2021.09.28

終活のススメ|葬儀の準備と費用について

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

葬儀のスタイルと埋葬の種類

葬儀のスタイルと埋葬の種類

葬儀のスタイルは多様化しており、生前に自分の考えたスタイルで葬儀を行って欲しいと希望を残す人もいます。まずは、従来の葬儀以外に現在行える葬儀のスタイルを知りましょう。家族が迷わず故人自身が納得のいく葬儀方法を選びたい人のために、家族葬・ワンデーセレモニー・密葬・直葬を解説します。

家族葬

故人を限られた身内だけで送る、小規模の葬儀が家族葬です。ここでの家族は厳密な定義はなく、同じ家で暮らす家族のみの場合から親しい友人までなどさまざまです。少人数小規模でゆっくりお別れがしたい場合に選ばれるスタイルで、一般的な葬儀と比べるとやや費用を抑えられます。しかし家族葬は一般の弔問を受けないため香典が少なく、家族の葬儀費用負担は大きくなりやすいです。ちなみに家族葬の平均費用は96万4,133円といわれます。

ワンデーセレモニー

ワンデーセレモニーは1日葬ともいい、通夜を行わず葬儀・告別式・火葬までを行います。通夜がなく通夜料理や遺族の宿泊費用などの費用を抑えられ、1日で行うため体力的な負担軽減にもつながります。家族葬に次いで増えている葬儀スタイルで、近親者のみで行う場合が多いです。通夜のない点が特徴で、葬儀から火葬の流れは家族葬とほとんど同じです。葬儀会館や内容により異なりますが、標準的なワンデーセレモニーの費用例は33万9千円です。

密葬

密葬は家族葬に近い葬儀スタイルで、身内のみで行います。著名人や会社の代表などが亡くなったとき、先に近親者で密葬を行い、後日本葬やお別れ会を行う場合があります。近年では一般の人の密葬も行われ、本葬やお別れ会をしないケースもあり、故人の気持ちや家族の意向によりさまざまです。密葬は通夜や葬儀にかかる料理や返礼費用を抑えられ、一般葬の4分の1~半分程度の費用といわれます。内容にもよりますが40万円~100万円が相場です。この金額はあくまで密葬のみのため、後日本葬やお別れ会を開く場合は別途費用がかかります。

直葬

直葬は火葬式ともいわれ、通夜と葬儀を行わず出棺し火葬するスタイルです。家族や親しい人に全く案内しないわけではなく、ごく限られた人数で安置場所にてお別れをします。場所により面会不可や面会時間の制限を設ける施設もあるため、条件を聞き希望にあう安置場所を決めましょう。通夜を行わないスタイルですが、亡くなって24時間は火葬できないと法律で定められているため、その時間安置したあとで直葬を行います。直葬の費用相場は15万円~25万円で、必要最低限の準備のみのため葬儀スタイルの中で最も費用を抑えられます。

お墓の種類

お墓の種類

葬儀スタイルだけでなくお墓の種類も近年多様化しています。従来はお寺の敷地内に埋葬する場合が主流でしたが、現在は民営霊園や公営霊園もあります。仏教に限らずあらゆる宗派の人が埋葬可能なお墓が、民営霊園や公営霊園です。宗教やお墓の予算、埋葬方法の希望などによりお墓の形態をあらかじめ決めておくと、家族が迷わずにすみます。お墓や埋葬のタイプを知り、本人と家族の間でお墓についての考えを共有しましょう。

家墓

家墓は累代墓、継承墓ともいい、先祖代々本家の人を埋葬して子孫へ引き継ぐお墓です。墓石の表には家の名前が入り、○○家之墓、○○家先祖代々之墓などと彫られています。側面にはお墓へ納骨された故人の戒名や俗名を刻みますが、刻む内容を自由に決められるタイプもあります。家墓は寺院墓地・民営や公営霊園に建てられる一般的なお墓の形態です。既に先祖代々のお墓があり本家を継いだ人やその配偶者はそのお墓に埋葬されます。まだお墓がなくこれから家墓を建てたいときは、寺院・霊園探しから始めます。霊園や施設がお墓を建てる案内を行っているところもあれば、葬儀会館で相談すると紹介される場合もあります。インターネットで墓地に関する情報も入手できるため、基礎知識を学んでからお墓選びをしましょう。

個人墓・夫婦墓

個人墓は1人の人だけを埋葬するお墓、夫婦墓も夫婦のみを埋葬するお墓で、代々継承する心配も不要です。有名人に個人墓は多く、その人の功績をつづった四角形の墓石が主流でしたが、現在では自由な形が選べます。個人墓や夫婦墓は世話をする人がいなくても33~50年程で管理が終わり、遺骨は合祀墓へ移されます。お墓を建てたあとが心配な人、好きなデザインのお墓が欲しい人向けのお墓で、現在では有名人に限らず一般の人にも選ばれています。

合葬墓

合葬墓は合祀墓とも呼ばれ、家などの血縁関係を問わずあらゆる複数の人を埋葬するお墓です。一度納骨すると外へ出せないため、あとから家墓に埋葬したくても対応できません。一般墓のように個人的なお参りやお供えはできず、供物台が設置されたときのみお供えが可能です。合葬墓は永代供養され、家を継ぐ人がいない場合もお墓参りや管理費支払いなどの心配がありません。今後お墓を引き継ぐ人がおらず墓じまいを希望する人の中には、合葬墓を選ぶ人もいます。

海洋葬

海洋葬は遺骨を海に散骨する方法で、墓石を墓地に建てない自然葬のひとつです。命の起源といわれる海や水、自然に還りたいと考える人に選ばれる方法で、お墓の継承者が不要の埋葬方法です。散骨するには遺骨を粉状に砕くよう法律で定められており、家族などが勝手に遺骨をまくことはできません。海洋葬を扱う葬儀社の中には、散骨だけでなくその後の永代供養まで含めた内容を提供するところもあります。

樹木葬

樹木葬は自然葬のひとつで、行われ始めてまだ日は浅いですが自然共生型の埋葬を選びたい人に向いています。遺骨をそのまま土へ埋葬、または骨壺に入れたまま埋葬し、その近くへ樹木を植える方法です。現在一般的な方法はサクラ・モミジ・ハナミズキなどのシンボルツリーを墓標とし、その周辺につくられた区画へ遺骨を安置するものです。樹木葬は自然の中へ埋葬するため、家族が明るい雰囲気でお墓参りができ、次第に成長する樹木を眺めると故人を思い出す機会にもなります。樹木葬は永代供養が多く、お墓を継ぐ人がいなくても一定期間を過ぎれば合祀墓に埋葬されます。

元気なうちに下見をしよう

お墓の下見

葬儀方法やお墓の形態に希望があれば、心身ともに元気なうちに見学しておくと納得の方法が選べます。夫婦でまたは家族と一緒に葬儀会館の相談会へ参加すると、その人自身の希望を伝えやすく、もしものときにも家族が戸惑わずにすみます。生前にお墓を建てる人もおり、むしろ寿陵といって家庭に幸福をもたらし長生きする縁起の良いことといわれます。葬儀やお墓について考えることは、人生を充実させる手段のひとつです。希望を伝え、叶えられる方法を見つけてより納得のいく内容にしましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。