2024.04.01

自宅で療養に関する指導を受ける|居宅療養管理指導とは

最終更新日:2024.04.04
東海林 さおり
看護師

通院が困難な場合、自宅で療養を進めていくという選択肢もあります。しかし、どのように療養を進めていくか、また、どのような点に注意すべきかは、患者さんによっても異なりますし、自宅の構造・設備によっても異なるでしょう。自宅で療養に関する指導を受ける「居宅療養管理指導」について解説します。

こんな方におすすめ

高齢者

居宅療養管理指導は、次のような方におすすめのサービスです。

● 通院が困難で、自宅療養をする方
● 自宅療養をどのように進めるべきか知りたい方、また、その家族
● どのような食事が必要か具体的に知りたい方
● 歯や義歯の衛生管理、食事や嚥下について具体的に指導を受けたい方
● 介護の方法を知りたい家族等の介護者
● 薬剤の管理や服用方法について知りたい方

居宅療養管理指導とは

医師

通院が困難な要介護状態の患者に対して、医師や歯科医師、薬剤師等の医療従事者が患者の許可を得てから居宅を訪問し、住環境や介護者等の状況に合わせて管理・指導を行うことを居宅療養管理指導といいます。実際に療養する場所を見ることで、医療従事者はより実情に合ったアドバイスをすることが可能になるでしょう。なお、居宅療養管理指導は、居宅における医療従事者の管理と指導だけを指す言葉です。居宅療養管理指導においては、治療等の医療行為を受けることはできません。

対象者は要介護1以上

居宅療養管理指導を受けることができるのは、要介護1以上の認定を受けている方のみです。原則として介護保険被保険者である65歳以上の方が対象となりますが、筋萎縮性側索硬化症や関節リウマチ等の16種類の特定疾患で要介護認定を受けている満40歳以上65歳未満の方も対象となります。また、自宅で療養を受けている方だけでなく、養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に居住している方も、居宅療養管理指導を受けることが可能です。

要支援者は、介護予防居宅療養管理指導

要支援1もしくは2で通院が困難だと判断される方も、居宅療養に関して管理と指導を受けることが可能です。ただし、要支援者に関しては「介護予防居宅療養管理指導」が実施され、自立して生活していくための具体的なアドバイスを医師などの医療従事者から居宅で受けられます。

サービスの内容

医師

居宅療養管理指導では、自宅や施設等で安心して療養生活を受けるための具体的な管理指導を受けます。また、訪問する医療従事者によって、以下のような専門的な管理・指導を受けることが可能です。

医師

利用者の身体状況について、利用者本人や家族に説明します。体調が変化したときにどのような対応ができるのか、具体的に説明することも居宅療養管理指導における医師の役割です。また、医師は、居宅訪問して知り得た利用者の状態を利用者のケアマネージャーに情報提供します。ケアマネージャーや訪問看護師と同行することも多いので、その場で情報提供する流れになることもあるでしょう。さらに、利用者の状況から、今後も居宅サービスを続けるのか、頻度を変更するのか等の提案も行うこともあります。

薬剤師

薬剤師は、居宅療養管理指導の折に処方薬の服薬状況を利用者や家族に解説します。また、薬剤の管理方法や飲み忘れを確認し、適切に管理・服用できるようにアドバイスをすることもあるでしょう。睡眠や排せつ、食事といった日常生活についても観察し、必要に応じた助言を行います。居宅療養管理指導において知り得た情報をケアマネージャーに提供し、より利用者の実情に沿ったケアプラン作成に役立てることも薬剤師の役割です。

歯科医師

利用者の口腔ケアの状態を把握し、適切なアドバイスを利用者本人や家族に行うことが居宅療養管理指導における歯科医師の役割です。その他にも、食事の際の姿勢や食事の形態を確認し、口腔機能を向上させるための情報を利用者や家族に伝えます。

歯科衛生士

歯科衛生士も、居宅療養管理指導の際に利用者の口腔ケアの状態を把握し、適切な助言を行います。また、義歯の状態を評価し、清掃方法について詳しく解説することも歯科衛生士の役割です。

管理栄養士

居宅療養管理指導の訪問の度に、栄養素の摂取量に関するアドバイスや具体的な指導を行う管理栄養士は多いです。その他にも、食事の形態や時間についても、居宅療養管理指導の際に管理指導を行います。また、食事をつくる家族等に調理法や治療食の作り方、甘味や塩分を減らした味付け方法等の具体的な指導を行うことも少なくありません。患者が食欲不振なときの対応法や、誤嚥防止のためのとろみ剤の使い方についてもアドバイスします。

利用料の区分と利用料の目安

計算

居宅療養管理指導を行う医療従事者によって、利用料と1カ月あたりの上限利用回数が異なります。

2024.6.1~ 単一建物居住者の人数
1人 2~9人 10人以上
医師(月2回まで) 515単位 487単位 446単位
歯科医師(月2回まで) 517単位 487単位 441単位
病院または診療所の薬剤師(月2回まで) 566単位 417単位 380単位
薬局の薬剤師(月4回まで) 518単位 379単位 342単位
管理栄養士(月2回まで) 545単位 487単位 444単位
歯科衛生士等(月4回まで) 362単位 326単位 295単位

1単位=10円と換算すると、介護保険の自己負担割合が1割の方の場合は、医師の自宅への居宅療養管理指導は1回につき515円となります。自己負担割合が3割の方は1,545円です。医師が病院の薬剤師を伴って訪問する場合は、自宅への居宅療養管理指導については1回につき1,081単位となるため、自己負担割合が1割の方は1,081円、自己負担割合が3割の方は3,243円となります。自宅や施設で療養を行う場合は、医師や薬剤師、管理栄養士等の医療従事者の管理・指導を受けることでより良い療養生活を送ることができます。利用者本人だけでなく家族も、介護や療養におけるアドバイスを受けることができ、より良いサポートに活かせるでしょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。