2022.02.10

「腰痛で前にかがむと痛い、反ると痛い…」腰痛の原因や種類について解説

最終更新日:2023.01.03
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

腰痛の主な原因とは

腰痛に悩む女性

腰痛を抱えている方が症状を改善するためには、治療の前に徹底した原因究明が必要になります。 原因を突明せず、治療を開始すると腰痛を慢性化させてしまうことがあります。腰痛の原因は 7つの原因に分けられ、さらに大きく2つに分けることができます。それが「前にかがむと痛い腰痛」と「反ると痛い腰痛」で、これらは質問に答えていくことで自己診断ができます。また、「前にかがむと痛い腰痛」と「反ると痛い腰痛」以外に、まれに「曲げると痛い」「ひねると痛い」「背中も痛い」というケースもあります。

腰痛の原因自己診断

前にかがむと痛い腰痛の種類

前にかがむと痛い腰痛の種類

前にかがむと痛む腰痛のことを前屈障害型腰痛といいます。これは、長時間腰を曲げていたり、中腰でいたりすることで姿勢が悪くなることが原因で起こる腰痛です。デスクワークをされている方や、長時間運転するバスやタクシーの運転手、農作業をする方に起こりやすいと言えます。それだけではなく、物を持ち上げたり、腰をひねったりしたことがきっかけで発症するケースもあります。それでは、前屈すると痛む腰痛の原因4つについて詳しく解説していきます。

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の中でも最も診断されている数の多い腰椎の病気です。男女問わず20~40代の方に発症し、MRIを撮ることで発覚するので比較的診断の付きやすい病気です。腰椎椎間板ヘルニアは、椎骨と椎骨の間にある椎間板というクッションの役割をしている骨有核にひび割れが生じることで軟骨が外に飛び出し、外にある神経に当たることで足腰に痛みや痺れを感じます。前屈すると痛みが強くなり、腰だけでなく下肢にも症状が出るのが特徴です。原因としては過度なスポーツや労働、前かがみの姿勢になることで椎間板に圧がかかり飛び出て神経に達します。

腰椎圧迫骨折

前にかがむと痛い腰痛の中で、椎間板ヘルニアの次に多い特異的腰痛が「腰椎圧迫骨折」です。腰椎圧迫骨折は背骨を構成する椎骨の前側の部分にあたる椎体に上下から強い衝撃が加わった拍子に潰れる、またはひびが入ることで発症します。腰椎圧迫骨折の大半は骨が脆くなる骨粗鬆症の方が多いです。転倒などの衝撃だけでなく、重いものを持ったり、咳やクシャミをしたりする程度の軽い衝撃でも椎体に骨折が起こります。閉経後の女性に発症することが多く、腰に痛みが現れるものの、下肢は痛みが出ないのが特徴です。
症状としては
・寝返りが打てない
・起き上がる瞬間に激しい痛みがある
・起き上がる時に横向きになってからでないと起き上がれない
などの症状が出てきたときは腰椎圧迫骨折を疑うべきでしょう。

椎間板性腰痛

椎間板性腰痛

前屈や前かがみ、ソファーに座るなどの動きで痛みがあり、下肢に痛みやしびれがない場合には「椎間板性腰痛」が疑われます。椎間板性腰痛は椎骨と椎骨の間にある椎間板の周りにある線維輪に亀裂が入って炎症が起こり、椎間板が痛む病気です。痛んだ椎間板が変性することで血管や神経に入り込み腰痛を発生することがあります。男女問わず30~40代で発症することがほとんどです。
症状としては
・くしゃみや咳をする時に腰が痛む
・くしゃみや咳をする時に何かにつかまらずにはいられない
・低い椅子に座り込むのに痛みがあり怖い
・靴下を履く動作に痛みがある
・痛みであぐらがかけない
などの症状がある場合には椎間板性腰痛である可能性が高いと言えます。椎間板性腰痛は通常の検査では発見が難しく原因不明とされることが多いです。診断をするには椎間板造影ブロックが行われますが、一般的なクリニックでは行われません。MRIでは高輝度ゾーンをとらえられる「T2」や「STIR」という撮像方法でレントゲンを撮れば核的診断ができる場合があります。

