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腰痛のセルフチェック
「もしかして腰痛!?」と、思う瞬間はみなさん経験したことがあるかと思います。しかし、すぐに痛みがなくなり気のせいで過ごしてしまう方も多くいます。実はそれが腰痛の前兆だった時には、今まで痛みを感じずにできていた動作も億劫になり、痛みと共に生活しなくてはならなくなります。では、実際にどのような症状があったら腰痛の危険信号なのか、ご自身でチェックしてみましょう。
・腰全体に痛みを感じる。
・腰全体に締め付けられるような痛みを感じる。
・仕事中のストレスを感じた時(残業や休日出勤時)に痛みを感じる。
・空腹時に痛みを感じる。
・腰を曲げた後に腰が伸びない。
・立ったり座ったりする度に腰に痛みを感じる。
・長時間作業の後に腰に痛みを感じる。
・雨の日の前日に痛みを感じる。
このような症状が出てきた時には慢性的な腰痛になるリスクがあるので注意が必要です。
腰痛の手術以外の治療とは
腰痛治療ではほとんどの場合、手術以外の保存治療が選択されます。急性期には投薬や注射なので薬物治療で痛みを緩和する治療が行われます。ただし、薬物治療はあくまで痛みを抑える治療なので痛みが緩和してきたら、理学療法で運動機能の回復をしていきます。
薬物療法
腰痛の治療で使う薬物療法には、血流改善を目的としたものや、鎮痛剤だけでなく、神経の損傷を回復するものや、骨粗鬆症の治療薬などもあります。症状によってどんな薬物療法をしていくのかは違いますが、急性期の方は痛みの緩和で薬物療法をされる方が多いです。
非ステロイド性消炎鎮痛薬
腰痛の薬物治療薬でよく使われるのが、非ステロイド性消炎鎮痛薬です。非ステロイド性消炎鎮痛薬は痛みや炎症の発生に関与する物質を作り出すのを抑える効果があり、即効性の高い薬です。効果が高い分、注意しなければならないことも多くあります。主な副作用としては、胃腸障害や気管支喘息、腎機能への影響があります。胃腸障害は多めの水で薬を服用することである程度防ぐことができます。気管支喘息については、非ステロイド性消炎鎮痛薬過敏症の方にみられます。そのため、喘息発作や鼻症状が生じるアスピリン喘息既往がある方は使用が禁止されています。
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは非ステロイド性消炎鎮痛薬と同様に鎮痛効果が得られる薬です。しかし、日本ではほとんどの場合、非ステロイド性消炎鎮痛薬が第一選択薬として使われています。それはアセトアミノフェンの決められた基準量では効果が不十分とされていたからです。2011年に使用可能な基準量が増え、アセトアミノフェンの普及は広まりました。現在では軽度から中等度程度の痛みには十分効果があるとされ、また非ステロイド性消炎鎮痛薬ほど副作用のリスクが高くないことから安全な薬として使用されています。
オピオイド
オピオイド鎮痛薬には強オピオイド薬と弱オピオイド薬に分類されます。強オピオイド薬はモルヒネのような医療用麻酔に分類され、弱オピオイド薬は麻酔に分類されません。弱オピオイド薬は非ステロイド性消炎鎮痛薬やアセトアミノフェンでは十分な効果が得られない、痛みに対して効果が期待できます。副作用として嘔吐、吐き気、めまい、便秘、傾眠などがあり、投与されるとすぐに症状が現れます。時間の経過とともに副作用は減少する傾向にありますが、投与前に吐き気止めや下剤を服用することで副作用を減らすことができます。弱オピオイド薬は「弱」とはいえ、副作用、依存症には注意が必要です。一見危険な薬に聞こえますが、医療用麻酔ではないのは依存性が低いからです。しかし、全く依存性がないわけではありません。長期的に使用する際には依存性があるので中止、減量の時には注意が必要です。突然の中止は精神過敏、不安、ふるえ、不眠症などの離脱症状が現れることがあります。
デュロキセチン(SNRI)
