2022.01.25

終活のススメ|お金に困らない老後の暮らし方

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

年金の受給額や受給開始日とは

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老後の収入は公的年金や恩給が多くを占め、次いでバイトなど仕事をした収入がきています。年金の平均受給額は平成30年でひと月あたり国民年金は約5.6万円、厚生年金は約14.4万円です。国民年金は20~60歳までの間欠かさず納付した場合最大6.5万円、厚生年金は保険料納付月数と給与額により変化します。厚生年金は給与が高いほど多くのお金が受け取れる制度です。年金の受給開始は65歳からですがそれより早めの受給も可能です。しかし年金受給額は大幅に低くなるため、注意しましょう。その反面、受給開始を先延ばしにするほどひと月あたりの受給額は上がり、上がった年金受給額は一生続きます。元気な間はできるだけ働いて収入を確保し、その後年金受給を始めて仕事を控えめにする方法もあります。ただし年金受給額が上がると所得税や健康保険料なども上がるため、現役並み所得者になると国民健康保険や後期高齢者医療制度などの負担割合が増す可能性があります。

老後の生活をシミュレーションしよう

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高齢になると現役時代のまま働けるとは限らず、病気やケガをするかもしれません。自分だけでなくパートナーの介護が必要になる可能性もあり、老後を見据えたお金のシミュレーションを前もって行いましょう。ここでは老後の生活のシミュレーションの仕方を解説します。

月あたりの収支を予想しておく

老後は病気・ケガのリスクが高まることから、もしもに備えて貯蓄をできるだけ崩さない生活が望ましいです。毎月の収支で赤字が出ずできれば黒字になる生活ができると、不安が減ります。人生100年時代といわれる現代で、早いうちに貯蓄がなくなると理想的な生活が難しくなります。年金受給額など老後の収入と支出をあらかじめ計算し、どのくらいの収入があれば老後の支出をカバーできるか以下のポイントについて考えましょう。

仕事を見つける等、収入アップの方法を考える

老後受け取る段階になってから年金受給額は変えられないため、その他の方法で収入アップしましょう。仕事を見つけるには、再雇用制度の活用・人材派遣会社への登録・シルバー人材センターの活用などがあります。再雇用制度は定年退職まで働いていた会社で再び雇用される制度で、企業は希望者がいれば再雇用が義務となったため、選択肢のひとつにあげられます。慣れた環境と業務に引き続き携われるため働きやすさがメリットです。ただし年収は現役の頃の約50~80%になり、立場も大きく変わる可能性がありストレスを感じる人もいます。人材派遣会社へ登録するときは、自分の希望する仕事やできることと合っているかを確認してからにしましょう。シルバー人材センターは地域ごとに設置された公益財団法人で、仕事を紹介してもらうための年会費を数千円支払います。あっせんされる仕事の多くは報酬制のため、時給制や日給制ほど稼げない場合が多いといわれます。知人から仕事の紹介を受ける方法もあり、職場環境や仕事の内容を聞いたうえで応募できるため安心して始めやすいメリットがあります。

生命保険は重要度が低くなる為、見直す

現役時代に加入した生命保険を長く見直していなければ、老後に必要な保障内容になるよう見直しましょう。子供のいる家庭では子供が独立すると必要な生活費や教育費が減るため、生命保険のランクを下げられます。支払い保険料を減額できると老後の生活の余裕になり、毎月の収支をどうするかの心配も少なくなります。ちなみに昼間の医療保険は高齢になるほど入りづらく、加入できない保険もあります。加入できたとしても保険料が高額で、生命保険料の減額分を上回るかもしれません。老後に備えて医療保険へ入る場合、健康でリスクの少ない頃がおすすめです。

年齢を重ねるごとに医療費は上がる

50代60代になると病気のリスクが高まり、支払う医療費が増える可能性は高いです。中でもがんは2人に1人がかかり、そのうち3人に1人ががんで亡くなるといわれます。がんの罹患率は加齢と共に上がるため、もしもに備えて医療費も考えておく必要があります。がん以外の病気も年齢と共にかかりやすくなり、高齢になるほど外来受診だけではすまず、入院するケースも出てきます。男性は75~79歳、女性は80~84歳が医療費のピークで、平均寿命の前の年齢が最も高額になるようです。

老後に必要な大きな支出を考えておく

老後には生活費や医療費以外の大きな支出の可能性があります。例えば戸建て住宅に住んでいれば住み替えやリフォーム、子供や孫の教育費など、それぞれで異なります。あらかじめ可能性のある大きな支出を見据えて貯蓄をしましょう。

住み替えやバリアフリーのリフォーム

住まいの老朽化や耐震補強の必要性から、老後に住み替えが必要になるかもしれません。リフォームや修繕をすると古い建物の場合高額になりやすく、住み替えた方が安い場合もあります。要支援・要介護認定を受ける人の住宅をバリアフリー化する場合、介護保険で工事費用の一部補助を受けられる制度があります。地方自治体独自の助成金制度もあり、地域の役所窓口または公式サイトをチェックしましょう。大きな支出に備えつつ費用を抑える情報収集もしておくと、不安が軽くなります。

預貯金(退職金も含む)の使い道を考える

定年退職後、無職で生活し続けると毎月最低5万円不足するといわれ、預貯金や退職金は不足分の補てんにあたるケースが多いです。自営業者の場合は会社員よりも年金受給額が低くなりやすいため、特に使い道は十分考え準備が必要です。毎月の生活費だけでなく、医療費や介護費用にあてる分も考えましょう。退職金は老後に備えられるまとまったお金ですが、ローンを一括返済し利息分を節約する方法もあります。すぐに使わない分を投資に回して運用する、子供や孫の教育費を分けるなど、金額や家族構成なども違うため、それぞれに合った使い道を検討しましょう。

年金額に合わせた生活を送ろう

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年金受給はいつからにするか、老後どのくらいの年金を受け取れて預貯金を使えるかなど、早めに計算して準備をしましょう。年金受給額は受給開始年齢を下げることにより増額を期待できますが、受け取る前に死亡すると損だと感じる人もいます。いつから受け取るかを考えておくと、老後の収支計算がしやすいです。老後の生活に必要な収支を把握して可能な収入アップ方法を見つけ、できるだけ働き続けると預貯金がなくなる不安が軽くなります。定年退職まで働いた人は、慣れた環境で働ける再雇用制度を利用した再就職がおすすめです。老後は受給した年金がメインの収入になる人が多く、その額に応じた生活を心がけると預貯金の大幅な減りがなく安心でしょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。