2021.08.02

認知症が進むとどうなる|進行に伴う介護や中核症状と周辺症状を解説

最終更新日:2021.08.02

認知症の進み方

認知症‗症状‗進行

家族の介護をしている方にとって、認知症は決して他人事ではありません。認知症は高齢者によく見られる病気のひとつですが、進行具合により症状が異なることをご存じでしょうか。

認知症は、軽度のもの忘れが現れる「軽度認知障害」からはじまり、「早期・初期」「中期」「後期・末期」の段階で進行していきます。認知症の種類によって異なるものの、認知症の多くが年月をかけゆっくりと進行し、日常生活に徐々に支障をきたしていくのが特徴です。時間や場所が認識できなくなる初期症状が進行すると、徘徊や失語といった行動症状が加わる中期へと移行します。さらに時間をかけ、後期・末期へと進むのが認知症の特徴です。一般的に発病から5年以降を「後期・末期」と呼んでいます。

段階によって症状が異なるため、介護を行う方の接し方も変えなくてはなりません。もっとも多いといわれるアルツハイマー型認知症は、症状が出る10~20年前から脳内で病的な変化が進んでいるとも言われています。進行度合いには個人差があるものの、特に高齢者は急激な悪化はみられません。本記事では、認知症の進行度合いごとの症状や接し方、介護のポイントについて解説していきます。

認知症の手前には前兆がある(軽度認知障害)

認知症‗前兆‗経度認知障害

認知症になると、周りの人や自分のことまで忘れてしまう、といった印象を持つ方は少なくありません。たしかにそれも認知症の症状ですが、実際にはさまざまな症状が存在します。また、認知症には軽度認知障害と呼ばれるものがあり、これはまだ完全に認知症には至っていない段階です。軽度認知障害は、主に老化が原因といわれており、もの忘れが酷くなったような症状が特徴です。また、部分的に記憶が抜け落ちてしまうケースもあります。

軽度認知障害の段階で気付けば、予防も可能

認知症と診断されてしまうと、そこから大きく症状を改善させることは困難です。進行を遅らせることはできますが、根本的な治療が難しいのが現状なのです。ただ、軽度認知障害の段階なら、適切な対策を行うことで完全に認知症へ移行するのを防げます。認知症を予防するためにも、軽度認知障害の症状が確認できたら、なるべく早めに病院で診察を受けることをおすすめします。

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早期・初期

認知症‗初期‗早期‗進行‗中核症状‗周辺症状

2025年には65歳以上の5人に1人が発症すると言われている認知症。「認知症と診断されたらどうすれば?」「進行したらどうなってしまうんだろう」と、高齢者やそのご家族のなかには、認知症に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。認知症は早期発見・治療することで、進行を遅らせたり症状を緩和させたりできる病気です。認知症の早期・初期の初期症状や介護のポイント、早期発見のメリットについて解説します。

初期の症状と発見のポイント

認知症‗初期‗症状‗発見

認知症の早期・初期段階においては、集中力や判断速度の低下などが見られます。約束を忘れてしまったり、何度も同じ話を繰り返すようなこともあります。この段階では、急激に症状が悪化するケースは少なく、少しずつ症状が進行していくことが特徴です。この段階では、もの忘れが目立ちます。鍵や財布、携帯電話など持ち物をなくしてしまう、同じものを何度も購入してしまうといったケースも少なくありません。また、周りの人の会話についていけなくなる、信号が変わりそうなのに横断歩道を渡ろうとしてしまうなど、判断速度が以前に比べて鈍くなり、理解力が低下してしまいます。集中力も低下してしまうため、ひとつのことを続けられなくなることが多いようです。たとえば、今までは小説を読むことが大好きだったのに、まったく読まなくなった、没頭していた趣味をやめてしまった、といったことが該当します。

接し方のポイント

認知症‗初期‗症状‗介護

介護者や家族など、周りの人は本人の不安を煽るようなことを口にしないよう注意しましょう。「認知症なんじゃないの?」と何度も詰問したり、責めるような口調で迫るのもNGです。理解力や判断力が低下しているため、会話についていけなくなる可能性があります。そのため、なるべく丁寧かつゆっくり話してあげることを心がけましょう。ケガや事故などのリスクも高まるため、普段から行動を気にかけてあげることも大切です。

