2021.05.05

在宅介護と支援者の役割とは?介護の始まりから終わりまでを解説

最終更新日:2021.06.07

介護は突然始まることもあれば、気づかないくらい少しずつ必要になってくることもあります。介護が必要になってから亡くなるまでは思っている以上に長く、最後は支援者の生活のほとんどを占めるようになることもあるでしょう。誰もが関わるであろう在宅介護について、始まりから終わりまでを解説していきます。

在宅と自宅の違いについて

在宅介護②

一般的には在宅とは「外出しないで家にいる」ことですので、在宅と自宅は同じことを示すと思うかもしれません。しかし、看護や介護の用語としては、両者は全く異なった意味を持つ言葉のため、その内容を説明していきたいと思います。

在宅とは

病院や介護老人保健施設以外で生活している方のことを示します。自宅以外にも養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、特定施設設に入居又は入所していても在宅となります。また、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、グループホームを利用している方も在宅扱いです。

自宅とは

病院や介護老人保健施設以外で生活する中でも、先に述べた施設も利用せず、自宅で生活している状態に限定した言葉です。訪問看護やデイサービスなど医療や介護のサービスを受ける拠点が自宅であることを指しています。

自然な老化過程とは

老化

人は誰でも歳を取り老化していくものですが、自然な老化の過程をたどるとすると、どのように展開していくのでしょうか。一つひとつ見ていきましょう。

老いの始まり

歳をとってくると若い時のように一日中動き続けたり、重労働をすることが大変になってきたりします。すぐに息が切れる、足腰が痛くなるなど身体的な老化が進んでくることも。それに伴い日中の活動時間が減ってきて、家の中で過ごす時間が長くなります。また視力や聴力が低下することで、手作業や社会交流など、これまでの趣味や生きがいから少しずつ離れていくこともあるでしょう。家族の役割が変化するにつれ現役から退き、生活が不活発になってくる状態が老化の始まりになります。

入院する

高齢者の入院が要介護状態を招いてしまうことは逃れられない事実です。軽度の介護で十分だった方が本格的な介護が必要になる原因として、「高齢による衰弱」「関節疾患」「骨折・転倒」が約半数を占めています。骨折で入院すると高齢や基礎疾患を理由に手術できない場合も多く、数日間はベッド上安静を余儀なくされます。その間に運動機能が急激に落ちる、認知症になるなど二次的影響が出てしまい、自宅に退院できずに介護老人保健施設などを生活の拠点に移す方は少なくありません。

脳卒中になる

脳卒中で片麻痺などの後遺症が出ると、できないことが増えることで自信を失ってしまい、生活に対する意欲が失われてしまうことがあります。また意外かもしれませんが、脳血管疾患の13~22%にうつ病が認められ、抑うつ症状も含めた数は35%になるという研究結果もあります。抑うつ状態になると、リハビリテーションへの意欲低下や活動性の低下、食欲不振、易疲労感、不眠に陥ることがあります。これらは脳卒中後の自然で一時的な落ち込みとして見過ごされてしまいがちですが、治療が必要な場合もあるので見守りが必要です。

認知症になる

認知症は色々なことが分からなくなる病気ですが、何も行動しなくなる病気ではありません。体が元気であれば分からなくなっても色々と活動します。ガスの止め方を忘れてもお湯を沸かそうとしたり、自宅の場所が分からなくても外出したりします。また分からなくなっていく不安から、何度も同じことを聞いてくることがあるでしょう。良くない妄想が頭から離れなくなり、家族を責めたくなることが度々あるかと思います。そんな時、そばにいる家族の支えが必要なのです。

老衰

死亡の原因は第3位が老衰です。自然死を迎えようとする段階で、基礎疾患の悪化や老化が絡みあい、徐々に慢性的な多臓器不全状態が起こってくることを言います。自力で動くことができない、眠ったり目が覚めたりを繰り返す、食事や排せつの行為ができなくなっていく状態です。誰かが付きっ切りで介護しなければ生きていくことができません。

