2021.12.06

高血圧について正しく理解しよう|原因や症状、治療方法について解説

最終更新日:2022.07.25
東海林 さおり
看護師

高血圧の症状とは

血圧とは血管内にかかっている圧力のことをいいます。血管をホース、心臓をポンプとイメージするとわかりやすいでしょう。つまり、心臓から送り出される血液が血管を押す力のことを血圧といいます。人間の血管には太い動脈から毛細血管まで様々な太さの血管がありますが、血圧は太い動脈の値を計測します。血圧はよく知られている上腕だけでなく、手首や指、足首などでも測ることができ、いまではスマートウォッチでも計測できますが、上腕の血圧を測ることが一般的で正確だと言われています。
血圧は以下のような計算式をもとに計測されています。
血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗
心拍出量とは、心臓から送り出す血液の量のことです。末梢血管抵抗とは、その血液の流れにくさのことです。では、血圧の「上」や「下」とはどういうことなのか、更に解説していきます。

最高血圧と最低血圧について

血圧の基準値

血液を送り出す心臓はポンプなので拡張、収縮を繰り返し血管に血液を送り出しています。つまり、血管も心臓が収縮し血液を送り出している時は強い圧力がかかり、逆に拡張している時は圧力が弱くなります。
最高血圧とは、心臓が収縮して血管に高い圧力がかかる状態をいいます。それを「収縮期血圧」「血圧の上」といわれます。
最低血圧とは、逆に心臓が拡張して、血管にかかる圧力が弱まる時の状態をいいます。それを「拡張期血圧」「血圧の下」といいます。

高血圧の原因とは

幕の内弁当

高血圧の原因は大きく分けて2種類あります。それが「本態性高血圧」と「二次性高血圧」です。一言でいうと、原因が特定できないものが「本態性高血圧」、原因が特定できるものが「二次性高血圧」になります。おおよそ90%の方は原因が特定できない「本態性高血圧」になります。

本態性高血圧

・遺伝
・塩分の過剰摂取
・運動不足
・飲酒
・ストレス
・加齢
などが挙げられます。原因が特定できないのはこれらの多くが生活習慣によって複雑に組み合わさって起こるからです。

二次性高血圧

二次性高血圧とは病気が原因で起こる高血圧のことです。
・慢性腎臓病
・腎動脈狭窄
・原発性アルドステロン症
・褐色細胞腫
・甲状腺機能障害
・原発性アルドステロン症
・睡眠時無呼吸症候群
・薬剤の副作用
などが二次性高血圧の原因として挙げられます。二次性高血圧は、その原因となる病気を治療していくことで改善します。

高血圧チェック

自分が高血圧症と診断される可能性があるのかというのは日頃の生活習慣からもセルフチェックすることができます。まずは、自分が高血圧症になるような生活をしているのかをチェックしてみましょう。以下の項目に当てはまるものが多ければ多いほど高血圧症になるリスクが高いと言えます。

・週に3回以上外食をする
・あまり野菜を食べない
・健康診断でLDLコレステロール値、または血糖値が高いと診断されたことがある
・タバコを吸う
・味の濃いものが好き
・週間的に運動をしていない
・強いストレスを持続的に感じている
・肥満気味

これらの項目から、自分の生活習慣を見直すことで、血圧をコントロールし高血圧の予防をすることができます。

高血圧により引き起こされる病気とは

血圧を測る男性

高血圧になると懸念されるのが合併症です。合併症とは、ある病気が原因で別の病気を発症してしまうこと、つまり高血圧症であることが原因で別の病気も併発するということです。では、どのような症状が出てきたら合併症を疑う必要があるのか。特に危険な症状(救急車を呼ぶ必要がある)は以下の通りです。
・激しい頭痛や吐き気
・動悸
・胸の激痛
このような症状が出てきた時は心臓、肺、血管、脳、腎臓などに深刻な合併症が併発する可能性があるのですぐに救急車を呼びましょう。次に高血圧症による代表的な合併症である、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病がどのようなものかを解説していきます。

脳卒中

脳卒中とは、脳の血管が破れたり、つまったりする状態です。脳卒中には脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、一過性脳虚血発作があります。

脳出血、脳梗塞はそれぞれ脳の血管が詰まる、破れる状態になるため脳の組織が壊れその場所の司っている機能に応じて症状が現れます。例えば運動機能を司る部分が壊れた場合には手足が麻痺する症状が現れます。くも膜下出血は血管にできたコブが破裂する状態です。急激な頭痛が生じるのが特徴です。くも膜下出血を発症した場合は緊急な処置が必要なケースが多いです。
一過性脳虚血発作は一時的に脳の血管が詰まる状態をいいます。そのため、症状も一時的に出て消えるのが特徴です。多くの場合、長くても24時間、ほとんどが1時間以内に症状消失します。しかし、脳梗塞の前兆である場合があり、1時間を超える症状が出た時は更に脳梗塞のリスクが高まります。