早期・初期の介護のポイント

認知症‗初期‗早期‗介護

認知症の多くは、同じ話を繰り返したり物をなくしたりするといった、もの忘れの症状から始まります。症状の進行をなるべくゆるやかにするためにも、早期・初期の介護は以下の3つのポイントに注意しましょう。

早期の受診で病気の原因を突き止める

「認知症かもしれない」と不安を感じたら、早期に受診し原因を見極めることが大切です。認知症の症状をもたらす病気の中には、何らかの原因で脳を圧迫しているものもあり、その場合は早期に治療することで症状が改善される場合もあります。認知症の診断を行うのは、もの忘れ外来や認知症外来のほか、脳神経外科などさまざま。「どこを受診してよいか分からない」という場合には、まずはかかりつけ医に相談することからはじめましょう。

介護保険を申請する

介護保険サービスを利用するためには、地域包括支援センターか市町村の窓口に申請し「要介護認定」を受ける必要があります。要介護認定の区分は「非該当(自立)」「要支援」「要介護」の大きく3つあります。利用できるサービスは区分によって異なりますが、要支援1から介護予防訪問やショートステイなどの在宅サービスの利用が可能です。認知症の症状が進行すれば、将来的には家族の介護負担も大きくなります。先を見据えるためにも、早い段階で介護保険を申請し、利用できるサービスを理解しておくと安心です。

これまで通りの生活を維持する

環境の大きな変化は、認知症の症状を進行させる恐れがあります。そのため、認知症と診断されても、これまでどおりの生活ができるように支援することが大切です。衣食住だけでなく、趣味や生活習慣に関しても本人の意思を尊重するように心がけましょう。

医師との連携を怠らない

認知症はタイプにより対応が異なるため、医師と連携をはかりながら介護する必要があります。「いつもと様子が違う」と感じたときには、かかりつけ医のほか、認知症専門医に連絡できる体制を整えておきましょう。近年は「認知症疾患医療センター」が各地に設置されており、認知症の相談から治療、介護保険申請などを支援する役割を担っています。

早期発見のメリット

認知症‗初期‗早期‗介護

認知症の早期発見は、本人だけでなく家族にもメリットをもたらします。認知症の診断を悲観的にとらえるのではなく、早く分かったからこそ適切な治療ができると考えましょう。

薬で進行を遅らせることができる

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症には、進行を抑制できる薬があります。現状維持が期待できる場合もあるため、例え大きな症状が無くても服薬を続けることが大切です。自立度が高い段階を維持するためにも、認知症は早期発見・早期治療に大きなメリットがあると言えるでしょう。

薬物以外の療法も期待できる

認知症の治療には、薬物治療のほか薬を服薬しない「非薬物療法」があります。すきな曲に合わせて身体を動かしたり、歌ったりする音楽療法もそのひとつです。イスに腰かけながらできるストレッチや散歩などの運動療法は、睡眠障害を軽減できるとも言われています。早期の症状に合わせ、リラックスしながら行うことが症状の緩和へとつながります。

適切な介護ができる

「最近なんだか様子がおかしい」と家族が気付いているにもかかわらず、医療機関に受診させずに本人を改めさせようとすると、周辺症状と呼ばれる症状に変化し、認知症をさらに悪化させてしまいます。しかし、本人の変化に家族が気付き、初期の段階で病院に受診することが出来れば、もの忘れや不安症状、暴力的な態度が認知症によるものだと分かり、症状に合わせた適切な介護を検討できます。医師や看護師、介護士や自治体と連携をはかりながら、本人と家族にとって最適な介護サービスを検討することができるでしょう。認知症の周辺症状は、不穏や抑うつ、暴力や暴言など心理面や行動面の症状が強くなり、本人や家族が混乱したり、生活環境も影響します。そのため、適切に対応することで、本人の不安を取り払う効果も期待できるでしょう。