終末期

終末期に入り寝たきりになると、全ての行為を誰かに依存しなければなりません。口から食べられるなら介助してもらうことも可能ですが、それも難しい場合もあり、経管栄養といって鼻から流動食を入れたり、胃に直接注入したりする方法で栄養を補います。排泄はオムツ、お風呂は施設の特殊な浴槽で入れてもらい、寝返りもできないので床ずれができないよう2時間に一度体の向きを変えてもらう必要があるでしょう。この段階では意識障害も出ていますで、もうろうとして会話も難しくなります。

在宅介護の役割

老化②

誰もがいつかは死を迎えますが、老化の過程をできるだけ緩やかにして健康寿命を延ばしたいところです。いわゆる「ピンピンコロリん」の最後を迎えるために、在宅介護でできることを紹介していきます。

生活空間を狭めないこと

老化によってあらゆる面で自立が困難になると、生活空間が狭くなりがちです。老化の始まりにおいて心身の機能低下を防ぐには、生活空間を狭めないことが重要になります。後期高齢期以降は人の生活空間は次第に狭くなりやすくそれがさらに虚弱化を早めてしまう原因に。生活圏域内で楽しく健康づくりができ、かつ血縁や地縁を活かした日常の安否確認ができるといった多目的機能を持った場が必要です。シニアボランティアを運営する、または参加するなどすれば、ボランティア自身の健康づくりにも役立ちます。

入院はなるべく切り上げること

先述したように、入院による二次的弊害は高齢になるほど深刻です。数日動かないことが寝たきりを一気に近づけてしまいます。身体的・精神的活動量が減ると寝つきが悪くなり、昼夜のメリハリも失われる可能性も。さらに単調な入院生活は現実の世界から離れてしまうので、日付があいまいになってしまうでしょう。また急激な環境の変化は認知症状を悪化させてしまう恐れもあるので、必要な医療を受けたならできるだけ早く退院するよう心がけが大事です。

生活への意欲を取り戻すこと

脳卒中で片麻痺などの後遺症が残ると、生活への意欲を失い、ますます老化の悪循環に陥ってしまいます。元気なころの趣味や役割を再びできるようになることに目標を合わせることがでれば、それに向けてリハビリに取り組む意欲が良まれてくるでしょう。あるいは、介護保険サービスを使って新たな社会交流の場を見つけることも有効です。本人に合った方法で生活の意欲がわくよう支えることが大切です。

生活の中にある原因を探すこと

認知症の人が入院すると、急速に認知症が進むことがあります。退院してきたのに以前より手がかかるようになっていて、思わず怒ってしまうこともあるでしょう。しかし、認知症が悪化する原因は意外と身近な生活の中にあり、周囲の環境で症状が良くも悪くもなります。例えば、介護する人の関わり方次第で、徘徊や物盗られ妄想が和らぐことがあります。介護に疲れて気持ちに余裕がなくなっているようなら、介護サービスを利用して休息をとることが、認知症の方のためにも大切です。

ぎりぎりまで寝たきりにしないこと

高齢になった家族を見ると、つい「これは私がやるから」と家事や作業を代わってあげたくなる人がいるでしょう。確かに介護する側から見れば不都合なことがあるかもしれません。しかし、ぎりぎりまで寝たきりにしないためには、できることを奪わないことが大切です。代わってやってしまった方が都合がよくても「お願いします」と頼り、あえて見守る姿勢を持つようにしましょう。

終末期をどう迎えるか

人は必ず「死」という同じところにたどり着きますが、終末期の迎え方は十人十色です。紆余曲折あっても最期は家族も本人も納得した亡くなり方ができる人、家族関係がぎくしゃくして最期を迎える人など色々です。できるだけ前者のような最期を迎えるには、元気なうちに介護や終末期をどうするか話し合っておきましょう。延命を希望しない人が90%を超えるという結果が出ている現代、不自然な延命までして長生きするのは妥当ではありません。同居家族だけではなく、離れて暮らす家族にも本人が意思表明しておく必要があります。

在宅介護では支援者の支えが大切

介護士

日本は自宅で介護されたい人は男性4割、女性3割、最期を自宅で迎えたい人が半数を超える国です。在宅介護は支援者がいてこそ成り立ちますが、現役世代1.3人で1人の65歳以上の者を支える社会が到来しています。在宅介護の支援者一人にかかる経済的、肉体的、精神的負担は想像するに難くありません。直接介護を担っていなくても、在宅介護を支援している人の支えになることが必要不可欠となっています。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。