2022.04.19

うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いとは?双極性障害の症状、治療を解説

最終更新日:2022.07.25
東海林 さおり
看護師

双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害とは、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。躁状態のときは気分が昂ったり、過活動が見られたりしますが、うつ状態のときは一転して気分の落ち込みや活動が乏しくなるなどの症状が現れます。また、日本において双極性障害を発症している人は、0.4%~0.7%だと言われています。

子ども時代の環境や遺伝は関係ある?

子ども時代の環境や遺伝はうつ病に関係あるか

双極性障害になる原因は、未だ明確には分かっていません。しかし、子ども時代の環境や遺伝が複雑に絡み合っているという説があります。その中でも、遺伝的要因が原因している可能性が高いと言われています。なぜなら、双極性障害を持つ一卵性双生児の研究を行ったところ、もう一方も双極性障害を発症する確率が約80%にのぼるというデータが示されたからです。それゆえに、遺伝子の影響が関係していると考えられています。ただ、この研究がすべてではありません。ストレスが誘因だという考え方や脳内の神経伝達物質の乱れが原因だという説なども発表されています。そのため、家族に双極性障害を持っている人がいたとしても、必ず誰かが発症するわけではないということを覚えておきましょう。

うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違い

うつ病と双極性障害の違い

双極性障害は「躁うつ病」とも呼ばれることから、うつ病の種類だと思われがちですが、この2つは全く別の疾患です。うつ病は主に気分の落ち込みや意欲の低下などのうつ状態のみが続きますが、双極性障害は上記のような症状の他に、高揚感や誇大妄想などの躁状態が現れ、その両方が生じます。つまり、うつ病と双極性障害の違いは、うつ状態と躁状態を繰り返すか否かです。

双極性障害(躁うつ病)の症状

双極性障害の症状

双極性障害は、気分の昂りや過活動傾向などが生じますが、出現頻度や程度の差は人それぞれなので、端から見るだけでは一見分かりにくい場合もあります。双極性障害をしっかりと理解するためには、出現し得る症状の特徴を理解しておくことが大切です。

双極性障害の主な特徴

双極性障害には、さまざまな特徴が現れます。例えば、気分が昂ることによってとても前向きになり、興味がある場所に次々と出かけたり、欲しいと思った物なら値段を気にせずに購入したりといった行動を取ることがあります。また、楽しい気持ちでいっぱいで多弁になったり、異常なまでの自信を持ったりすることも少なくありません。しかし、このような状態が続くと、睡眠さえ取らずに出かけまわって身体を壊したり、気が付いたときには全財産を買い物に費やしていたということが起こり得ます。さらに、勢いで話したことが人を傷つける結果になった、過剰な自信の影響でギャンブルに手を染めたなど、自分だけではなく他人や周囲に迷惑をかける行動が目立つこともあるでしょう。一方、うつ状態のときは一般的なうつ病の症状が現れますが、躁状態のときに自分が起こしてしまったことを後悔し、強い罪悪感などが生じる場合もめずらしくありません。

双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害の違い

双極性障害には、双極I型障害と双極Ⅱ型障害の2つがあります。I型障害とⅡ型障害の違いは、躁状態の程度が重いか軽いかによって分類されています。Ⅰ型障害とⅡ型障害の特徴は、以下のとおりです。

双極Ⅰ型障害

双極Ⅰ型障害は、躁状態とうつ状態の差が激しいため、分かりやすい傾向にあります。うつ状態のときは落ち込んだり、不安感が強くなったりという症状を示しますが、躁状態になるとうつ状態のときとは真逆の行動が出現するのです。具体的には、気分が軽やかになるがゆえ頻繁に外出したり、眠る時間も惜しんで好きなことに没頭したりします。また、誇大妄想や自信が生じるため、普段なら出来ないことに挑戦してみる人もいるでしょう。中には、闇金から大きな借金をしたり、複数の異性と性的関係を持ったりするなどの行動に身を投じる場合もあります。

双極Ⅱ型障害

双極Ⅱ型障害は、うつ状態と軽い躁状態が現れます。これを「軽躁」と呼びます。軽躁は双極性障害Ⅰ型の躁状態と比べて、端から見ても違和感のない程度の躁状態が生じるため、気づきにくいことが特徴です。例えば、やる気が向上し、仕事や家事がいつも以上にはかどるというような行動が見られる場合があります。しかし、仕事などで成果が上がるのは好ましいことなので、本人も周囲も「調子が良い」としか考えることができないのです。そのため、双極性Ⅱ型障害の場合は、発見が遅れたり、うつ病だと診断されることも少なくありません。

治療方法

うつ病の治療方法

双極性障害は正しい治療を行うことで、回復や緩和が可能な疾患です。主な治療方法には、症状をコントロールするための薬物療法や、病気に対する理解や向き合い方を学ぶ心理社会的治療があります。

薬物療法

双極性障害は、気分安定薬や非定型抗精神病薬が主に使用され、気分安定薬では、リチウムやバルプロ酸、カルバマゼピンなど、非定型抗精神病薬にはオランザピンやアリピプラゾールなどが処方されます。気分安定薬はうつ状態や躁状態をコントロールし、気分を安定させるために効果的です。また、非定型抗精神病薬はドーパミンなどの神経伝達物質を遮断し、躁状態やうつ状態を改善する役割を持ちます。

心理社会的治療

心理社会的治療とは、双極性障害への理解を深めたり、生活リズムの安定化を図ったりすることで症状悪化の防止や再発予防を行う治療です。例えば、双極性障害の特徴を深く学ぶことで症状を客観的に自覚できるようになったり、症状が出ているときに生じがちな否定的な考え方を少しずつ合理的な考え方に変化させたりといった効果が期待できます。さらに、睡眠や食事などを規則正しく整えることで、生活リズムの乱れを改善し、症状の悪化や再発を防ぐことも可能です。

うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いについて正しく理解しよう

うつ病と双極性障害の違いとは

双極性障害は、うつ病と混合しやすい部分もありますが、両者は異なる疾患です。しかし、双極性障害の種類によっては明確に分かりにくい場合もあります。そのため、ちょっとした変化や気づきが見られたときは、出来る限り早く病院を受診することをおすすめします。それにより、ひとりひとりにふさわしい治療を受けることができるでしょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。