2023.10.23

【足のむくみが気になる方へ】原因や予防・解消方法、介護靴の選び方のポイント

最終更新日:2023.12.06
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

足のむくみは高齢者で多くみられる症状の一つであり、足のむくみがあるために歩行が不安定になってしまい、外出頻度の低下や場合によっては寝たきりになるケースもあります。
また介護靴は選び方によってむくみに悪影響が出てくる場合や、反対に改善することもある重要な福祉用具の一つだといえます。
ここでは、足のむくみの原因や介護靴の選び方などについてご紹介します。最後におすすめの介護靴についてもご紹介します。
また、むくみは個人の判断でマッサージなどをすると悪化する場合もありますので、症状が酷い場合は医療機関への受診をお勧めします。

高齢者の足のむくみとは

高齢者の足のむくみは別名「浮腫」と呼ばれます。足のむくみは、基本的に下肢の血液やリンパの流れが悪くなることで生じます。高齢になるにつれ、心肺機能や足の筋力が低下することから、下肢の血液が滞りやすくなり、むくみが起きやすくなるのです。また、高齢者は一般的に身体を動かす機会が少なくなるため、足を動かす機会も減ることでもむくみが起きやすくなります。

高齢者の足のむくみの原因

高齢者のむくみの原因

高齢者の足のむくみが起こる原因として、大きく分けて「病気によるもの」「薬の副作用によるもの」「生活習慣により体内の血液の流れが悪くなること」の3つがあります。

病気によるもの

高齢者の足のむくみは、病気が関連している場合もあります。むくみによる生活への影響だけでなく、原因となる病気そのものも健康な日常生活の障害となります。むくみが気になる場合は主治医に相談するなど、積極的に治療しましょう。むくみの原因となる病気の一例としては、以下のような病気が考えられます。

  • ・慢性下肢浮腫
  • ・エコノミークラス症候群
  • ・深部静脈血栓症
  • ・下肢静脈瘤
  • それぞれの症状の原因や特徴をご紹介します。

  • 慢性下肢浮腫になる

  • 慢性下肢浮腫とは、高齢者特有の状況によって生じるむくみです。具体的には、以下のような生活状況がむくみの原因になります。

  • ・長時間同じ姿勢で過ごす
  • ・筋力低下や歩行時の痛みで、上手に下半身を使えない
  • ・新陳代謝が低下している
  • 悪化すると下肢の鈍重感や痛みを伴うようになるので、悪化する前に対処しましょう。

  • エコノミークラス症候群

  • エコノミークラス症候群は、水分摂取の不足と長時間同じ姿勢でいることが原因です。足の静脈に血の塊ができるので、むくみの原因になります。

    症状が悪化すると足の静脈にできた血の塊が血流に肺に流れ、細い血管で詰まることで死亡する危険性もあります。適度な水分摂取や下肢のマッサージが予防のポイントです。

  • 深部静脈血栓症

  • 深部静脈血栓症とは、下半身が圧迫され続けて血流が滞り、下肢静脈に血栓ができる病気です。最近手術した方やガンの方、ホルモン剤を服用している方が起こしやすい傾向にあるといわれていますが、原因が分からない場合もあります。足が赤黒くむくみ、痛みを伴うのが特徴です。放置すると命にかかわるので、速やかに受診しましょう。

  • 下肢静脈瘤

  • 下肢静脈瘤は、足の静脈に水分がたまってしまうことで血管がデコボコに膨れ上がる症状があります。すぐに命にかかわるような症状はありませんが、放置すると慢性的なむくみや足のだるさ、こむら返りの原因となります。不快な症状により日常生活に支障をきたす場合もあるので、我慢せずに治療するようにしましょう。

  • 薬の副作用による足のむくみ

ロキソニンなどのNSAIDs系の痛み止め、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬といった血圧を下げる薬(降圧剤)、抗生剤、抗がん剤など

生活習慣による足のむくみ

塩分の多い食生活になっている、運動習慣が乏しく加齢に伴う筋力低下が起きやすい、体が冷えやすくなる習慣があるなど特に高齢者の場合は、年齢が若い方と比べて循環が悪い傾向にありますので、少しの原因でも大きくむくみが出るケースがありますので、注意が必要です。

 

足のむくみによる悪影響

足のむくみ

それでは足のむくみが発生することによって、引き起こされる悪影響とはどのようなものがあるのでしょうか。足のむくみによる悪影響は大きく4つあります。それぞれみていきましょう。

足首の動きが悪くなる

むくみは足首が最も顕著に出やすいとされています。その為、むくみが引き起こされると足首の動きが悪くなります。足首の動きが悪くなると、歩きにくくなってしまうのです。
地面を上手く蹴ることが出来ずに歩行の際に足が上がらなくなる、動きが悪いので膝や股関節に負担がかかってしまい痛みが出るなど、生活に支障が出ることも少なくありません。

