2023.03.14

車椅子の種類4つと選び方4選を福祉用具の専門家が解説

最終更新日:2023.12.06
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

車椅子の種類

車イスマーク

車椅子というのはいくつかの種類があり、実際に使うことになる要介護者に合わせて選ぶようにしましょう。大きくわけると、自走用と介助用にわかれます。それぞれの特徴があるので、それらを理解してから車椅子を選ぶようにしたいものです。

自走用車椅子とは

自走用車椅子

自走用車椅子とは、自分でこいで進めるように、後輪にハンドルがついています。なかには、電動タイプのものもあり、後輪が約20~24インチと大きめなので、力をそこまで入れなくても動かしやすいものです。また、ちょっとした段差は超えられますし、安定感もあります。構造がシンプルで使いやすいという点が大きなメリットでしょう。

介助用車椅子とは

介助用車椅子

介助用車椅子とは、介護者が後ろから押すタイプの車椅子のことで、手押し用のハンドルにブレーキがついています。後輪が約12~18インチであり、自走用と比べると小さめ。全体的に小さめの印象もあり、小回りがきき、軽量でコンパクトです。しかし、自走用と比べると安定感がなく、気をつけないと転倒の危険性もあります。

車椅子の種類は大きく分けて4つ

車椅子の種類は、大きく分けて4つあります。種類によって特徴があり、このような人向きという方向性があります。それぞれの車椅子の種類について紹介しますので、選ぶ際の参考にしてください。

スタンダードタイプ

駆動輪が後方でキャスターが前方にある、最も一般的な四輪の車椅子です。

スタンダードタイプの車椅子は、さらに3種類に大別でき、自走用や介助用のほか、自走するためのハンドリムと介助者が使用するハンドルおよび介助用ブレーキの機能を備えた自走・介助兼用があります。

どなたでも使用は可能ですが、その中でも立位や座位が保持できる人、車椅子への移乗が安易に行うことができる人などにおすすめです。

自宅はもちろんのこと、病院や公共施設、介護施設などの幅広い用途で使用できます。     

 

ミキ BAL-1 標準型 自走型車いす

ミキBAL-2 標準型 介助型車いす

機能付き・モジュールタイプ

利用者の身体に合わせて、種々の調節が可能な機能を有している車椅子です。

主に、背もたれの角度や張り具合、肘掛けや介助用ハンドルの高さ、座面の高さや駆動輪軸の位置などを調節できます。

立位や座位が保持しにくく、車椅子へ乗車した際に姿勢が崩れてしまう人におすすめです。

スタンダートタイプと比較して機能面に優れているため、利用者のニーズに合わせやすい特徴があります。

自走用車椅子 日進医療器 ウルトラシリーズ多機能タイプ NA-U2W

介助用車椅子 日進医療器 ウルトラシリーズ多機能タイプ NAH-U2W

ティルト・リクライニングタイプ

座位を保持するために、利用者の身体や障害の特性に応じて、さまざまな部分の調節が可能な車椅子です。

ティルトとは、背もたれとシートの角度を保ったままシートの角度を調節する機能、リクライニングとは、背もたれの角度を調節する機能をいいます。

体圧分散を適切に行い褥瘡を予防できるため、車椅子を長時間利用者や、自分で姿勢を変えることができない人などにおすすめです。

また、アームレストやフットレストの着脱や高さ、バックレストの張りや高さ、ヘッドレストの位置なども調節できます。

ティルト&リクライニング自走用車椅子 ミキ BAL-11

ティルト&リクライニング介助用車椅子 ミキ BAL-12

電動車椅子タイプ

手元のジョイスティックといわれるコントローラーなどを操作して走行する、モーターで動く車椅子です。

電動車椅子タイプは、さらに3種類に大別でき、左右の駆動輪がそれぞれ別々のモータで動く普通標準型をはじめ、車椅子というよりも屋外専用の乗り物として使用されるスクーター型、自走用車椅子の駆動輪に電動ユニットを取り付けた軽量型などがあります。

手元のコントローラーを行きたい方向に傾けることで走行できるため、スタンダードタイプの車椅子の操作が困難な人や、坂道や悪路などで頻繁に利用者、介助者の力が弱い場合におすすめです。

家庭用のコンセントから専用のバッテリーに充電して使用でき、機種や走行状況にもよりますが1回の充電につき約15km〜30kmの走行が可能です。道路交通法上は歩行者とみなされるため、最高時速は6km以下です。

車椅子の各部位の名称と機能

車椅子の各部位の名称と機能

車椅子にはさまざまな部位があり、安全に安心して車椅子を使用するためには、どの部位も欠かすことはできません。付いているパーツは、車椅子の種類によってさまざまです。以下では、車椅子の基本的な部位別の機能について詳しく解説します。

