧めします。

家の中にいる際はなるべく厚手の靴下や2枚履きは避ける

着用する場合は、コードなどの配線や敷物など躓く原因を減らしましょう。

外出する場合は保温性の高い肌着を着用しましょう

以上、例として対策を挙げさせていただきました。この冬を転倒しないように乗り切りましょう。

加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。