菌が侵入すると悪化する

蜂窩織炎と呼ばれる、菌が体内に侵入し炎症を起こしてそれがむくみに繋がるという病気があります。これはむくみが原因で引き起こされることもあります。むくみが起きているということは皮膚が張っている為、少しの外的刺激でも傷が出来てそこから菌が入ることもあるのです。
また、むくみによって感覚も鈍くなっているので、知らない間に傷を作ってしまいそこから菌が侵入して悪化するというケースもあります。

体が冷えやすくなる

むくみが起こると、血管が圧迫されて血液循環が悪くなり、体が冷えやすくなります。また、むくみによって運動不足になる方もいますので余計に冷えやすいといえます。
高齢者の場合は元々冷えで悩んでいる方も多いですので、むくみによって更に冷えを感じて動くことが億劫になって生活に支障をきたす場合もあります。廃用症候群と呼ばれる寝たきりになってしまうような病気の元々のきっかけが、体の冷えから来る活動性の低下の場合もありますので十分に注意しましょう。

高齢者のむくみ予防と解消方法

足のむくみ

高齢者のむくみの予防や解消を図るためには、以下の方法が有効です。

  • ・効果的なマッサージ
  • ・塩分や水分の摂りすぎに気を付ける
  • ・着圧ソックスの使用
  • ・足を高い位置に上げる
  • ・介護靴を履き、足への負担を軽減する

足のむくみは、悪化すると歩行や日常生活に支障をきたす恐れがあります。高齢者の生活の質を維持するためには、むくみを予防したり早期に解消したりすることが非常に重要です。

高齢者のむくみ予防や解消に有効な方法について詳しくご紹介していきます。

むくみに効果的なマッサージ

高齢者のむくみを予防・解消するためには、マッサージを行うことが有効です。ただ単純に揉むだけではなく、血流の促進を意識したマッサージが効果的です。以下のようなマッサージを試してみましょう。

  • マッサージ1
  • ・足首を回したり、上下に動かしたりする
  • マッサージ2
  • ・つま先から足首をさする
  • マッサージ3
  • ・椅子に座った状態で、アキレス腱を10秒ほど優しく揉む
  • マッサージ4
  • ・椅子に座った状態で、両手で膝を挟んで優しく押す
  • マッサージ5
  • ・足の付け根を親指で指圧する
  • マッサージ6
  • ・ふくらはぎを下から上に(足首側から膝側に)向かってさする
  • マッサージ7
  • ・足の裏をまんべんなく指圧する(ゴルフボールを足の裏で転がすようにするとなお良い)
  •  
  • むくみは、血流の滞りによって起こります。これらの効果的なマッサージを行うことで、むくみの予防や解消が期待できるでしょう。
  • むくみに効果的な運動

    ・ふくらはぎの筋肉をしっかり動かす:立った状態でどこかに掴まりながら背伸びの運動を10回×1~3セット程度行う

    ・足首の関節をしっかり動かす:つま先を上げたり下げたりする運動を10~30回程度、足首を回す運動を右回し左回し各10回程度

    ・足の指をしっかり動かす:足の指でぐーぱーを行う足指の曲げ伸ばし10回×1~3セット

    水分が正しく循環するよう血行改善

    足の筋肉や関節が硬くなり体内の水分や血液の流れが滞るとむくみが現れやすくなります。むくみの改善・予防のためには、足の筋肉や関節を柔らかい状態に保つことが重要です。

    塩分や水分の摂りすぎに気を付ける

    塩分は水分を身体にため込む性質があります。塩分や水分を摂りすぎると身体の血液量が増え、下肢の血液がうっ滞した際にむくみが生じやすくなります。味付けの濃い食事が好きな方は、醤油やソースなどのかけすぎに注意した方が良いでしょう。むくみを解消するためには、カリウムやビタミンE、蛋白質などを積極的に摂取することをおすすめします。

    カリウム:じゃがいも、ほうれん草、白菜、大豆、グレープフルーツ、りんご、バナナ

    ビタミンE:アーモンド、落花生、カボチャ、アボカド、たらこ、植物油

    蛋白質:豚肉、鶏肉、卵、大豆、魚

    着圧ソックス

    着圧ソックスとは、足首やふくらはぎなどを適度に加圧してくれる靴下のことです。着圧ソックスにより、ふくらはぎが加圧されることで、血流が良くなりむくみも起きにくくなります。また、保温効果も高いことから冷えの防止効果もあります。

