目次
車椅子の種類
車椅子には、自走式や介助式、電動式などの種類があり、使用する人の身体状況や使用する場所、介助者の負担などを考慮し選定します。
自走式車椅子は、 自分で動かすタイプの車椅子です。後輪が大きく、ハンドリムという手で回す駆動握りが付いているほか、介助者が押すためのグリップ(握り)や手元ブレーキも付いています。車椅子の回転半径が小さいため、自宅内の狭い廊下で使用する人や、片手だけでも駆動ができる片麻痺のある人などに向いています。
また、介助式車椅子は、介助者が押して動かすタイプの車椅子です。ハンドリムという手で回す駆動握りは付いていませんが、後輪が小さく、コンパクトに折りたためます。自走式に比べ約1kg軽量で、持ち運びに便利なため、通院や旅行などで使用することが多い人に向いています。さらに、電動車椅子は、電動モーターと手元の操作レバーで移動できるタイプの車椅子です。電動モーターが操作をサポートしてくれるため、筋力が弱く、手でこぐことが難しい人に向いています。
高齢者の良くない姿勢
車椅子に乗っている際に良くない姿勢で座っていると、仙骨に強い負担がかかり、床ずれの原因になったり誤嚥を引き起こしたりすることがあります。また、良くない姿勢になる原因が、使用する人の身体状況や体格に合っていない場合は、使用する人に合った車椅子に変更することも重要です。こちらでは、車椅子に乗っている際に良くない姿勢の三つを解説します。
良くない座り方1.側湾座り
側湾座りとは、体幹が側方へ傾いてしまう姿勢のことです。特に、筋緊張が弱い人や骨盤が左右に傾いている人、左右で筋緊張が異なっている人などがなりやすい座り方です。筋緊張が弱い場合は、体幹そのものを寝かせ気味にするとともに、体幹の側方支持を高めることが重要で、座面に角度をつけ骨盤の側方を支持するようにパッドを挟み調整します。また、骨盤が傾いている場合は、座骨部の左右の高さを変えることができるクッションで調整します。
良くない座り方2.仙骨座り(ずっこけ座り)
仙骨座りとは、座骨が前に滑り、骨盤が後傾し、仙骨部が座面に接触するような姿勢のことです。特に、高齢者に多く、体幹を直立させる筋力が弱くなることで、体幹がねじれていたり骨盤が後傾していたりなどの人がなりやすい座り方です。座面が平らだとお尻が滑り骨盤が後傾しやすいので、座面に角度をつけたりクッションで前を高くしたりなどして調整します。また、背もたれ角度が合っていないと背もたれに脊椎がぶつかり、骨盤が前に押し出され後傾するので、背もたれの張りを調整できる車椅子を選びます。
良くない座り方3.円背
円背とは、脊椎が後湾し、骨盤が後傾している姿勢のことです。特に、加齢によって椎間板が変形したり、骨粗しょう症により圧迫骨折や骨がもろくなったりなどの人がなりやすい座り方です。背もたれ角度を調整できない車椅子に座ると、脊椎の凸が背もたれにあたるため、座骨が前に移動した姿勢となります。その場合は、車椅子の背もたれを倒して骨盤の角度に近づけたり、背もたれの張りを調整して脊椎の形状に近づけたりします。
正しいフィッティングの仕方とは
側湾座りや仙骨座り、円背のような良くない姿勢にならないためには、使用する人の身体状況に合わせて、適切なフィッティングを行うことが重要です。車椅子における正しい姿勢の目安としては、深く腰掛け、バックサポート(背もたれ)が腰部を支え、頭と両肩が水平で、踵が床に接地し、股や膝、足関節の角度が90度であることです。正しい姿勢を保つためには、まず車椅子の座面の幅と奥行きを決めます。座面の幅は骨盤の幅+2cm〜4cm、奥行きは深く腰掛けた際、膝の裏側と座面の間に約4cm〜5cmの隙間ができる程度が適切です。
次に、座面の高さは踵が接地できる高さに、バックサポート(背もたれ)は約40cm〜45cmと肩甲骨の動きを妨げない高さ、アームサポート(肘掛け)は座面から肘までの高さ+クッションの高さにそれぞれ設定します。
次に、後輪の大きさは小柄な人で20インチもしくは22インチ、身長170cm以上の大柄な人で22インチもしくは24インチを、前輪は5インチや6インチを目安に選択します。
そして、レッグサポート(足首からふくらはぎ周辺を支える部分)は床から約5cm以上の位置で、大腿部の裏側が座面で均一に体重を支持できる高さに設定します
車椅子クッションの種類
車椅子クッションは、座面や背もたれに置き、使用する人の正しい座位姿勢を保持したり、臀部を除圧し痛みを軽減したり、床ずれの予防や改善を図るために使用します。車椅子クッションには、エアクッションやジェルタイプ&ウレタン、低反発ウレタンの三種類があります。
エアクッションとは、クッションの空気量を調整することで、使用する人に合わせたクッションの硬さや形状に調整できるもので、セル全体で臀部を包み込み体圧を分散します。価格は、購入の場合で約15,000円~45,000円、レンタルの場合で月額約150円~500円です。
ジェルタイプ&ウレタンとは、ジェルパッドをウレタンフォームで挟み込んだサンドイッチ構造で、瞬間的なずれや摩擦を軽減し体圧を分散します。価格は、購入の場合で約3,500円~25,000円、レンタルの場合で月額約100円~200円です。
低反発ウレタンとは、弾性が低く粘性が高くなるよう加工されたもので、骨ばった部分を中心に、圧の高さに応じて全体を包み込むように保護し体圧を分散します。価格は、購入の場合で約5,000円~10,000円、レンタルの場合で月額約100円~200円です。
その他の機能(リクライニングとティルト)
リクライニング機能とは、背もたれの角度を調整できる機能が付いた車椅子で、ベッドやストレッチャーとの間で水平移乗を行うことや、低血圧性発作を起こしやすい人などを車椅子で仰向けにすることができます。また、ティルト機能とは、背もたれを倒すにつれて座面の角度が上がる機能が付いた車椅子で、通常の介助用車椅子では姿勢が崩れてしまう人や褥瘡予防など、積極的に姿勢を変えて体圧を分散したい場合に使用できます。
正しいメンテナンスの仕方とは
車椅子をより安全かつ安心に使用するためには、日常的な点検やメンテナンスを正しく行うことが重要です。タイヤは溝が十分あり変形やひび割れがないか、ブレーキは正しく停止するか、座面のシートは破損やたるみがないか、ハンドリムや車輪はしっかりと固定されているか、車椅子を動かした際には異音がしないかなどをチェックします。また車椅子は、身体支持部やフレーム、駆動部や車輪、付属品などがそろって成り立っており、各部位をつないでいるネジに緩みがないかもチェックします。
本人の身体状況に合わせた車椅子を借りよう
今回は、車椅子をレンタルする前に知っておきたい、種類や姿勢、メンテナンスの仕方などをご紹介しました。車椅子をレンタルする際は、使用する人の身体状況に合わせた車椅子を選ぶことが最も大切です。また、正しい姿勢で車椅子を使用しているか、使用する前に確実にメンテナンスを行っているかなどのチェックも必要です。なおレンタルする際は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員などの助言を取り入れながら選定しましょう。
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福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。