デュロキセンチは抗うつ薬の一つとして販売されていますが、慢性疼痛、変形性関節症が効果、効能としてあります。慢性腰痛への効果が有効とされています。抗うつ薬ですが、うつ病ではない方が摂取しても変化は起こりません。1日1回1錠(20ミリグラム)から服用を始め、ほとんどの方がそれで効果を感じられます。それでも効果を感じられない方は1日3錠まで増やすことができます。デュロキセンチは服用後数日でいままでより楽になったと感じる方が多いようです。
神経ブロック注射療法
急性の激しい痛みや、痛み止めを使っても強い痛みが取れない時には神経ブロック注射を使うことがあります。神経ブロック注射とは、局所麻酔薬によって痛みの伝達を遮断する治療方法です。神経ブロック注射は神経をマヒさせる局所麻酔と炎症を抑えるためのステロイド薬を併せて注射します。一時的に痛みが消えるだけでなく、ステロイド薬を注射することで周辺の炎症を抑える働きもあります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで神経根が圧迫されて、歩けないほどの痛みや痺れがある時には、神経ブロック注射が有効です。
理学療法
理学療法とは体を動かして行う運動療法と、物理的な刺激を与える物理療法の総称です。腰痛における機能回復や、痛みの緩和を目的としたリハビリです。
運動療法
運動療法は運動によって病気を治療することです。腰痛の方で運動療法な有効な方は、体や骨の歪みが原因で腰痛を引き起こしている方です。腰痛になって間もない方は特に効果的です。腰痛における運動療法の目的は、体幹の安定性向上と正しい姿勢の獲得です。体重をバランスよく支える姿勢を獲得することで根本的な解決になることが多いです。運動療法を積極的に取り入れることで筋力や関節の柔軟性が上がることや、免疫力の向上などのメリットがあります。
物理療法
物理療法には「牽引療法」「超音波療法」「温熱療法」「装具療法」「マッサージ」などがあります。
牽引両方
牽引療法は体を伸ばし、専用の牽引機で腰椎を引っ張る理学療法です。体を引っ張ることで腰椎と腰椎の間にある椎間板や坐骨神経の圧迫を抑えられる効果が期待されます。神経症状のある方は牽引両方が盛んに行われてきましたが、最近はエビデンス不足が指摘されています。しかし、牽引機がおいてある整形外科が多く、現在でも取り入れられています。効果がある方は続け、効果がない方は他の治療に切り替えるよう、専門医に相談すると良いでしょう。
超音波療法
超音波療法は人間に聞き取れない周波数の音波を超音波振動に変え患部を治療する方法です。超音波療法のメリットとして、体の奥深くまで刺激を届けることができることや、体への悪影響がないこと、体の内部もチェックできることがあげられます。
温熱療法
温熱療法は患部を温めて血行を良くすることで痛みを和らげる治療法です。慢性的な腰痛を持っている方に効果的です。急に高温を当てるのではなく、適温で体の深部までじっくりと温めていきます。自宅で簡単にできる反面、低温やけどなどには注意して行う必要があります。
マッサージ
マッサージはすべての腰痛を改善する手段ではありませんが、症状の改善には十分期待できます。なぜなら、多くの腰痛は筋肉の緊張や血行不良から起こっているからです。こりをほぐすというのは、腰痛予防、改善に有効な手段です。特に、反り腰や猫背の方は筋肉に負担がかかっていることが多いので腰痛に発展する可能性があります。こりをほぐして腰痛予防していくことは有効です。
まずはかかりつけ医に相談しよう
腰痛は、「あれ?おかしいな」と思った時からすでに始まっています。日ごろから姿勢や筋肉の緊張、凝りなどに注意し、セルフチェックで当てはまるようなことが起こったときには医師に相談してみるのもいいでしょう。
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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。