腰椎終板炎

椎間終板炎

前屈すると痛みがあり、下肢に痛みや痺れがない場合にもう一つ疑うべきは「腰椎終板炎」です。腰椎終板とは椎体と椎間板が接する部分のことで、その部分が炎症を起こすことが腰椎終板炎です。主に発症するのは40~50代の男女です。これは、椎間板性腰痛と似ているのですが、体感的な症状に違いがあり、腰椎終板炎の方の中には背骨に不安定感を覚えたり、腰が抜けるような感覚を持ったりする方がいます。体が温まってくると腰痛が軽減するのが特徴で、起床時に痛みを感じる方が多いです。診断が難しく、原因不明とされることが多いですが、MRIで「STIR」で撮像すると炎症が浮かび上がり診断がつくことがあります。

反ると痛い腰痛の種類

反ると痛い腰痛

上体を反らせることで痛みを生じる腰痛は普段の生活では痛みを感じない場合もあります。それは上体を反らせるという生活動作が少ないからです。上体を去らせることで痛みを感じる方を「後屈障害型腰痛」といいます。主に腰を反らせたときに神経が圧迫されるために痛みが生じます。

腰部脊柱管狭窄症

後屈すると腰が痛む方の中で高齢者の場合はまず「腰部脊柱管狭窄症」を疑うべきです。腰部脊柱管狭窄症とは、椎骨が縦に積み重なってできている脊髄の通り道である脊柱管が加齢によって脊髄神経の後ろにある黄色靱帯や骨が少しずつ肥えて厚みが出てくることで脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて腰痛が起こる病気です。男女問わず50代後半から多発します。症状としては坐骨神経痛(臀部から下肢の裏側に痺れや痛み)や間欠性跛行(足が痺れて途切れ途切れにしか歩けない)などが現れます。狭窄が悪化すると神経が圧迫されるため膀胱や直腸の神経障害に及び、排泄機能に悪影響を及ぼします。下肢の筋力が低下し、麻痺症状や知覚障害が現れてくるとすぐにでも手術が必要になる場合があります。

腰椎分離症

椎間分離症

腰椎分離症のほとんどの方が小さなころに激しいスポーツにより、腰を酷使したことによって椎体が疲労骨折を起こすことが原因で発症する病気です。日本国民の6%(約700万人)が患う病気で、男性が女性の2倍に及びます。骨が折れた状態でくっつかなくなると椎体と椎弓が分離してしまいます。我慢できないほどの痛みではないので、そのまま放置してしまう子供が多くいます。後屈すると腰痛が2週間以上続く場合には専門家の診断を受ける必要があるでしょう。

椎間関節炎

椎間関節炎

椎骨は椎体と椎弓の二つの部位からできており、上下の繋がりは、お腹側は椎体と椎体が椎間板という軟骨で繋がっています。背中側は椎弓と椎弓がつながる左右の椎間関節で繋がっています。つまり、椎骨同士は左右の椎間関節と椎間板の3点で支えられています。前屈すると椎間板に負担がかかるのに対して、後屈する場合にはこの椎間関節に負担がかかるということです。高いところのものを取ったり、のけ反るような動きをしたり、ゴルフや野球のスイングなどで痛みがある場合は椎間関節が炎症を起こし負担がかかっていると疑うべきでしょう。椎間関節炎は男女問わず50歳以上に多くいものの、年齢に関係なく発症します。50歳以上になると腰部脊柱管狭窄症など、他の腰痛を併発する可能性があるのでなるべく早く発見し治すことが大切です。

長引く腰痛は専門医に相談しよう

長引く腰痛は専門医に相談

腰痛の中には我慢できてしまう程度の痛みもあります。忙しい毎日の中で我慢できる程度の痛みなら、市販のシップを貼って済ませてしまうのではなく、腰痛の原因が何なのかを専門医に相談することで、我慢できないほどの痛みになるのを防ぐことができます。まずは痛みが出たら専門医に受診しましょう。

加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。