2022.02.03

簡単生活リハビリ「立ち上がり動作」

最終更新日:2022.07.25
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

足首や足の指が変わるだけで生活が変わる

立ち上がり動作

足首や足の指の働きとその重要性について取り上げたいと思います。足首や足の指は頭から一番遠い所にあるため、その動きが一番意識されにくい体の部位になります。しかし、足首や足の指は体の中でも特に重要な働きをしております。今回は大きく3つの働きをご紹介致します。

足の裏で体重などの感覚情報を受け取る

足の裏で体重の感覚情報を受け取ることができないと、筋力はあるのに立ち上がりや歩く際に上手く力を発揮することができないことがあります。私の経験上でも普段は1人で立ち座りすることが出来なかった方が、足の動きを良くするだけで立ち座りができるようになった例が多くありました。

柔軟に動くことで、体のバランスを保つ

足首や足の指の柔軟性が乏しいと、立ち仕事や歩く際にふらつきの原因になってしまうことがあります。また足首が固いと膝などの隣合う関節に負担がかかり、痛みの原因にもなります。反対に足首などの柔軟性が高ければ、ふらつきや痛みの予防になります。

第2の心臓として、血液循環を促す

足首を動かすふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」とも言われており、体の血液循環を保つためにとても重要な機能を持っています。そのため、そのような筋肉が弱いと血液循環が悪くなり、浮腫みや冷えの原因になることがあります。

足首や足の指の働きを保つには

ふくらはぎの筋肉は第2の心臓

タオルギャザー

タオルギャザー

①タオルを床に広げます。
②タオルの端に片方のつま先を乗せます。
③足の指でタオルを手繰り寄せていきます。
※つま先を乗せた反対側に水を入れたペットボトルなどを入れることで一層鍛えることができます。

踵上げ運動

踵上げ運動

①足を肩幅に開き立ちます。
②両足の踵を出来る限り高く上げます。
③ゆっくり踵を降ろしていきます。

椅子から立ち上がり動作について

椅子から立ち上がり動作について椅子から立ち上がり動作について

椅子からの立ち上がりは「①お辞儀をしながら、体重を足に移す」⇒「②お尻を持ちあげる」⇒「③体を起こし立ち姿勢になる」という相に分解できます。一般的には「お尻が挙がりづらい、お尻が重く感じる」というように②の相が大変で立ち上がれないと方が多くいらっしゃいます。しかし、そのような方の多くは①の「お辞儀をしながら体重を足に移す」相で失敗している方が多く見受けられます。そのような方は、立ち上がる際に机の淵を逆手で持って立ち上がる(図1)、プッシュアップで立ち上がる傾向にあります。立ち上がり時にお尻が持ち上がりにくい方も①のお辞儀の方法を見直すことで、立ち上がりが容易になることがあります。では①の相を上手くする行うにはどういう意識を持ち、運動をしたら良いのでしょうか?

立ち上がる際のポイント

立ち上がる際のポイント

まず立ち上がる際のポイントは、「足元を覗き込むようにお辞儀をする意識」を持つことです。①の相を円滑にする運動やレクリエーションとしては、「輪投げ」や「玉入れ」があります。なるべく的に手を伸ばすように投げることがポイントです。ぜひ玉入れや輪投げ後に立ち上がりの困難感が変わるかどうかを確認、実感頂ければと思います。

椅子やベッドの高さと立ち座り動作について

椅子やベッドの高さと立ち座り動作について

一般的に自分に合った椅子の高さは「深く椅子に腰かけた時に太ももの裏が着いており、足の裏がしっかり着ける高さ」になります。概ね38~40cm程度の高さになります。食卓の椅子など、一般的な椅子はこの高さになるように設計されているようです。椅子の高さの違いによって、立ち座りする際に足や腰にかかる負担が変わってきます。座っている位置が低くなるほど立ち座りは大変になり、高くなるほど立ち上がりやすくなります。低い位置から立ち上がる際は、腰や背中の筋力が要求されます。反対に座る際は、脛の前にあるつま先を上げる筋力が要求されます。そのため、圧迫骨折などで腰や背中に力が入りづらくなると低い位置からの立ち上がりも大変になってしまいます。また足に痺れや痛みがあり脛の前に力が入りづらい方は、座る事が大変になり尻もちを着くように勢いよく座ってしまいます。

立ち上がる際のポイント

上記のことから、皆さんに生活上で注意して頂きたい点をまとめます。
①圧迫骨折や腰痛があり腰に痛みがある方、腰・背中に力が入らない方
②脚に痺れや痛みがあり、つま先に力が入らない方
以上のような方は、座椅子などの35cmより低い椅子に座るのは控え、椅子やベッドは40cmを目安に高さに設定しましょう。反対に足の筋力や腰や背中を鍛えたい方は35cm程度のやや低い高さに設定し、生活の中で立ち座りの練習をして頂ければと思います。

誤解されやすい立ち上がる際のポイント

誤解されやすい立ち上がる際のポイント 誤解されやすい立ち上がる際のポイント

「お辞儀をしながら立ち上がる」ことが取り上げられやすいです。お辞儀をすることで体重が足にかかりやすくなり、立ち上がりが容易になるという体のメカニズムがあります。一方で「お辞儀をしながら立ち上がる」ことは、誤解されやすいポイントでもありますので、今回取り上げて参りたいと思います。
 結論から申し上げると「お辞儀をしながら立ち上がる」を正式に言うと「背中を伸ばし、頭の位置を高く保ちながらお辞儀をして立ち上がる」事になります。例えば背中が丸いまま立ち上がろうとすると、足に体重が乗せる事ができず、立ち上がりが大変になります。(図1)また背中丸いことで頭の位置が下がってしまい、体を起こしていく際に多くの力が必要になり、非効率な立ち上がり方になってしまいます。(図2)
 このように背中が伸びた状態と背中が丸い状態では、「お辞儀をしながら立ち上がる」ことを意識した際の効果が変わってきてしまいます。皆さんは是非、「背中を伸ばし、頭の位置を高く保ちながらお辞儀をして立ち上がる」ように意識していきましょう。

加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。