2022.02.16

歯周病が原因で起きる様々な全身の症状とは

最終更新日:2022.02.16
東海林 さおり
看護師

歯周病と全身疾患の関係

歯周病が原因で起きる様々な全身の症状

口腔内の病気として知られる歯周病は、細菌への感染によって引き起こされます。炎症性疾患の一種であり、歯茎や歯を支える骨が溶けてしまう病気です。歯周病になる原因はいくつか挙げられますが、基本的には口腔内の清掃が行き届かず、不衛生な状態が続くことで発症するケースがほとんどです。最終的には歯を失うこともある歯周病ですが、実は全身疾患とも関係があることをご存じでしょうか。歯周病が糖尿病や心疾患、脳梗塞などの症状を引き起こす、悪化させる可能性があるといわれているのです。以下、歯周病と関わりのある疾患についてまとめました。

糖尿病

糖尿病は、血液中の血糖が増え続ける病気です。血糖値が高い状態が長く続いてしまうと、血管にダメージを与えてしまい、さまざまな病気を併発してしまいます。糖尿病がおそろしいといわれるのは、自覚症状がほとんどないからです。そのため、治療を受けずに放置してしまい、気づいたときには手遅れ、といったケースも少なくありません。歯周病になると、炎症関連の化学物質が歯周ポケットから血流にのり、血糖値を下げるインスリンの効果を下げてしまいます。それにより、糖尿病の発症、進行を早めることになるといわれています。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物が肺に入ってしまい発症する肺炎です。食事中のむせこみや喉の鳴り、唾液が飲みづらいといった症状があり、重症化すると呼吸が苦しくなることもあります。高齢になると、肺や気管への異物混入を防ぐ機能が低下し、口腔内の細菌を肺に取り込むことがあります。この細菌が歯周病菌だった場合、誤嚥性肺炎になる可能性が高くなるといわれているのです。そのため、誤嚥性肺炎を防ぐ意味でも、口腔内を衛生的に保ち、歯周病をコントロールしなくてはなりません。

動脈硬化

動脈の壁が厚くなり、硬化してしまう病気です。動脈硬化は、中高年に発症する病気だと思われがちですが、実際には若い方にも発症します。慢性的な血管の炎症や、血管内への脂質の蓄積など、さまざまな要因によって動脈硬化は引き起こされます。また、近年では、動脈硬化の病巣から歯周病菌が発見されたとの報告がありました。歯肉から歯周病菌が血管に入り込み、炎症を起こして動脈硬化を悪化させていると考えられています。

心臓病

狭心症や心筋梗塞など、心臓に関連する病気です。動脈硬化が原因となり引き起こされるケースが多く、最悪死にいたってしまうこともあるおそろしい病気です。心臓病の原因は多々挙げられ、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどが代表的ですが、実は歯周病菌をはじめとする細菌への感染も原因といわれています。歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化を引き起こして結果的に心臓病へと結びつく、と考えられているのです。

脳卒中

脳卒中とは、脳血管の詰まりや破れなどにより、血液が脳に届かなくなってしまう病気です。脳に十分な血液が届かなくなってしまうと、神経細胞が損傷してしまい、さまざまな疾患を引き起こしてしまいます。近年では、歯周病で動脈硬化が進むことにより、脳卒中のリスクを高めることがわかりました。ある研究では、歯周病が脳卒中の発症リスクを、約1.9倍にも高めると発表されたのです。また、脳卒中だけでなく、脳梗塞のリスクも約2.7倍になるといわれています。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、認知症の中でもっとも多い病気です。脳の神経細胞にダメージを与え、脳を委縮させてしまう病気であり、記憶障害や理解力、判断力の低下など、さまざまな症状を引き起こします。認知症の中でも、アルツハイマー型は若者にも発症することがわかっています。特殊なたんぱく質が神経細胞を破壊してしまい、若年性アルツハイマーが引き起こされるのです。海外の研究では、アルツハイマー型認知症患者の脳から、歯周病菌が発見されたとの報告があります。そのため、現在では歯周病とアルツハイマー型認知症の関連を、多くの機関が研究しています。

関節リウマチ

間接リウマチは、免疫異常により関節に炎症が発症し、痛みや腫れなどを引き起こす病気です。症状がより悪化してしまうと、関節の変形や機能障害を引き起こすこともあります。関節リウマチの原因はいくつもありますが、歯周病も原因のひとつだと考えられています。歯周病菌の一種であるポルフィロモナス菌が、シトルリン化タンパクを生成し、抗CCP抗体が作られることで、関節リウマチが発症するといわれているのです。

早産・低体重出産

早産とは、予定よりも早く出産してしまうこと、低体重出産は通常よりも低い体重で赤ちゃんが生まれてしまうことを指します。歯周病による、さまざまな病気への関与が明らかになっていますが、実は早産や低体重出産にも関わっていることが、近年の研究でわかっています。妊娠している女性が歯周病を発症していると、早産や低体重出産のリスクが高まるといわれているのです。血中に入った歯周病菌が、胎盤を通して胎児に感染してしまい、それによって早産や低体重出産につながるといわれています。

睡眠時無呼吸症候群

上気道が狭くなることで引き起こされる病気で、睡眠中に幾度となく無呼吸になってしまいます。舌が大きい、鼻の病気にかかっている、肥満であるなどさまざまな原因があります。日中の強い眠気や習慣的ないびきなどが、代表的な症状です。治療法はいくつかありますが、歯周病を発症していると、適用できない治療もあるため注意が必要です。

病気にならない為にしっかりと歯を磨こう

歯周病が原因で起きる様々な全身の症状

歯周病と全身疾患の関係について解説しましたが、いかがだったでしょうか。歯周病がさまざまな全身疾患の発症リスクを高め、ときに症状を悪化させることを理解できたでしょう。このような事態を回避するには、歯周病の発症を防ぐことが大切です。日常的にしっかりとブラッシングを行い、口腔内を健康的に保つことが歯周病の発症を防ぎます。病気にならないため、まずはしっかりと歯を磨くことを心がけてください。セルフケアだけでは、十分なケアができないケースもあります。誤った方法で歯を磨いてしまっている方も、少なくありません。現在では、多くの歯科医院において、歯周病予防のアドバイスや診療を提供しています。気になる方は、歯科医院に一度相談し、そのうえで予防やケアを実践してください。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。