2022.01.27

老後の住まいはどうする?住みやすい家に変えるためには

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

家のローン返済の対処法

家のローン返済の対処法

多くの人が住宅ローンを組んで住まいを購入しますが、返済は早めにするほどメリットがあります。老後に返済の不安を抱えずにすむこと以外にも、ローン残高が大きい状態の方が利息も高くなるためです。少しでも返済し元本を減らすと、その後の利息は下がり家計の節約になります。35年ローンのような長期ローンを組み、定年退職後まで返済が続く場合、途中で返済が難しくなるかもしれません。定年を迎えたあと収入が減り返済が苦しくなって滞ると、家庭の状況に関係なく競売手続きを取られます。売却して得たお金をローン返済にあてるため、老後の住まいがなくなってしまいます。可能な限り早めにローンを完済した方が、老後を安心して過ごせます。

自宅を老後住みやすい家に変えるためには

終活_終の住処

終の棲家にするために購入した自宅で、今まで何の問題もなく暮らしたものの、老後になると危険と感じる場所が出てきます。加齢と共に体力の衰えた体で不便なく過ごせるか、早めに自宅の中をチェックしましょう。具体的にどのような場所を改善すると老後になっても暮らしやすいか、ポイントごとに解説します。

床の段差をなくす

階段のように大きな段差からふすまのへりほどの小さな段差まで、家の中には数々の段差があります。段差が目立つように蛍光テープを貼り、夜も通る場所には蓄光テープを貼って目立たせます。気づいても自分でまたげない場合は、スロープをつけて段差をなくしましょう。部屋の敷居など小さな段差は斜めにカットした木片を添えると簡単なスロープになります。

手すりを付ける

手すりは安全に歩く・立ち上がる・体を支えるために役立ちます。家の中で手すりがあると安全な場所は、お風呂・廊下・トイレなどで、必要に応じて設置箇所を増やしましょう。廊下の手すりは使う人の身長に合った高さが必要なため、確認してから取り付けます。浴室は転倒事故防止のために手すりが必要で、壁と浴槽内の両方に設置します。トイレは立ち上がったとき転倒しないよう、便座近くから扉までの壁面に付けましょう。

扉は引き戸か折り戸にする

玄関の扉は押すまたは引いて開けるタイプが多いですが、介護が必要になり車いすでの出入りを考えると、引き戸が便利です。引き戸にした分出入口が広くなり、車いすもスムーズに出入りができます。家の中の扉で高齢の人が使う場所も引き戸または折り戸に変更すると、介護が必要な場合に介助者の入るスペースが取れ、動きやすくなります。閉じ込めの危険から最近の住宅では浴室に押す・引くタイプの扉をつけることは少なくなりました。もし長年暮らす家で浴室の扉が引き戸や折り戸でない場合、終の棲家にと考えている人は扉の付け替えがおすすめです。

ヒートショック対策

ヒートショックとは、暑いところから寒いところへ移動したときのように、急な温度変化で体がダメージを受けることです。逆に寒い場所から暑い場所へ移ったときにも起きる現象です。ヒートショックは浴室とトイレで起きやすく、これは間取りも関係しています。浴室やトイレは住居の北側にある場合が多く、冬の浴室やトイレは特に冷えるため暖かいリビングからお風呂・トイレへ移動すると寒さで血管が収縮し、血圧は上昇します。お風呂の場合は湯船に入ると体が温まって血管が拡張し血圧が下がります。くり返し血圧が変化すると心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす可能性があります。お風呂でのヒートショックを防ぐには、ぬるめのお湯に短時間入ります。夜遅くよりも夕方や夜早い時間に入浴し、肩までつからず半身浴でとどめましょう。

予備灯の備え付け

暗いと転倒しやすいため、夜間は予備灯をつけましょう。階段はできるだけ多くつけ、廊下は足元につけておきます。寝室も豆電球など常夜灯をともして、夜中にトイレへ行くときの転倒予防をします。

滑り止めの設置

高齢になると足腰の踏ん張りがききにくくなり、体を支えきれず転倒する場合があります。滑って転倒を防ぐために階段の一段一段には滑り止めテープを貼り、フローリングで滑りやすい廊下には滑り止め防止マットを敷く対策があります。玄関の靴を脱いであがる場所、上がり框を置いている場合はそこにも滑り止めが必要です。

トイレは広めにする

トイレのスペースが狭ければ、老後のために少しでも広くしましょう。介助が必要になったとき、一人しか出入りできないトイレでは介助が難しいためです。あわせて扉部分など段差をなくし、足元までよく見える明るい照明をつけましょう。

高齢者住宅改修費助成制度とは

高齢者住宅改修費助成制度

高齢者住宅改修費用助成制度は、要介護認定を受けた人が自宅で快適に暮らすための制度です。改修工事にかかる費用の9割を介護保険から支給され、高額なバリアフリー化費用の負担軽減が受けられます。最低1割は自己負担ですが、最高20万円まで支給されます。制度の対象工事の内容は、玄関や浴室などの手すり取り付け・段差解消・扉の交換・便座の交換・廊下など床材の変更です。その他、対象工事を行うにあたり付帯する必要な工事も含みます。地域の自治体により、バリアフリー化にかかる費用の補助金を独自に設定しているところもあります。

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは高齢者向け貸付制度で、持ち家を担保にして借入をし、バリアフリー化の資金の準備ができます。介護にともないバリアフリー化が必要なものの資金が足りずできない人や、年金収入のみでローン返済は難しい人は検討してみましょう。借入人死亡時に返済完了していなければ、担保にした自宅を売却し返済にあてます。相続人に借金が残らない方法ですが、借入人が死亡してもパートナーが契約を引継げる金融機関が多く、パートナーが住むところに困るリスクを避けられます。

定年前に終の住処について考えよう

終活_終の住処

仕事をしており金銭的な余裕があるうちに、老後の住まいについて考えておきましょう。年齢を重ねるにつれて次第に体力の低下を感じる人は多く、老後の生活が身近に感じられるかもしれません。バリアフリー化のポイントを知り、現在の住まいは高齢になっても暮らしやすいかチェックから始めましょう。バリアフリー化はまとまった費用がかかりますが、要介護状態の家族がいると介護保険により負担を減らしたリフォームができます。できる限りの工夫をして暮らし、いざ介護が必要になった場合本格的なリフォームをする方法もあります。資金準備で困れば、自宅を担保にしたリバースモーゲージを利用して、暮らしやすい終の棲家をつくりましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。