介護者が受け入れられる

認知症の診断を受けることは、本人はもちろん、家族にとっても大きな出来事です。認知症について分からないほど、その不安は大きなものとなるでしょう。しかし、早期に認知症が発見できれば、専門医の診断を仰ぎながら将来の見通しをたてることができます。症状が進んだらどのような生活をしたいのか、本人と一緒に相談することも可能です。リビングウィルとも呼ばれる医療・介護の希望をかなえることは、本人の不安をやわらげ、自分らしく生活できるという大きなメリットへとつながります。認知症は、早期に発見し治療を始めることが大切です。発病初期であれば、適切な支援で進行の抑制も期待できます。本人はもちろん家族のためにも、認知症には医療や介護、地域のサポートは欠かせません。気になる症状があるときには、なるべく早く病院を受診するように心がけましょう。

関連記事:若年性認知症(若年性アルツハイマー)とは|具体的な原因・症状など

中期

認知症‗進行‗中期‗症状‗中核症状‗周辺症状

この段階になると、症状が進行するスピードは少しずつ速くなります。初期に比べて記憶障害が進行してしまい、他人の言葉が理解できなくなる、物事の手順がわからなくなる、といったことが増えます。本人の不安をいたずらに煽らず、問題行動が出ないよう周囲は気を配ってあげなくてはなりません。中期の症状や中期症状に合わせた介護のポイントを解説します。

中期の症状

認知症‗進行‗中期‗症状‗記憶障害

記憶障害が初期段階よりもさらに進んでしまうため、いろいろなことを忘れてしまう可能性があります。家族や友人などの名前がなかなか出てこない、約束した日時を完全に忘れてしまう、といったことも増えてしまいます。周りの人が話していることをあまり理解できなくなり、会話に入れなくなることも少なくありません。そのため、今までお喋りが好きだった方も、急に物静かになってしまうことがあります。この段階になると、イライラすることが多くなり、周りに当たり散らすことも増えます。覚えていたはずのことが思い出せず、周りの会話にもついていけないため、ストレスが溜まってしまうのかもしれません。お金や薬などの管理も自分でできなくなることが増えるため、周りが気をつけてあげる必要があります。

接し方のポイント

認知症‗進行‗中期‗症状‗介護

中期段階まで症状が進行すると、認知症らしいさまざまな症状が確認できます。今までしっかりしていた家族が、突然変わってしまったようで家族は悲しくなるかもしれませんが、変化をきちんと受け止めましょう。そのうえで、問題行動を起こさないよう注意が必要です。この段階になると、イライラして大声を上げたり、危険が迫っていると誤って認識してしまい警察を呼ぶ等、問題行動を起こすことが少なくありません。普段から行動に注意し、薬の誤飲にも注意してあげましょう。

中期の介護のポイント

認知症‗中期‗症状‗介護

認知症が「中期」まで進むと、時間や場所が分からなくなる見当識障害が進行し、徘徊や失語といった症状が現れます。徘徊による事故や行方不明の恐れもあり、周囲の介護負担が大きな時期にあたります。

周辺症状(BPSD)は叱らない

BPSDとは、認知症の主な症状である「周辺症状」のことです。記憶障害や見当識障害といった「中核症状」に、生活環境や身体状況が影響することによって進行します。時間や場所が判断できなくなる見当識障害は、認知症患者にとっても不安なものです。そのなかで「なんで同じことを何度も聞くの」「どうしてわからないの」と責められると、さらなる混乱が生じてしまいます。なんとかしなければという思いがさらなる問題行動となって現れ、結果的にBPSDが進行してしまうのです。そのため、認知症のBPSDは怒ったり責めたりせず、まずは患者本人の話しを受け入れることが大切です。身体状況に気を配りながら、気持ちを落ち着かせるように心がけましょう。

家族の認知症を受け入れる

認知症の介護には、医療や看護・介護のほか、地域のサポートを欠かすことはできません。適切な介護をするためにも、まずは身近な家族が認知症を受け入れ、理解する必要があります。また、家族の介護負担を軽減してくれるのが、介護保険を利用した介護サービスです。認知症患者の心身状況に寄り添いながら、もっとも最善と思われる介護を検討していきましょう。