心疾患

心疾患とは、心臓に生じる病気のことで、「心疾患」は病名ではなく、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心筋炎、心臓弁膜症など広義の意味で心疾患といいます。心疾患はガンに次いで死亡率の高い病気です。ご存じの通り、心臓が止まるというのは「死」と同じことを指します。「突然死」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、健康と思われていた方の突然死の多くが急性心筋梗塞や心筋症など、心室細動の不整脈です。心疾患の中でも、心臓の筋肉が酸素不足や栄養不足になってしまう虚血性心疾患が大部分を占め、代表的な狭心症と心筋梗塞について詳しく説明していきます。

狭心症と心筋梗塞

狭心症と心筋梗塞の違い

虚血性心疾患は前述した通り心臓の筋肉が酸素不足や栄養不足になってしまう状態なのですが、狭心症は血液が少しは流れている状態、逆に心筋梗塞は血液が詰まってしまう状態のことをいいます。初期症状としては、狭心症、心筋梗塞ともに締め付けられるような胸の痛みがあります。個人差はあるものの、心筋梗塞は耐え難い痛みと表現されることもあります。胸を締め付けれる痛みが10分以上続く場合は心筋梗塞の恐れがあります。すぐに救急車を呼ぶ必要があります。狭心症は、心筋梗塞の前兆である可能性もあるので、心筋梗塞を未然に防ぐためにも心筋症の発作が起きたら治まっても病院に受診し相談しましょう。

慢性腎臓病

動脈硬化により腎機能が60%未満に低下すると慢性腎臓病(CKD)となります。特徴としては腎機能が徐々に低下していき、無症状の場合があるということです。初期段階では症状はありませんが、進行していくと、吐き気、食欲減少、倦怠、浮腫、足と足首の腫れなどが現れることがあります。腎機能が低下し腎不全となると人工透析が必要になり、腎移植が必要になるケースもあります。

高血圧の治療方法

高血圧症の治療の目標として血圧を正常値に下げるということが一つの目安になり、日々チェックできることの一つです。治療法には大きく分けて非薬物療法と薬物療法があります。非薬物療法は生活習慣の改善によるもの、薬物療法は服薬によって血圧をコントロールする方法です。それぞれ、詳しく説明していきます。

非薬物療法(生活習慣の改善)

非薬物療法で出来ることは、食事、運動、睡眠、アルコール、喫煙などを見直す必要があります。
特に大切なのは食事です。

血圧を上げやすい食材

血圧を下げるためにも、血圧を上げやすい食材をわける必要があります。では、血圧を上げやすい食材とはなんでしょうか。やはり特に上げやすいのは塩分です。塩分を含む代表的でよく口にする物といえばお味噌汁です。しかし、お味噌汁を飲まないというのはかなり大きな食生活の変化が必要です。お味噌汁は減塩の味噌を使用し、具材を多めにして汁の摂取量を減らすなどの工夫で塩分の摂取量を控えることができます。毎日口にするものだからこそ少しずつの変化が大きな摂取量減に繋がります。
また、塩分を気をつけるというと塩を使いすぎなければと思うかもしれませんが、日常的に口にしているものにも意外と塩分が多いものはあります。パン、クッキー、チョコレートなどの甘いものにも塩分は意外と多く含まれていますし、体にいいと思われているお酢(特にすし酢)、ポン酢、ドレッシングなど野菜と相性のいいものにも塩分は多く含まれているのでかけ過ぎは注意です。その他にも、ラーメン、うどん、ポテトチップスなどついつい食べ過ぎてしまうような物には塩分が多く含まれているので要注意です。
いろいろと食べてはいけないものをご紹介してきましたが、高血圧症の方におススメの食事もご紹介していきます。メインの食材は青魚がおススメです。さんま、ぶり、さばなどは血液をサラサラにする効果があります。
副菜には海藻、きのこ、根菜類は食物繊維が多く含まれるため塩分を吸着して外に逃がす作用があります。おやつにはナッツがおススメです。もちろん無塩を選びましょう。ナッツにはマグネシウムが含まれるため降圧薬のような作用も期待できます。

薬物療法

非薬物療法だけで改善するのが望ましいですが、治療を効果的に進めるために初期のころは薬物療法を並行して行っている必要があります。高血圧症にはタイプがあり、どのタイミング(早朝、昼間、夜間など)で血圧が上がりやすいのかによっても薬物療法でコントロールしていく必要があります。また、年齢や合併症によっても処方される薬の種類や量が変ります。高血圧症の治療は非薬物療法と薬物療法を組み合わせて、日常的に血圧の数値を確認し、医師と連携しながら治療していくものです。

正しい生活習慣で高血圧を予防しよう

血圧に気をつけた食事

血圧が高いというのは日常的に耳にする言葉なのであまり怖いイメージを持っていない方も多いかもしれませんが、高血圧症は様々な合併症が発症する可能性があり命に関わる病気の一つです。しかし、必ずしも病院に通い詰めて治していく病気でもありません。正しい生活習慣を身に着けることで高血圧症は避けられる病気です。正しい情報と健康な生活習慣で高血圧症の予防に努めていきましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。