歳を取ってくると次第に体力が低下し、特に坂道や階段を登ると息が切れやすくなるものです。皆様の中にも、大切なご家族が辛そうにしているところを見かけた経験がある方も多いのではないのでしょうか。そこで気になるのが、「なぜ息切れするのか?」「息切れして苦しいときはどうすればいいの?」という疑問です。今回は、高齢者の息切れすることに関する以下のポイントについてご紹介していきます。
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- ・どうして息切れが起こるのか
- ・息切れが起こりやすい場面
- ・息切れが起こった場合の対処法
- ・高齢者の息切れには要注意
- ・坂道で息切れをしないために
この記事を読めば、息切れの原因や対処方法が分かります。ぜひ最後までご覧ください。
目次
どうして息切れが起こるのか
そもそも呼吸とは、酸素を肺が取り込み体中に届けると同時に、二酸化炭素を体の外へ出す仕組みです。息切れは、何かの原因によって体内の酸素が不足していることによって起きます。体内の酸素が不足して息切れを引き起こす原因は、体の中で以下の3つのいずれかが起きている可能性があります。
- ・呼吸がうまくできない
- ・肺は機能しているが体中に酸素が届けられない
- ・体が酸素の量が足りないと間違って認識する
息切れが実際に起こる場面も実に様々です。どのようなときに息切れが起こりやすいのか、次章で詳しくみていきましょう。
息切れが起こりやすい場面
息切れが起こりやすい場面は下記のように様々です。
- ・坂道や階段を上ったとき
- ・心臓や肺の病気で酸素が行き渡らないとき
- ・強い緊張や不安にさらされたとき
それぞれの場面ごとに詳しく確認していきましょう。
坂道や階段を上ったとき
坂道や階段を上ったときに息切れが起こることがあります。この場合は運動不足が原因の可能性があります。運動不足によって筋力が落ちると、坂道や階段を上るなどの軽い動作をしただけで体内に老廃物である乳酸が溜まってしまうからです。乳酸が溜まって体内が酸性に傾くと、元に戻そうとして無意識のうちにたくさん呼吸をするのです。
また、肥満体型の方は普通体型の方よりも息切れをしやすい傾向があります。なぜなら、肥満体型の方は体を動かすために多くのエネルギーを必要とするからです。高齢者が運動不足になると息切れを感じやすくなり、運動を控えるという悪循環に陥ってしまいます。運動量が低下すると要介護状態になるリスクがあるので、注意が必要です。
心臓や肺の病気で酸素が行き渡らないとき
心臓や肺の病気の影響も、息切れする原因のひとつです。心臓や肺がしっかり機能していないため、体中に酸素を送り届けられないからです。
息切れする原因となる病気の一例を下記にまとめました。
部位 | 病名 | 概要 |
心臓 | 心臓弁膜症 | 心臓にある4つの弁のうち1つ以上の弁がうまく動かないため、体中に血液を十分送り出せなくなります。 |
狭心症 | 症状の主体は胸痛ですが、息切れの症状もあります。 | |
不整脈 | 脈がゆっくり・速く・不規則に打つ状態です。 | |
肺 | 気管支喘息 | 気管支の収縮によって発作的に息切れといった症状があります。 |
COPD (慢性閉塞性肺疾患) |
主に喫煙が原因の病気で肺の機能が低下します。 | |
肺がん |
がんが進行することで肺の機能が低下します。 |
これ以外にも、呼吸苦を引き起こす病気としては心筋梗塞・急性心膜炎・胸膜炎・気胸などが考えられます。
強い緊張や不安にさらされたとき
人は不安にさらされたときにも息切れを起こします。なぜなら、人はストレスによって心臓にある冠動脈が一時的なけいれんを起こすからです。健康な人でも悩みごとを抱え不安な気持ちになると、息切れを引き起こすため注意が必要です。また、強い緊張によっても息切れが起こります。強い緊張状態が長く続くことで自分では緊張状態を調整できなくなり、自律神経が乱れてしまうためです。例えば、大勢の人を前にしたスピーチや責任ある仕事などでの強い緊張が考えられます。
