2022.01.24

終活のススメ|エンディングノートの活用について

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

エンディングノートとは

終活エンディングノート

終活のひとつとしてエンディングノートの作成があります。エンディングノートは、もしもに備えて自分に関する情報や気持ちを書いておくノートです。作成する人が増え、文房具店などに市販品も並んでいます。書き方に悩む人は購入して作成すると便利ですが、手元にある気に入ったノートへ書いても全くかまいません。ここではエンディングノートをつくるメリットとデメリットを解説します。

メリット

エンディングノートは思いついたそのときから、書く物さえあれば作成ができます。家族を初め周りの人へ自分の気持ちや考えを残す以外に、自分の考えをまとめ思考を整理することもできます。年齢を重ねると体力だけでなく認知機能の衰えも現れるため、自分の考えをまとめられるうちに書き残した方が自分で気持ちをふり返る手段にもできます。エンディングノートをつくるメリットは、思い出の記録・家族の負担軽減・心の整理などがあり、それぞれについて説明します。

思い出をいつまでも残しておくことが出来る

自分の心の中にある思い出は、もしかすると加齢とともに忘れてしまうかもしれません。エンディングノートへ書いておくと、思い出すきっかけになる可能性があります。家族とだけでなく友人・知人との思い出、お世話になった人も書いておくと、交流のある人がわかり、もしものとき連絡してもらえます。可能であれば親しい友人・知人の顔写真を貼っておくと、家族が連絡をとりあいさつをしやすくなります。

万一のとき、家族を悩ませる負担を軽減できる

例えば深刻な病気などで家族が余命宣告を聞いた場合、自分に教えて欲しいかを書いておくと家族が対応に迷わずにすみます。末期状態になったとき、延命措置はするか、する場合どこまで希望するかなどを記すと自分で意思決定ができ、家族任せになりません。万一のときとは自分が亡くなったときだけではなく、認知症の悪化などで意思決定ができなくなった状態も含みます。家族が代わりに意思決定を任される場面があり、本人の気持ちを知らないまま決めると、そのあとも判断は正しかったのかと引きずるかもしれません。家族の心的負担を軽くするためにもエンディングノートへ、して欲しい対応を書き残しましょう。

気持ちの整理ができる

エンディングノートをいざ書こうとすると死について考え、怖くなる可能性もあります。まだ元気だからと後回しにしたくなるかもしれません。しかしあえて今の気持ちをまとめ死に対して落ち着いて考えると、恐怖心や悲しみを整理する機会になります。エンディングノートを書く機会は1回に限らず、自分のペースで定期的に書き換えてかまいません。回数を重ねるうちに死と向き合い、冷静な自分の考えがまとまってくるでしょう。受け入れがたい死も自分にも起こることとしてとらえ考え続けると、自然なものと思える日がくるはずです。書く内容は自由ですが、例えば人生をふり返って行ったことのある場所やもう一度行きたい場所、行きたいが行かないままでいる場所など書き出してみましょう。人生のうちでやりたいことを書いておき、達成するたび内容を書き換える方法もあります。改めてこれまでをふり返ると、その後の生活を充実させるきっかけにもなります。やり残したと考えず、やりたいことがたくさんあると前向きな考え方で取り組みましょう。達成のために行動意欲がわき、自然と体を動かして元気にすごす役に立ちます。

デメリット

エンディングノート作成のメリットだけでなく、デメリットも把握して上手に活用しましょう。デメリットには、法的効力がない・プライバシー漏洩の心配・内容の書き直しが必要の3つがあり、それぞれを解説します。

法的効力がない

自分に関する内容を書くうちに財産の配分まで書いておきたくなる人もいます。気持ちとともに書いておけばわかりやすいと考えるかもしれませんが、エンディングノートは法的効力がありません。いくら詳しい理由とともに財産を分配方法を記しても、法的比率により財産がわけられてしまいます。民法の規定に則った遺言書でなければ希望する比率で財産分与ができないため、専門家に相談し正しい方法で遺言書をつくりましょうしかしエンディングノートを書くと自分の相続に対する考え方がまとまるメリットもあります。エンディングノートを何度か書き換えて考えが整理されたあと、正式な遺言書を作成すると気持ちを反映しやすくなります。

プライバシーが漏れてしまう可能性がある

自分の気持ちだけでなく、預貯金口座の情報や通帳・印鑑の保管場所、公共料金やカード利用代金の引落先など、個人情報も書き残します。もしエンディングノートを外出先で忘れたり、他人に見られやすい場所に置いたりすると個人情報がもれる危険性があります。個人の正直な気持ちも書かれているため、プライバシーまでもれる可能性があり、扱いには注意が必要です。エンディングノートは通帳や印鑑など貴重品を保管する場所へ一緒に入れ、いざというとき見つけやすい状態にします。普段からお世話になる可能性の高い家族にはノートの保管場所を知らせておくとわかりやすいです。プライバシー対策として、金銭管理・介護・相続など内容に分けてノートをつくる方法もあります。

内容の見直しが必要

エンディングノートはいつ作ってもかまいませんが、早めにつくると内容の見直しが必要です。何年か経つ間に家族の誰かが亡くなる・結婚する・引っ越すなど、さまざまな状況が起こり得るためで、状況に合わない内容のままでは万一のときに家族が迷うかもしれません。手間はかかりますが、そのたびに書き直して自分の気持ちや考えに合う内容か見直すチャンスととらえましょう。一度書いたあとは二度と書き直せないものではなく、いつでも内容を書き換え可能なところはエンディングノートのメリットです。あとから見直して書き直すつもりで、そのときの正直な気持ちを書き、管理している情報もその都度正しいか再確認しましょう。

上手に活用しよう

終活エンディングノート

エンディングノートは自分が有意義に生きるため、もしものとき家族が困らないための物です。書くと死と向かい合い、恐怖を感じるかもしれませんが、自分のこれまでをふり返る前向きなノートです。メリットとデメリットの両面を知り、自分と家族のために試しに書いてみましょう。一度書いてみるとさまざまな内容が思いつき、想像以上に充実した内容になるはずです。最初はうまく書けなくても繰り返すうちに考えがまとまり、自分の気持ちを正直に表現できるでしょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。