2021.09.07

介護保険施設とは|初めての方へ分かりやすく解説

最終更新日:2021.09.07

高齢者が入所する施設は、有料老人ホームのように民間が運営する施設と、公的な施設の2種類に分かれます。介護保険施設とは、介護保険を利用できる公的な施設です。大きく4つに分類される介護保険施設ですが、それぞれの違いや役割を知っておけば施設選びにもおおいに役立ちます。こちらの記事では、介護保険施設の目的や費用、サービス内容について分かりやすく解説していきます。

介護保険施設ってどんなところ?

介護保険施設とは

要介護高齢者が入所する介護保険施設とは、どのようなところなのでしょうか?定義や特徴について詳しく見ていきましょう。

介護保険施設とは

高齢者が老人ホームのような施設を利用すると、入居費が発生します。介護保険施設とは、介護保険サービスで費用をまかなえる公的な施設です。介護保険サービスとは、要介護・要支援状態にある方が利用できるサービスのことです。1割から3割の自己負担額で、在宅生活や入居生活を支援するための介護サービスを利用できるのです。入居時の初期費用も必要なく、民間の施設と比べ、利用負担額を軽減できるという特徴があります。しかしその反面、特に特別養護老人ホームは、緊急度が高い場合を除き、すぐには入所しにくいのが難点です。

介護保険施設は4つに分けられる

介護保険施設は、利用目的によって「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4つに分かれます。いずれも要介護認定を受けた65歳以上の方、または、特定疾患によって介護が必要な40~64歳の方が対象です。それぞれ入居できる期間や費用が異なるため、違いをよく把握したうえで、入居者さんの身体状況や経済状況に応じた施設を選ぶようにしましょう。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム

要介護認定を受けた、高齢者のための入所施設です。身体または精神上の障害によるケアが必要でありながら、在宅介護が困難な方が対象となります。

特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームは、介護保険上「介護老人福祉施設」に分類される施設です。設置主体は地方公共団体または社会福祉法人であり、入居者数に応じた医師の配置が義務付けられています。費用の目安は月額約8万~13万円です。減免制度により比較的安い費用であるうえ、手厚いケアを受けられて終身入居可能なため、入所者より待機者のほうが多いと言われている施設となります「ユニットケア」と呼ばれる9人程度のユニット単位でケアされながら、プライベートを重視した個室が多いことも特徴です。食事や入浴、排せつ介助といった基本的な介護サービスに加え、居宅の掃除や買い物、レクリエーションといった生活支援サービスも充実しています。入所基準は要介護度3以上と比較的高く、自宅で介護する方がいないことが重視されます。しかし、要介護1や要介護2の人でも、特別養護老人ホーム以外での生活が困難な方については、特例的に入居が可能な場合もあります。

特別養護老人ホームのメリットデメリット

介護保険施設の中でも、比較的安い費用で利用できるのが大きなメリットです。所得が少ない方であれば、負担軽減制度を利用することもできます。日常的な介護のほか、機能訓練やレクリエーションなど、多様なケアが受けられることもポイントです。一方、全国的に待機者が多く、なかなか入所できないことがデメリットとして考えられます。

特別養護老人と有料老人ホームの違い

特別養護老人ホームと同じような施設として「有料老人ホーム」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。特別養護老人ホームが公的な施設であるのに対し、有料老人ホームは民間が運営しているという大きな違いがあります。有料老人ホームは、入居の際の介護度についても規定はなく、自立の方も利用できる施設から、介護度が必要な方が利用する施設まで形態はさまざまです。また、介護保険サービスは利用できないため、すべてが実費となり、費用は月額約15万~30万円と高くなる傾向にあります。

  特別養護老人ホーム 有料老人ホーム
運営主体 市区町村などの地方公共団体や社会福祉法人 株式会社などの民間企業
入居対象 原則は要介護3以上の人 自立、要介護などの対象者は各ホームで決められる
入居の難易度 重介護かつ緊急度の高い人が優先で、入居の条件は厳しい 各ホームによって異なるが、「特別養護老人ホーム」よりも入居は安易
入居一時金 不要 入居一時金が必要なところが多いが、不要なホームも増えている
介護保険 施設サービス 居宅サービス、特定施設入居者生活介護
減免制度 所得により4つの区分があり、第1段階~第3段階は居住費と食費の負担限度額が設けられている なし

介護老人保健施設

介護老人保健施設‗リハビリ

「老健」と呼ばれることもある施設です。病気などで障害を負った高齢者が、病院を退院後、在宅復帰を目指してリハビリを受けることが第一目的となります。

介護老人保健施設とは

入院生活は、短期間であっても高齢者の身体状況に大きく影響する場合があります。介護老健福祉施設は、病気で障害を負った高齢者のために、看護や医学的管理をしながらの介護、リハビリ、そして日常生活の世話をして、在宅復帰するまでの生活を支援する施設です。少しでも早く在宅復帰を目指しているため、介護より医療関係のサービスが多く、リハビリテーションの専門家である作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などもスタッフとしてサービスを提供します。医師と看護師が常駐し、看護師の夜勤もあるので、医療面では手厚く安心できます。1~3か月の入所のあとに在宅復帰が出来そうな場合は、自宅に戻り、在宅サービスを受けることになります。対象となるのは、要介護度1以上であり、病状が安定して入院治療が必要ない高齢者です。費用は月額約6万~16万円となっています。個室を設ける施設は少なく、多床室がメインとなるのが特徴です。