息切れが起こった場合の対処法
息切れが起こりやすい場面をみてきましたが、ここでは場面ごとの対処法を解説します。
息をしっかりと吐く
もし、坂道や階段を上っているときに息切れをした場合、あわてずにしっかりと息を吐くことを意識しましょう。なぜなら、人は息苦しいときに無意識のうちに吸い込むことばかりを意識してしまうためです。息を吐くことによって不要な二酸化炭素が排出されないと、酸素をうまく取り込むことができません。息をしっかり吐くことによって、効率的に呼吸ができて息切れが落ち着いていきます。
病院を受診する
坂道や階段を上るなどの動作をしていないのにも関わらず息切れを起こしてしまう場合は、早めの受診をおすすめします。なぜなら、先ほどご紹介したように心臓や肺に何らかの病変が起きている可能性があるからです。病気は早期発見・早期治療が重要です。異常を感じたら、まずはすぐにかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
深呼吸をする
緊張や不安を感じているときに息切れを感じたら、まずはゆっくり深呼吸をしてみてください。なぜなら、人は緊張や不安を感じると、無意識に呼吸が浅くなったり早くなったりして、過呼吸のような状態になってしまうからです。まずは長い時間をかけてゆっくりと息を吐きましょう。息を吐き終わると、体が自然と息を吸いこむようになります。口をすぼめて時間をかけて息をゆっくり吐き、吸うときは鼻からゆっくり吸うことが深呼吸のコツです。
高齢者の息切れには要注意
高齢者が息切れをしやすくなった場合は要注意です。なぜなら、息切れは運動不足や病気のサインである可能性があるからです。「年だから仕方ない」と思っていると、息切れが原因での転倒や一時的な意識消失、病気の悪化などで取り返しのつかないことになってしまう危険があります。
早い段階で適切な対応をすることが重要です。もし、どのようにすればよいかわからない場合は、中学校区ごとに設置されている地域包括支援センターや最寄りの居宅介護支援事業所(在宅向けケアマネジャーの事務所)へ相談することをおすすめします。無料で気軽に相談に乗ってもらうことができます。
坂道で息切れをしないために
坂道を上って息が切れる方の中には、歩行をサポートする器具があれば使用してみたいと思う方もいるでしょう。そのような方におすすめなのが、「ロボットアシストウォーカー」です。
ロボットアシストウォーカーは、電動アシストによって坂道を安心・快適に歩くことができます。上り坂では電動アシストによってスイスイ上ることができ、下り坂は自動ブレーキが働くので制動が効かなくなって転倒する事故を防ぐことができます。
ワンタッチ折りたたみ機能があるため、使わないときは26cmの幅にコンパクトにたため、さらに重量が9kgと軽いため持ち運びも楽々です。また、要支援1以上の認定を受けている方の場合は介護保険適用で安価でレンタルすることも可能です。関心のある方はこちらのサイト(https://yoicare.jp/view/item/000000006216)をご覧ください。
より安全な生活にするために
ここまで、息切れの原因や対処方法について以下の通りご紹介してきました。
- ・息切れが起きる原因は、「呼吸がうまくできない」「体内にうまく酸素が行きわたっていない」「体が酸素不足であると間違って認識している」のいずれか
- ・息切れが起こりやすい場面は、「坂道や階段を上った時」「心臓や肺の病変により体内の酸素が足りなくなった時」「強い緊張や不安にさらされたとき」
- ・息切れが起こった場合の対処法は、「運動不足を解消する」「受診する」「息を吐くことを意識して深呼吸する」
- ・高齢者の息切れに気付いたら、速やかに対応策を取る必要がある
- ・「ロボットアシストウォーカー」は電動アシストにより息切れに悩む高齢者を支える介護保険対応の福祉用具である
これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。