失火や転倒事故に気を付ける

認知症の中期は、行動症状と心理症状がもっとも現れる時期です。そのため、「コンロの火をつけたまま忘れてしまう」「徘徊先で転倒する」といった事故のリスクも高くなります。身近な家族としてはすべての危険を回避したくなりますが、「今できること」の否定は自尊心を傷つけることにもつながります。進行を抑制しこれまでの生活を維持するためにも、できる限り本人の意思を尊重することが大切です。

認知症の方向けの施設がある

居宅での介護が難しいと感じたときに利用を検討したいのが、グループホームです。グループホームは、認知症の高齢者を対象とした介護福祉施設です。「ユニット」と呼ばれる少人数の共同生活を基本としており、認知症の方でもゆったりとしたペースで穏やかに生活できます。調理や掃除といった家事を職員と一緒に行うことで、症状の進行を遅らせることができるのもポイントです。認知症ケアの専門知識を持つ職員が常駐しており、認知症高齢者に適した支援が受けられます。

入居対象となるのは施設と同じ市区町村に住民票を持つ高齢者のため、慣れ親しんだ土地で暮らせることも大きなメリットです。認知症の中期は、心理症状と行動症状が同時に現れ、目を離したすきに徘徊してしまっているなど、介護者にとっても負担の大きな時期です。しかし、問題行動を責めたり怒ったりすると、症状はさらに悪化する恐れがあります。認知症の介護負担は家族だけで抱え込まず、介護保険サービスを利用しながら患者本人が自分らしく過ごせるように支援していきましょう。

関連記事:在宅介護の限界点について 見極め方を解説

後期・末期

認知症‗進行‗末期‗症状

認知症における最終段階です。中期に比べると症状の進行スピードはややゆるくなります。この段階まで症状が進んでしまうと、家族はもちろん自分のことがよくわからなくなり、会話が成り立ちません。

後期・末期の症状

認知症‗後期‗末期‗症状‗寝たきり

認知症の後期・末期になると、中期の頃に比べ、できることやわかることが減ってきます。家族のことがわからなくなり、他人と接しているような口調になることがあります。また、ケースによっては自分の名前を思い出せなくなることも。今までのような会話もできなくなります。勝手に家を出て行ってしまう、暴れるといった問題行動を起こすケースも珍しくありません。家族も介護疲れを起こしてしまうおそれがあるため、注意が必要です。

この段階になると、1人で日常生活を送るのはほぼ不可能です。全面的な介護が必要となり、四六時中誰かが見守ってあげる必要性も生じます。また、人によっては運動機能が大きく低下してしまい、寝たきりになることも少なくありません。また、認知症の人の老化はとても早く、認知症でない人の2~3倍のスピードで進行します。認知症の人は、今から2年後は4~5歳、年を取ったことになります。おおよその生存年数は、8年前後~10数年です。

認知症の後期・末期の症状は以下があります。

・家族がわからなくなる
・会話が成立しなくなる
・家でトイレの場所がわからない
・全面的な介助が必要になる
・運動機能が低下し、寝たきりになる

接し方のポイント

認知症‗後期‗末期‗症状‗寝たきり

できるだけ目を離さないことが大切です。寝たきりなら問題行動の心配はありませんが、突然体調を崩してしまうこともあるからです。日ごろから、健康面のチェックをきちんと行ってあげましょう。尿意や便意を伝えられない可能性もあるため、そのあたりも気をつけてあげてください。薬の管理や感染症などにも注意しましょう。また、今まで中心となる家族が1人で介護を負担していたケースでは、それが困難になります。要介護者との会話が成立しにくくなり、介護者はしばしば無気力感や絶望感を抱くこともあります。介助の担い手を増やして、なるべく多くの人が関わり、1人の負担を減らすことが大切です。

家族の接し方のポイントとしては、6つあります。

① 日常の観察を怠らない
② 体温・血圧・脈拍などのチェックをする
③ 薬の事故に注意する
④ 感染に気をつける
⑤ 便秘・脱水に気を付ける
⑥ 褥瘡に気を付ける