バックレスト

バックサポートとも呼ばれ、車椅子を利用者の背部を支持して、座位姿勢を支える背もたれの部分です。背もたれの角度が一定に固定されている標準式や、角度が調節できるリクライニング式などの種類があります。

アームレスト

アームサポートとも呼ばれ、車椅子に座った際に利用者の腕を支える肘掛けの部分です。肘掛けが一定に固定されている標準式や、取り外しできる着脱式、上方向や横方向へ可動ができる可動式などの種類があります。

レッグレスト

レッグサポートとも呼ばれ、車椅子に座った際に利用者のふくらはぎを支える部分です。レッグレストが一定に固定されている標準式や、取り外しできる着脱式、外方向へ可動ができる開閉式、角度が調節できるエレベーティング式などの種類があります。

フットレスト

フットサポートとも呼ばれ、車椅子に座った際に利用者の足を支える足底を乗せる部分です。フットレストが一定に固定されている両側一体式や、上方向へ可動ができる跳ね上げ式などの種類があります。

介助用ブレーキ、駐車用ブレーキ

介助用ブレーキは、介助者が車椅子を操作する際、必要に応じて使用するブレーキです。

ハンドル部分にブレーキが付いていて、自転車のブレーキのように握る力でスピードを加減したり停止させたりします。また、駐車用ブレーキは、介助者および利用者が、車椅子を完全に停止させる際に使用するブレーキです。

後輪の前部あたりにブレーキレバーが付いていて、利用者がレバーを手前に引くことで車椅子を停止させるノッチ式、後輪の下部あたりにブレーキが付いていて、介助者が足でブレーキを踏んで車椅子を停止させる足踏み式などの種類があります。

キャスター、駆動輪、ハンドリム

キャスターは、車椅子の前部に付いていて、360度回転し方向転換する際に便利な小型の車輪です。

駆動輪は、車椅子の後部に付いているタイヤで、操作する際に駆動力を伝える大きな車輪です。タイヤのすべてがゴム製で硬くてやや細いタイプのリソッド、タイヤが灰色や黒色で自転車と同じタイプの空気入りチューブ、タイヤとチューブが一体型で空気が直接タイヤに入っているタイプの空気入りチューブレスなどの種類があります。

ハンドリムは、駆動輪の外側に付いていて、車椅子を利用者が手でこぐ際に使用する輪(リング)です。

ティッピングレバー

ティッピングレバーは、駆動輪のリム周辺に付いている棒状のレバーです。段差や障害物を乗り越える際、介助者がキャスターを持ち上げるためにティッピングレバーを足で踏み込んで使用します。

車椅子の選び方のポイント4選

車椅子の選び方のポイント4選

車椅子は、利用者の身体状況はもちろんのこと、車椅子を使用する環境や介助者の状況などのポイントをおさえ、条件に適合する種類を選ぶことが重要です。以下では、車椅子の選び方のポイントについて詳しく解説します。

利用者の身体状況

車椅子を利用者の身体状況に合っていることが大切です。

年齢や性別、利用者のニーズといった一般的な事項をはじめ、身体的障害の原因や種類、程度といった障害に関する事項、身長や体重、座高や下肢の長さといった体格や体形に関する事項などを確認します。

その後、現状における上肢や下肢における体幹の筋力や関節可動域といった残存機能に関する事項、理解力や状況判断力の程度といった知的能力に関する事項などを把握します。

これらの身体状況を踏まえた上で、利用者自身が車椅子を操作できるのか、それとも介助者による操作が必要なのかを判断します。

利用者の使用環境

車椅子を利用者の環境に合っていることも重要なポイントです。

主に自宅で使用するのか、それとも屋外で使用するのかといった使用場所をはじめ、自宅であれば家屋の構造や家族構成などの家庭環境、屋外であれば車道と歩道の状態や通行人および自動車の走行状況、自宅の玄関から道路までの状態といった社会環境などを確認します。

また、単なる移動手段として使用するのか、それともスポーツのような活動として使用するのかといった使用目的、日常的に使用するのか、それとも補助的に使用するのかといった使用頻度なども把握すると、より最適な車椅子を選ぶことにつながります。