    着圧ソックスは日中に履くのがおすすめです。日中は立ったり歩いたりする時間が多く、足が心臓よりも下の位置にある時間が多いため、下肢の血液が滞りやすくなります。その時間帯に着圧ソックスを履くことで、足のむくみが予防できます。一日中履いていると皮膚のトラブルを招いてしまうこともあるため、日中に履くのが良いでしょう。

    足を高い位置に上げる

    足を高い位置に上げることもむくみの予防と解消につながります。足を高い位置に上げることで、下肢の血液が心臓に戻りやすくなり、血流が改善してむくみが起きにくくなります。一例として、ふとんの下に台を置き、その台に足をのせ、足を心臓より高い位置に保つ方法があります。足を心臓よりも高い位置に保つことが大切です。

    介護靴を履き、足への負担を軽減する

    むくみがある方は、足の感覚が鈍い足の動きも良くないケースが多いので、転倒事故などが発生しやすい傾向があります。安全に生活をするためには、体全体を支えている足、足を支えている靴の選択が重要になります。介護靴を履き、足への負担を軽減することが大切です。

    介護靴の選び方のポイント

    認知症の男性を介護する女性

    むくみがある方は、特に靴を慎重に選ぶ必要があります。適切な靴を選ぶためにはどのようなポイントがあるのでしょうか。

    脱ぎ履きが楽になる

    脱ぎ履きが楽になる介護靴は非常に重要です。自分で履くことがない、脱ぐことが出来ないような窮屈な靴を履いていると足に悪影響出ることはもちろん、その動作自体億劫になってしまって、外出を控えてしまうこともあるからです。
    介護靴を選ぶ際はサイズをある程度調整できる、ゆとりの大きさをもった介護靴を選択することをお勧めします。

    かかと部が楽にできる

    かかとの部分は、むくみが特に起こりやすい部分だといえます。その為、靴を履いた際かかと部に余裕がある靴をお勧めします。靴によっては、かかと部にゆとりをもって作られているものもありますので、購入する際は意識することをお勧めします。
    また、かかと部は靴の脱ぎ履きをする際に持つ部分ですので、硬すぎないものを選ぶようにしましょう。柔らかいものは脱ぎ履きがしやすいといえますが、反対に歩く際の支えとして不安定なので、歩きやすい硬さや脱ぎやすい硬さの両方を踏まえて選択しましょう。

    つま先の幅が広く歩きやすい

    つま先の幅が狭い靴は、足指を圧迫させやすく歩行するたびに、指同士がすれてしまって傷の原因になるので注意が必要です。
    つま先の幅が広いとある程度指に余裕が出来ますので、歩きやすく足に負担が少ないといえます。介護靴は幅広靴も多くありますので、幅広を意識して購入することをお勧めします。

    足のむくみが気になる方へおすすめの介護靴

    おすすめの介護靴としては介護靴メーカーの中では足に優しい介護靴を展開している「マリアンヌ 彩彩 No.941」をお勧めします。この介護靴は外反母趾や腫れ・むくみの症状がある方、4Eや5E等で履物にお困りの方でも幅広いサイズ対応で安心してご使用いただくことが出来ます。

    具体的にどのような特徴があるのでしょうか?

    むくみの方は圧迫しない柔らかい靴がおすすめです。「マリアンヌ 彩彩 No.941」はこの条件を満たしています。まずつま先部分は幅広で作られていることはもちろんですが、つま先を高めに設定しているので上からの圧迫を避けることが出来、歩きやすいという特徴があります。

    また、靴全体の素材は非常に柔らかく、歩きやすく、足になじむような感覚になります。

    靴の中敷きにもこだわっています。3つの立体ポイントがありその部分で足裏全体を均等に支えて疲れを軽減することが出来ます。むくみがある方は歩くとすぐに足が疲れやすい傾向がありますので、この部分だけ見ても非常にお勧めできる商品であるといえます。

    デザインについてもこだわりがあります。通常介護靴は地味なものが多く、デザインとして楽しむことは難しい商品が多いのですが、「マリアンヌ 彩彩 No.941」はその名の通り彩られた靴であるといえます。全面に花柄プリントされています。奇抜なプリントではなく日常使い出来る上品なデザインですので、普段使いにもピッタリであるといえます。

    より安全な生活をするために

    杖をついて散歩をする男性と介護士

    介護靴といっても全てがむくみの方に優しい靴だとは言えません。圧迫感を感じないものや歩きやすい、脱ぎ履きがしやすい靴を選択して安全に生活できるようにしましょう。

    介護用品・ヘルスケア商品の通販サイト「ヨイケア」から介護靴を購入できますので、よろしければ一度ご検討ください。

    ヨイケア
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。