後期・末期の介護のポイント

認知症‗後期‗末期‗症状‗寝たきり

「認知症が後期まで進むとどうなるのだろう」認知症患者の介護にあたるなか、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。認知症の中核症状や周辺症状は、病状が進行するにつれ変化を見せていきます。認知症の後期・末期は、身体状況に配慮した介護が必要です。家族の介護負担も大きくなるため、介護者が症状について理解しておけば、その都度適切に対応できるのです。認知症の後期・末期の症状や介護のポイントについてお伝えしていきます。

無理をしない介護を心掛ける

後期・末期になると、身体機能が低下し、自立歩行や座った状態を保つことが難しくなります。そのため、日常動作すべてに介助を欠かすことができません。協力できる家族が少ない場合には、その負担はさらに大きなものとなります。介護動作は腰に負担がかかるものも多く、腰痛の原因にもなり得るでしょう。介護者が体調を崩さないためにも、認知症の介護は周囲のサポートを受けながら行うことが大切です。同居する家族や地域の介護サービスを利用し、無理のない介護を心掛けましょう。

「ためない介護」を心掛ける

「食事を食べてくれない」「毎回失禁する」「意思疎通がはかれない」といった認知症後期の症状は、介護者にとって大きなストレスとなります。認知症の家族が自分を忘れてしまうことに、ショックを感じることもあるかもしれません。日々の身体的な疲労に加え、精神的疲労が積み重なることも多いでしょう。介護の不満やストレス軽減にも、介護保険サービスは大いに役立ちます。訪問介護や通所介護を利用すれば、介護から離れる時間を確保できるでしょう。日々の不安や悩みも、ケアマネジャーや介護士といった介護のプロに相談し、解決策を見出すことができます。認知症の介護は決してひとりで抱え込まず、他者のサポートを受けながら行うことが大切です。

介護者の健康管理を行う

認知症が進行し身体機能が低下すると、免疫力が衰え、感染症にかかるリスクが高まります。また、寝たきりになると肺炎を起こしやすくなるほか、筋力の低下も考えられます。食事を飲み込む力が弱まり、誤嚥を起こしやすくなるのも後期・末期の特徴です。そのため、この時期の介護は健康管理に特に注意する必要があります。定期的な受診を欠かさず、日々の変化はかかりつけ医にその都度報告するようにしましょう。リハビリ職と連携し、座ったままできる運動を検討するのも効果的です。

限界になったら、施設への入所を検討する

認知症が進行し、家族の負担が限界になった場合には、施設への入所を検討しましょう。認知症患者が入居する代表的な施設には、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、有料老人ホームなどが挙げられます。それぞれ料金や形態が異なるため、施設選びはケアマネジャーや地域包括支援センターの窓口に相談するのがおすすめです。利用できるサービスや、施設の空き情報など把握することができるでしょう。また、多くの施設は入所前の見学を受け付けています。入居する本人の思いや希望に寄り添いながら、長期的な視野をもって施設選びに取り組みましょう。認知症の後期・末期の介護は、身体的負担だけでなくストレスも大きなものです。限界を感じた時には入所を検討したり、介護サービスの内容を振り返ったりするなど、無理のない介護を心掛けるようにしましょう。

関連記事:親の認知症に悩む家族の方へ、認知症の親とコミュニケーションする際に大切な3つのこと

中核症状・周辺症状のまとめ

認知症の症状‗中核症状‗周辺症状

認知症の症状は、大きく分けて「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」があります。 それぞれの症状について記載していきます。少しでも症状を理解することで、認知症本人の気持ちに寄り添った介護につながります。

中核症状

中核症状とは、脳細胞がダメージを受け、脳本来の働きが低下するために起こります。中核症状の例を5つ紹介します。

記憶障害

認知症‗中核症状‗記憶障害‗海馬

 

年をとると誰でも記憶は衰えます。しかし、認知症になると、最近の記憶をためる「海馬」と呼ばれる場所の細胞が壊れ始め、直近のことが覚えられなくなります。さらに進行とともに、記憶倉庫も壊れていきます。老化の場合は、海馬や記憶倉庫の機能が衰えますが、働きは保たれます。

