2022.02.04

健康に過ごすために欠かせない口腔ケアとは

最終更新日:2022.02.04
東海林 さおり
看護師

8020運動とは

8020運動とは

8020運動とは、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。1989年より、厚生労働省と日本歯科医師会が推進しています。80歳の基準は、日本の平均寿命からです。つまり、寿命を迎えるまで自分の歯を残し、自分の歯で食事を楽しもうという考え方です。自分の歯が20本残っていれば、食事を楽しめるとされています。

歯の残存数と歯周病の関係

歯の残存数と歯周病の関係

寿命を迎えるまで歯の残存数を増やすためには、歯周病対策が重要です。歯を失う原因のひとつが、歯周病だからです。歯周病になる原因は、細菌要因・環境因子・老化と病気の要因があります。毎日の歯磨きで歯垢を取り除かないと、次第に歯石へと変化するため注意が必要です。歯垢や歯石には歯周病菌が多くあり、歯を支える部分を溶かし歯が抜ける原因になります。歯周病というと歯の病気と考えるかもしれませんが、実は全身の病気とも関係があります。高齢者特有の問題を引き起こすリスクのひとつが歯周病のため、注意しましょう。

転倒リスクが2.5倍

歯周病になり歯の残存数が少なくなると転倒リスクが高まります。20本の歯が残っている人に比べて、19本以下で義歯を使用していない人は、転倒リスクが2.5倍になるといわれています。転倒しやすくなる理由は、歯が少ないとふらついた際に噛みしめないからです。高齢者が転倒すると、寝たきりの原因になるかもしれません。転倒により骨折や怪我をすれば安静が必要で、高齢者が長期の安静で筋力を失う可能性があるためです。

認知症

歯周病になると、高齢者の認知症リスクが高まるとされています。認知症リスクが高まる理由は、歯が少ないと噛む行為が減り、脳への刺激が少なくなるためです。噛む動作は、脳の海馬という記憶力に関係する部分を刺激しています。また、歯周病菌の毒素が、脳へ影響を与える可能性も指摘されています。高齢者が認知症になれば、日常生活に支障があるでしょう。認知症は老化による物忘れとは異なり、何らかの病気が関係しています。徐々に脳の神経細胞が壊れていき、理解力や判断力が低下するため注意が必要です。

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは

口の中の健康を保つため、オーラルフレイルが重要です。オーラルフレイルとは、口腔機能障害の初期段階のことです。早めに口腔機能の低下に気づき予防できれば、歯を残し食べる機能を維持できるでしょう。しかし、オーラルフレイルの初期段階は、本人が気づかない場合があります。周りの人や専門家のサポートで、早めに気づき対策することが重要です。

セルフチェックしたい人は、以下の項目に当てはまるか確認してみましょう。チェック項目が多ければ、オーラルフレイルのリスクがあると判断できます。
● 食事でむせる
● 柔らかいものを好む
● 滑舌が悪い
● 口が乾きやすい
● 口臭が気になる
● 食事で顎が疲れる
● 食欲が落ちている
● 食事でこぼす

口腔ケア

口腔ケア

口腔ケアとは、歯磨きで綺麗に保つ、口腔機能を保つためのケアです。歯・舌・歯茎・粘膜など幅広いケアをしながら、嚥下や咀嚼機能を高めます。毎日の歯磨きから歯医者でのケア、口腔機能のトレーニングやリハビリなどです。また口腔ケアは、器質的口腔ケア・機能的口腔ケアの2種類があります。それぞれどのような口腔ケアなのか、次の項目で詳しく紹介します。

器質的口腔ケア

器質的口腔ケアとは、口の中を清潔に保つためのケアです。具体的には、歯磨き・うがい・舌の清掃などが当てはまります。正しく歯を磨き、歯垢を取り除いていきます。また、義歯や入れ歯などを付けている場合は、それらの清掃も必要です。口の中の汚れは歯だけでなく、舌や頬の内側にも付着しているため、口腔内全般を清潔に保つことが重要です。

機能的口腔ケア

機能的口腔ケアとは、口を動かすための機能ケアのことです。具体的には、食べる・話す・表情をつくるための筋肉や舌の動きをケアします。食べ物を飲み込む嚥下機能も、トレーニングしないと衰えてしまいます。ケアでは、口の中や周りのマッサージ方法があります。舌を動かすトレーニングや、口や顎の筋肉を鍛えるトレーニングも重要です。口や舌のトレーニングは、発音を良くし、顔の表情を豊かにできます。食事やコミュニケーションのため、機能的口腔ケアを取り入れましょう。

口腔フローラとは

口腔フローラとは

口腔フローラとは、口の中にある細菌類の様子のことです。腸内フローラと同じように、口の中にも善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類があります。口の中が健康であれば、悪玉菌より善玉菌が多い状態です。善玉菌は良い働きをする常在菌のことで、善玉菌が多ければ虫歯や歯周病の予防ができます。口腔フローラのバランスを整えるためには、毎日の歯磨きや歯医者での歯のケアが大切です。歯周病菌は薬剤でなくすのではなく、歯垢や歯石を取り除き、悪玉菌が増殖しない環境を整えます。ただし、自分でやる歯磨きは見える部分しかケアできません。歯周ポケットに歯周病菌が残ったままになるため、数か月ごとに歯医者でのケアが重要です。

口腔ケアで生涯医療費が700万円節約できる

口腔ケア生涯医療費

日本歯科医師会が発表したデータによると、口腔ケアで生涯医療費が少なくなることがわかりました。歯が0~4本残っている人の歯科医療費は517,400円です。一方で、歯が20本以上残っている人は、341,500円でした。また歯が少ない人より、歯が20本ある人は糖尿病や虚血性心疾患の医療費も少なくなることがわかっています。歯が残っておりしっかり噛むことができると、肥満予防にもなります。口腔ケアは口の健康を守るだけでなく、結果的に全身の健康対策にもなるものです。

まずは毎日セルフケアをしてみよう

セルフケア

高齢になっても健康で過ごしたいなら、まずは歯のセルフケアからやってみましょう。口腔ケアの基本は、自分での歯磨きからです。毎日きちんと磨いているつもりでも、磨き残しがある人は少なくありません。歯医者では歯磨きの指導もしてくれるため、正しい歯磨きのやり方を覚えておくとよいでしょう。また口のトラブルや飲み込みづらさの問題があるなら、専門家への相談がおすすめです。口のマッサージ、舌や顎の筋肉トレーニングなども試してみましょう。

東海林 さおり
看護師
看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。