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前立腺肥大とは
前立腺肥大とは、膀胱から陰茎に向かって伸びる尿道を取り囲む前立腺が肥大することです。前立腺が肥大することによって、排尿がしづらくなったり、残尿感が残ったりしてQOLに影響を及ぼします。前立腺は膀胱の下に栗のような形と大きさをしています。役割としては、生殖器としての役割と、泌尿器としての役割があります。主になるのは生殖器としての働きです。前立腺が分泌する前立腺液と精嚢で分泌される精嚢液が混ざりあって精液となり、精子に栄養を与えます。
泌尿器としての役割はまだはっきりと解明されていることばかりではありません。ただ、前立腺の中心に膀胱に繋がる尿道が通っており、前立腺が大きくなることによって、尿道が圧迫され排尿に支障をきたすということはわかっています。前立腺が大きくなることを前立腺肥大症といいます。前立腺肥大症は加齢やホルモンバランスの乱れによって起こりますまた、前立腺が肥大していても排尿に支障がない場合は前立腺肥大症とは診断されず、症状に応じで病名がつきます。
では、前立腺肥大か自分が前立腺肥大症を疑われるのかはどのようにチェックするのでしょうか。前立腺肥大症には国際前立腺症状スコアというチェック票が使われています。チェックの仕方としては直近1カ月の排尿の様子を評価していくものです。
・排尿後に尿が残っていると感じるか
・排尿後2時間以内に排尿することがあったか
・排尿中に尿が度々途切れることがあったか
・排尿を我慢するのが困難か
・尿の勢いは弱くないか
・排尿しようとお腹に力を入れなくてはならないことがあったか
・夜間何回排尿のために起きたか
それぞれ、0~5段階で評価され、点数を付けていきます。この点数によって軽度、中等症、重症に分類され、どれだれQOLに影響を与えているのかを判断し、治療方針の選択にもつかわれますし、経過を追うのにも使われます。
前立腺肥大の症状と原因
前立腺肥大の原因は正確には解明されていないのが現状です。しかし、加齢は大きく関係しているのではないかとされています。それは、前立腺の肥大する部分の細胞が加齢によって増殖することで肥大しているのではないかとされています。
もう一つ大きな要因としてホルモンバランスがあります。前立腺と大きくかかわっているのがテストステロンです。テストステロンは10代の思春期に多く分泌され、年齢を課されるごとに分泌量は減少傾向にあります。体内の男性ホルモンと微量に分泌される女性ホルモンとのバランスが崩れることで前立腺が肥大するのではないかと言われています。その他にも、その方の食生活や遺伝、運動習慣、服用中の薬の副作用などでも前立腺肥大が起こる可能性はあるとされます。では、前立腺肥大症はどのような症状を進んでいくのか、ステージごとに解説していきます。
第1期「膀胱刺激期」
第一期の膀胱刺激期では、排尿がすぐに出なかったり、排尿の勢いが弱くなったり、夜間よくトイレにいくようになったりします。前立腺が尿道を刺激するため、陰嚢部の不快感や夜間の頻尿、残尿感などを感じます。排尿が困難な感覚を覚え、排尿するまでに時間がかかったり、出始めても勢いが弱かったり、出し切るまでに時間がかかるような症状がみられます。このステージでは排尿の機能自体は正常に機能しているため、実際には残尿はほとんどないといえます。
第2期「残尿期」
次のステージまで前立腺肥大が進行することで尿道が圧迫され狭くなるため排尿がさらに困難になってきます。具体的には、排尿時にいきまないと出ないという状態になります。排尿が出ても、全てを出し切れない、垂れるように出る、途中で止まるなどの症状がでてきます。実際に残尿感だけでなく、残尿がみられるようになり、その量はだんだんと増えていきます。このようなステージで排尿を膀胱内に溜めておくと排尿が完全に困難になる急性完全尿閉になる可能性があります。ここまでくると、感染症や結石にも繋がります。つまり、このステージまでくるというのは急激に体にリスクを抱えるということです。
第3期「尿閉期」
このステージまでいくと排尿が更に困難になり、QOLに大きく影響を与えます。または、命に直結する病気になることがあります。排尿に行っても何分もかかり、いきんでも排尿できず排尿困難な状態は悪化していきます。残尿も300ml以上膀胱内に残り、膀胱内からも圧がかかり、残尿が多く溜まると膀胱の圧によって尿漏れをすることがあります。膀胱内の圧が上がり、尿が逆流して腎機能にも影響を与えます。腎機能が低下することで慢性腎臓病を発症します。尿閉になるとリスクはかなり大きくなり、体内から老廃物が出せない状態が続くことで感染症、炎症が膀胱だけでなく、腎臓や前立腺にまで及びます。尿が膀胱に溜まっていることで膀胱結石を併発することもあり、このステージはそのままにしておけば命に関わるので十分治療が必要です。
病院での検査方法
頻尿でお悩みの方はまずどこに受診したらいいのか。それは泌尿器科です。では、実際にどのような検査を経ていくのでしょうか。
問診
冒頭でも説明した国際前立腺スコアを利用しながら状態を把握していきます。もちろんそれだけでなく、実際に生活にどのような支障が出ているのか、チェックリストにはない困りごとがあるのかなど、患者さんの現状をきいていきます。
尿検査
尿検査は患者さんの状態を知るのに大変有効な手段です。尿検査をすれば様々な推測ができるからです。尿検査では尿蛋白が出ているのか、尿糖が出ているのか、白血球があるのか、赤血球があるのか、細菌がいるのか、などを見ることができます。その結果によって、腎機能が低下しているのか、感染症があるのか、尿路感染が疑われるのか、膀胱炎、尿道炎が疑われるのかなどを推測します。
直腸診
直腸検査では、肛門から直腸に指を入れて前立腺を触診します。形、固さ、痛みなどをみていきます。前立腺に炎症がある場合には強い痛みを伴います。また、癌があると硬い腫瘍があります。それらを実際に触診しながら見ていきます。
尿流測定検査
これは尿の量や速度を検査する方法です。この検査では尿道の閉塞がどのくらい進んでいるのかを確認することができます。
残尿測定検査
以前はカテーテルを入れていましたが、現在は超音波検査によって検査できます。排尿後に膀胱内にどれくらい尿が残っているのかを計測します。50mlを超えていると前立腺肥大が疑われます。
膀胱鏡検査
膀胱内に直接カメラを入れてみる検査になります。カメラで見ることでより、直接的な原因を探ることができます。
スムーズに着脱できる服装で受診しよう
加齢とともに頻尿でお悩みの方は前立腺肥大が原因かもしれません。ほおっておくと尿がでづらいだけでなく、痛みやQOLにも影響をもたらします。まずは専門医に相談してみて、必要に応じで検査をしてみましょう。検査の際はスムーズに検査ができるよう、着脱しやすくリラックスした服装でくることがおすすめです。
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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。