見当識障害

認知症‗中核症状‗見当識障害

見当識とは、現在の年月や時刻、居る場所など、自分の基本的な情報を把握することです。見当識障害になることで、以下のようなことが起こります。

・時間が分からなくなる
長時間待ったり、時間に合わせて外出したりすることが出来なくなります。さらに進行すると、日付や季節、年齢などもわからなくなります。

・迷子になる
方向感覚がわからなくなり、良く通る道でも迷うようになります。さらに進行すると、家の中のトイレの場所もわからなくなります。

・人間関係が分からなくなる
過去の記憶が失われると、自分の年齢や家族の顔や生死が分からなくなり、娘を「お母さん」と呼んだりする。

理解・判断の障害

認知症‗中核症状‗理解判断の障害

・考えるスピードが遅くなる
・同時に2つ以上のことをこなせない
・危険に鈍感になる
・銀行のATMや洗濯機など機械の操作が出来ない
・買い物などで計算が出来なくなる
・いつもと違うことが起こると混乱する(突発的な出来事に弱い)

実行機能障害

認知症‗中核症状‗実行機能障害

料理など「1番時間がかかる炊飯器のスイッチを入れてからおかずを作ろう」といった、段取りの組んで実行することが出来なくなります。ただし、ご飯を炊く、味噌汁を作るといった、ひとつひとつの動作はできるため、家族の適切な声掛けが大切です。

その場の空気が読めない

認知症‗中核症状‗その場の空気が読めない

周囲の状況が判断できない為、世間話をしている人たちに向かって、自分のことだと思って怒りだしてしまうなど、突拍子のないリアクションをします。

周辺症状

周辺症状とは、行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれています。周辺症状には「不安症状」と「BPSD」と呼ばれる症状があります。

認知症‗周辺症状‗行動心理症状‗BPSD‗不安症状

症状が強く出る場合には、家族の介護を困らせますが、周辺症状はすべての人に見られるわけではなく、個人差があります。中核症状による不自由さや個人の特性などが複雑に絡み合って起こる症状です。個人の特性とは以下6つです。

① 生い立ちや社会人になってからの経歴
② 性格、素質
③ 孤独であるかないか
④ 不安であるかないか
⑤ 生き方やポリシー
⑥ 現在の生活環境
特に男性は職業経験(農業・漁業、会社員、公務員など)、女性では子育て経験が行動に現れやすいと言われています。

また、介護者の対応によっては症状を軽減させることができます。さらに、本人の性格や、病気について理解をしていれば解決できる症状もあります。例えば、周辺症状である見当識障害により、夜にトイレの場所が分からなくなり失禁してしまう介助者に対して、トイレのドアを開けて電気をつけておくなど対策を考えておくことで解決できる場合があります。

不安症状

認知症‗周辺症状‗不安症状

・初期には、自分の症状に違和感をおぼえ、不安・焦燥を感じる
・自発性の低下により、物事に興味を示さなくなる
・落ち込んだり、怒りっぽくなるなどのうつ状態
・実際にないものを見たり聞いたりする幻覚・妄想
・意識がもうろうとして幻覚を見るなどのせん妄状態
・喜怒哀楽の感情が鈍くなる情緒障害
・寝つきが悪い、長時間寝れないなどの睡眠障害

BPSD

認知症‗周辺症状‗BTSD‗徘徊‗失禁

・当てもなく歩きまわる(徘徊)
・身近な人に暴力をふるう(暴力)
・排泄に失敗する(失禁)
・食品以外のものを口にする(異食)
・急に興奮して騒ぎ立てる(不穏)

関連記事:分かりやすく解説|認知症の中核症状と周辺症状の関係について

最後まで優しい気持ちで介護をしよう

認知症が進むとどうなる‗進行

認知症の人が老弱するパターンとしては、例えば「1日のほとんどを徘徊しても疲れた様子もなかったのに、あるときから食事を嫌がるようになり、あっという間に寝たきりになって、亡くなってしまった」、あるいは「デイサービスのレクリエーションなどにも積極的に参加しておしゃべりも大好きだった人が、だんだん意欲が無くなり動きも悪くなり、家にこもって寝たきりになった」というケースが沢山あります。認知症は、そう長くは面倒を見てあげられないのが事実です。そう思えば、介護は大変でも日々、残された時間を優しい気持ちで介護してあげようという気持ちになれるかもしれないです。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。