車椅子の種類

車椅子を利用者の身体状況や環境を考慮するだけではなく、車椅子の種類も確認しましょう。

車椅子の種類については上記でも解説しましたが、さらに深掘りして、車椅子の製作方法からも最適な車椅子を選ぶことができます。

メーカーに常時在庫があり、利用者の要望に応じて即座に搬入が可能なレディーメイドの車椅子は、利用者の状況に合わせて選択できるメリットがあります。

原則として医師の処方によって身体計測を行い、身体を支える部位をはじめ、フレームやキャスター、駆動輪やブレーキなどの種類と型を決定して製作し、適合検査を必要とするオーダーメイドの車椅子は、使用する一人ひとりに適合した世界にひとつだけの車椅子として使用しやすいメリットがあります。

利用者のさまざまな条件に合わせて処方し、既製の規格製品を選択し組み合わせて製作するモジュラー型の車椅子は、角度の微調整や部品の交換が可能であり、車椅子の使用を始めた後、身体機能の変化にも対応できるメリットがあります。

介助者の状況

介助者がいるのか、それとも介助者がいないのかによっても選択できる車椅子は異なります。

介助者がいる場合は、座位姿勢を保持できない、上下肢や心肺、視力や聴力などの機能に障害があるなどの身体的に配慮する条件があっても、車椅子を使用できます。

しかし、介助者がいない場合は、これらの身体的に配慮する条件を加味した上で、利用者が安易に操作でき、機能が備わっている車椅子を選ぶ必要があります。

車椅子の介助方法

車椅子の女性を介助する女性

車椅子の介助方法は、使用する場所により異なります。基本的な介助は、介助者がハンドルを持って歩きながら動かします。その場での方向転換も可能ですが、真横には動かすことができません。以下では、使用する場所別に詳しく解説します。

段差を上る

1. キャスターが段差にふれる手前まで進み停止。
2. ティッピングレバーを足で踏みながら、ハンドルを押し下げてキャスターを少し上げる。
3. 前に進み、段差の上にキャスターを乗せる。
4. さらに、駆動輪が段差にふれるまで進む。
5. ハンドルを持ち上げて、駆動輪を段差の上に乗せる。

段差を下りる

1. 車椅子を後ろ向きにする。
2. ゆっくりと後ろへさがり、駆動輪が段差の端にくるまで進む。
3. 段差の下に駆動輪をおろす。
4. そのままゆっくり後ろにさがる。
5. キャスターを段差の下におろす。

坂道を上る

上り坂では、車椅子を前向きに操作します。足を踏ん張り、両手の力を同じぐらいに保ちながら車椅子をゆっくりと押すと、安定した走行ができます。介助者は、両手に重さを感じて車椅子が左右にふらつきやすくなるため注意しましょう。

坂道を下る

下り坂では、車椅子を後ろ向きに操作します。足を踏ん張り、両手の力を同じぐらいに保ちながら、車椅子を支えるようにゆっくりと後ろへ進めます。介助者は、後方に人や障害物がないか常に注意しましょう。

介助する際の最も重要なポイントは、利用者への声かけです。特に前へ進む場合は、利用者から介助者の姿が見えないため、利用者の気持ちに配慮しながら介助する必要があります。
車椅子を操作する際は「動きますよ」「後ろに動かしますね」「右に曲がります」「未舗装の道路で少しガタガタしますよ」など、臨機応変に声かけを行いましょう。

車椅子クッションの選び方

車椅子

車椅子の使用を検討する際、車椅子本体と同様にクッションの選び方が重要です。

車椅子クッションは、座面やバックレストに置き、利用者の正しい座位姿勢を保持したり、臀部を除圧し痛みを軽減したり、床ずれの予防や改善を図ったりする役割があります
特に脊椎損傷や脳血管障害による片麻痺の方の場合、臀部の感覚が麻痺していたり鈍くなっていたりすることが多く、臀部に床ずれができやすいため注意しましょう。

車椅子クッションには、特殊ジェルが3ブロックに分割していて臀部にピッタリとフィットし、圧とズレによる床ずれを防止するジェル素材、骨ばった部分を中心に圧の高さに応じて全体を包み込むように保護し、圧を分散するウレタン素材、専用のエアポンプで空気を入れるタイプで、セル全体で臀部を包み込むため圧の分散ができるエア素材などがあります。

利用者の身体状況はもちろんのこと、どのような用途で使用するのか、どのような形状でサイズはどのくらいなのかなどを考慮しながらクッションを選びましょう。

車椅子で快適で活動的な生活に

車椅子に乗る男性

車椅子は、歩行が困難な人が移動するための機能だけではなく、利用者の足であり、身体の一部として機能します。また、長時間座り続ける人には、座位をしっかり保持するための椅子としての機能も欠かせません。
利用者の身体状況や使用環境、介助者の有無などを考慮しながら、最適な車椅子を選び、快適で活動的な生活を送りましょう。

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ヨイケア
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。