2022.08.26

訪問介護で介護ヘルパーに頼めること、頼めないこと|要介護者の見守り編

最終更新日:2023.03.06
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

同居している両親が比較的元気だとしても、年齢を重ねればいつかは介護が必要になるときが来ます。実際に着替えや排泄、入浴に手伝いが必要になり、苦労されている人もいるでしょう。在宅介護を申し込んだとしても、どこまで介護サービスを受けられるか分からない人もいるはず。今回の記事では訪問介護でヘルパーに「どこまで見守りや付き添いを頼めるか」を中心に紹介します。

・冠婚葬祭に付き添ってくれるのか
・お歳暮などの買い物も見守ってくれるのか
・同居している家族の分の食事も作ってくれるのか

生活の手助けだけではなく、安否の確認や病院への通院についても解説してあります。

介護ヘルパーに頼めること頼めないこと

訪問介護の様子

訪問介護のヘルパーは、介護保険制度によって「身体介護」と「生活援助」の2種類が、援助できる介護サービスとして決められています。「身体介護」は食事・排泄・入浴・歩行など、体の援助を差し、「生活介護」は掃除・洗濯・体温や血圧測定など、日常的な援助を行います。しかし、訪問介護は介護サービスを受ける本人に限定した援助です。そのため、同居している家族や、生活に必要ではない対応、インスリン注射などの医療行為はできません(インスリンの準備・見守りは可)。以下、ケースごとに詳しく解説します。

外出の促しや散歩の付き添いは頼めるか

引きこもり防止のための外出の声掛けや、身体能力の維持・向上のための散歩は、付き添いができます。また、認知症により精神が不安定の場合など、不安感を発散させるための散歩の同行・見守りの援助も可能です。しかし、気分転換や特に目的のない散歩、趣味のカラオケやサークルなどに参加するための外出の付き添いはできません。要介護者の生活に必要かどうかが介護サービスの適用範囲の分かれ目になります。

結婚式に出席する際の付き添いや介助は頼めるか

冠婚葬祭の付き添いや介助をヘルパーは対応できないため、家族や親戚が介助をする必要があります。介護サービスの外出の介助は、あくまで「本人の生活で必要な場合」に限り、冠婚葬祭を含めた私的な外出は介護保険制度でカバーされません。しかし、民間企業はご家族のライフイベントの「付き添い介護」を有償で提供しています。車の乗り降りだけではなく、会場で排泄介助や食事介助も対応でき、看護・介護の有資格者が同行してくれます。検索エンジンで「外出介助 冠婚葬祭」で調べるといいでしょう。

夜間の見回り確認は頼めるか

ヘルパーに夜間の安全確認を目的とした見回りはできません。しかし、夜間対応型の訪問介護では「定期巡回サービス」「随時対応サービス」「オペレーションサービス」の3つがあり、排泄介助や寝返りなどの身体介護、転倒や体調の急変などの緊急時の対応を行えます。警備目的の巡回は、民間のホームセキュリティを検討してください。不審者や空き巣への防犯対策ができます。

商品の選択や購入の際の見守りは頼めるか

ヘルパーが高齢者と一緒に買い物の付き添いはできます。生活援助のサービスとして必要品の選択の補助・要介護者の代わりに飲食物や消耗品の購入・薬の受け取りも訪問介護の範囲に含まれます。しかし、買い物は「本人の直接的な援助にならないもの」は介護保険の適用外です。具体的には、お酒やタバコなどの嗜好品や来客用のお菓子、親戚へのお歳暮などの贈呈物の買い物はできません。遠方のデパートなど、生活範囲外でのサポートも断られる場合があります。訪問介護では、生活必需品の購入に限られる点は注意が必要です。また、買い物に関連して調理もヘルパーが手助けできます。サービス利用者と一緒に料理を手伝ったり、ヘルパーが食事を作り置きしたりできますが、同居家族の食事の用意はできません。

定期的な体位変換は頼めるか

訪問介護では床ずれ予防、血行障害の防止のために寝返りの介助ができます。例えば、寝たきりの高齢者宅に訪問して、タオルやクッションなど用いた体位変換と除圧を行います。体位変換は約2時間おきの実施が望ましいため、日中は同居されているご家族が要介護者の体位変換を行ってください。夜中に何度も起きるのが負担であれば、夜間対応型の訪問介護の検討をしましょう。サービスを利用する1回ごとに料金がかかるため、コスト面で負担になるものの、在宅介護の負担軽減になります。

安否確認や見守りだけは頼めるか

訪問介護では安否確認や見守りだけのサービスはできません。しかし、地域密着型サービスのひとつである「定期巡回・随時対応型訪問介護」では、認知症などで安否確認が必要な人に向けたサービスがあります。定期巡回・随時対応型訪問介護は、他の訪問介護と併用ができず、要介護認定が必要などの要件が設定されているため、担当のケアマネジャーと相談してください。また、民間のホームセキュリティでは、センサーや感知器を用いた安否確認・見守りサービスを提供しています。

診察室で病状や治療方法を一緒に聞くことは頼めるか

治療方針の選択の責任や、プライバシーの問題もあり、ヘルパーは病院で病状説明の同伴はできません。訪問介護のサービス範囲は「病院に行く準備・行き返りの付き添い」に限定されます。つまり、病院内の介助は介護保険適用外でヘルパーは対応できないため、ご家族が診察室までお連れしたほうがいいでしょう。要介護者のご家族が遠方などの理由で付き添いが困難の場合は、訪問診療の検討をおすすめします。訪問診療は医療サービスですが、訪問診療の提供ができる診療所から「居宅療養管理指導」または「介護予防居宅療養管理指導」を介護サービスで受けられます。しかし、あくまで「管理指導」のため、治療を行うわけではありません。何らかの治療が必要であれば、医療保険を活用しながら在宅の生活を継続できます。

ヘルパーの見守りが必要な方へ

親子で外を散歩する様子

今回の記事では、ヘルパーへ頼める見守りや付き添いの境界線をお伝えしました。介護保険制度は万能ではなく、要介護者の願いを叶えられない場合があります。しかし、民間のサービスで代替案が見つかったり、医療保険で対応できたりするケースもあります。また、自治体によってはボランティアの活動も活発なため、まずは担当のケアマネジャー・地域包括支援センターなどで相談して多様な方向性を考えてみましょう。

平野たけし
介護福祉士、介護支援専門員、 第一種衛生管理者、 社会福祉主事任用資格、 認知症ライフパートナー3級 、福祉住環境コーディネーター2級 、メンタルヘルス・マネジメント検定試験2種 、ファイナンシャル・プランニング技能士3級

2018年9月まで、老人保健施設の介護士として14年間従事し、身体介護だけでなくイベントのプロジェクトリーダーを経験。介護福祉士・介護支援専門員・社会福祉主事、第一種衛生管理者、他多数の資格を習得する。2021年よりWebライター・電子書籍(Amazon Kindle)編集者として活動開始。様々なジャンルの書籍編集(加筆修正・構成・タイトル提案など)に8件携わり、ベストセラーを獲得。2年間の育児休業の経験があり、介護・子育ての記事執筆を得意とする。

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増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。