介護老人保健施設の特徴

根拠法 介護保険法
運営主体 医療法人・社会福祉法人・地方公共団体等
入居対象 要介護1以上
入居金 なし
月額料金の目安 所得によって6~16万円
年齢 原則65歳以上
介護サービス 施設提供
医療処置 日中帯は可能
看取り 可能

介護老人保健施設のメリット・デメリット

基本的な介護サービスに加え、一人ひとりに合わせたリハビリプログラムを利用できるのが大きなメリットです。ただし、あくまでも在宅復帰を目標とする施設のため、入居期間は原則として3~6か月と定められています。そのため、実際には期限がきても身体状況が回復していなかったり、在宅介護の体制が整っていなかったりといった現状も見受けられます。しかし、実際はいろいろな事情で自宅に帰れない高齢者の割合が多く、長期にわたる入居者が多いです。施設の利用率も90%と高いので、入居はなかなか難しいです。

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設

医療が必要な要介護高齢者のための療養型施設です。後に解説する「介護医療院」の登場により2012年以降は新設されておらず、2024年3月までに全て介護医療院へ転換される予定となっています。

介護療養型施設とは

地方公共団体または医療法人が主な設置主体となる施設です。病院または診療所としての機能が整っており、あくまでも医療機関としての位置づけとなります。そのため、医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者のほか、比較的状態が安定している方が対象です。主に多床室の利用となるため費用も比較的安く、月額約6万~17万円で利用できます。基本的な介護サービスのほか、淡の吸引が必要な方や胃ろう、酸素吸入や人工呼吸器などを使っている人にとっては、24時間安心して暮らすことが出来る環境が整っています。

介護療養型医療施設の特徴

運営主体 医療法人・地方公共団体等
入居対象 要介護1以上
入居金 なし
月額料金の目安 所得によって6~17万円
年齢 原則65歳以上
介護サービス 施設提供
医療処置 24時間可能
看取り 可能

※入所対象者は要介護1以上だが、医療の必要性が高くなければ、現実的には入居が難しい

介護療養型医療施設のメリットデメリット

医療機関として位置づけられる施設のため、医療的ケアや機能訓練が充実していることが大きなメリットです。一方、特別養護老人ホームのように、掃除や洗濯、レクリエーションといった生活支援系のケアはあまり提供されていません。身体状況が改善すると退所を求められることもデメリットとして考えられます。

介護医療院

介護医療院

述した3つの介護保険施設に、2018年4月から新たに加えられた施設です。長期的な医療と介護のニーズを合わせ持つ、要介護高齢者を対象としています。

介護医療院とは

要介護高齢者に対し、長期療養のための医療と介護を一体的に提供することを目的としています。療養型医療施設が医療機関としての役割を担うのに比べ、介護医療院は「生活の場所」を意識した施設となります。そのため、長期療養のための医療や日常的な医学管理が必要な重介護者の受け入れ、看取り・ターミナルケアといった医療機能と日常生活上の世話(介護)を一体的に提供しています。さらに、介護療養型医療施設と同様に、短期入所要介護、通所・リハビリテーションも提供することが可能です。月額費用は約7万~17万円となっており、他の介護保険施設と同様に入所時の費用は必要ありません。要介護度1から入居対象となるものの、施設の目的を考えると介護度の高い方ほど入居しやすい傾向にあるといえるでしょう。

介護医療院の特徴

運営主体 医療法人・地方公共団体等
入居対象 要介護1以上
入居金 なし
月額料金の目安 所得によって7~17万円
年齢 原則65歳以上
介護サービス 施設提供
医療処置 可能(Ⅰ型は24時間、Ⅱ型は日中帯)
看取り 可能

介護医療院のメリットデメリット

医師、看護師、薬剤師と医療機関に近い職員が配置されているため、充実した医療的ケアを受けられます。喀痰吸引や胃ろうといったケアのほか、緊急時にも対応できるのは大きなメリットです。看取りやターミナルケアにも対応しているため、終の棲家として選択する道もあるでしょう。一方、個室が設けられていない施設では、プライバシーに対する配慮が心配になるといったデメリットが考えられます。介護保険施設は、それぞれに要介護高齢者の生活を支える役割を担っています。施設選びの際は、その違いを見極めることが大切。担当ケアマネジャーや地域の担当窓口と相談しながら、家族や高齢者本人にとって最善と思われる施設を検討していきましょう。

介護療養型医療施設と介護医療院の比較

介護療養型医療施設  
概要 病院・診療所の病床のうち、長期療養を必要とする要介護者に対し、医療的管理の下における介護、必要な医療的介護を提供するもの
病床数 約5.5床
設置根拠 医療法(医療提供施設)

医療法(病院・診療所)

介護保険法(介護療養型医療施設)

施設基準 医師 48対1(3名以上)
看護職員 6対1
介護職員 6対1~4対1
面積 6.4㎡
設置期限 2023年度末

 

介護医療施設 Ⅰ型 Ⅱ型
概要 要介護者の長期療養、生活施設
病床数
設置根拠 医療法(医療提供施設)
介護保険法(介護医療院)
施設基準 医師 48対1 100対1
(3名以上。宿直を行う医師を置かない場合は1名)
看護職員 6対1 6対1
介護職員 5対1~4対1 6対1~4対1
面積 8.0㎡以上
設置期限 2018年4月施行

【参考】厚生労働省「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯」

賢い選び方をしよう

介護保険施設の選び方

介護保険施設と言っても様々な種類があります。以上の4つの施設内容を知ったうえで、自分たち家族に合った施設を選ぶようにしましょう。有料施設などは、各施設によって定められる対象者や料金が異なるため、よく調べる必要があります。様々な施設を調べ、比較検討をするなど、賢い選び方をして納得のいく施設を見つけてください。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。