2022.08.30

女性がなりやすい頻尿「過活動膀胱」とは|症状と原因、治療法について紹介

最終更新日:2022.08.26
東海林 さおり
看護師

過活動膀胱とは

お腹を押さえる女性

過活動膀胱とは文字通り、膀胱が活動し過ぎる状態のことです。通常、膀胱の働きは脳からの指令によってコントロールされていますが、過活動膀胱になるとコントロールを失った状態になります。その結果、尿がしっかり溜まっていなくても膀胱が収縮してしまい、頻繁に尿意をもよおすようになります。

過活動膀胱になると現れる症状は、尿意切迫感と頻尿です。排尿は人にとって大切な生理現象であり、毎日当たり前におこなわれる行為です。しかし、過活動膀胱や頻尿になることで仕事中に何回もトイレに行ったり、外出や飲食を制限してしまったりと日常生活に影響を及ぼします。日本排尿機能学会によると、40歳以上で14%、推定患者数1000万人いるといわれています。たくさんの方が悩んでいる病気ですので、気になる症状がある時にはすぐに泌尿器科を受診してください。以下に過活動膀胱や頻尿のチェック項目を5点あげていますので、当てはまる項目があるか確認してみましょう。

・朝起きてから寝るまでに8回以上の排尿がある。
・夜寝てから朝起きるまでに1回以上の排尿がある。
・急に尿がしたくなり我慢ができない。
・急に尿がしたくなり我慢できずに漏れてしまう。
・いつもと比べ排尿の回数が多い。

過活動膀胱の症状と原因

お腹を押さえる女性

まずは、膀胱と排尿の仕組みについて説明します。膀胱は腎臓で作られている尿を溜めておく臓器です。膀胱の周りには排尿筋という筋肉があり、普段は尿を溜めやすいように筋肉が柔らかい状態になっています。膀胱から尿の出口までは尿道括約筋という筋肉で囲まれており、普段はしっかり尿道を閉めつけ、尿が流れ出るのを防いでいます。ほかに骨盤底筋も骨盤内の膀胱や尿道を支えています。

過活動膀胱は、膀胱内に尿がそれほど溜まっていないのに排尿筋が収縮し「尿が溜まっています」という信号を送り、頻尿を招きます。なぜこの信号が送られるのか明確な原因は解明されていません。脳の排尿をつかさどる部分や自律神経の乱れ、加齢などいろいろな事が関係していると考えられています。出産を経験している女性の場合、骨盤底筋の筋力が低下している方もいます。それも過活動膀胱や頻尿の原因となります。精神的なストレスによって排尿筋の収縮が促され、頻尿を引き起こすこともあります。緊張した時に尿意をもよおすのはそのためだと考えられます。

過活動膀胱の症状をご紹介します。「急に尿意をもよおして我慢ができない」尿意切迫感が主症状です。ほかに「トイレが近い」「慌ててトイレに駆け込む」などの頻尿や「我慢できずに漏らしてしまう」切迫性尿失禁などの症状があります。1回の尿量は少なく、何回もトイレに行くようになります。以下、それぞれの症状について説明します。

尿意切迫感

急に強い尿意をもよおし我慢できなくなったり、一旦尿意が気になりはじめると我慢できなくなったりする状態をいいます。過活動膀胱に必ずある症状です。家事で水を触っている時、手を洗っている時、トイレにいけない状況の時などにおこります。

頻尿

尿意の間隔が近い、尿の回数が多い状態をいいます。通常、昼間は5〜7回、夜間0回であるといわれていますので、それ以上の場合は頻尿といえます。しかし、排尿の回数は個人差がありますので普段と比べて多いと感じるのならば頻尿と考えていいでしょう。女性の場合、妊娠や出産の経験や男性より尿道が短く膀胱炎などになりやすい身体の構造をしています。排尿に関わる臓器へのダメージを受けやすいため、頻尿に悩む方が多くいます。

昼間頻尿

起床から就寝までに8回以上の排尿がある場合、昼間頻尿であるといえます。前述したように個人差がありますので、いつもの回数と比べて多いならば昼間頻尿と考えていいでしょう。

夜間頻尿

就寝から起床までに1回以上排尿がある場合、夜間頻尿であるといえます。2回以上の場合、過活動膀胱である可能性が高いです。

切迫性尿失禁

突然の強い尿意により、我慢できずに尿が漏れてしまうことをいいます。排尿筋の収縮により膀胱の圧が高まり、急な尿意とともに尿が漏れてしまいます。

過活動膀胱の治療方法

薬

薬物療法を中心に生活指導や骨盤底筋訓練、膀胱訓練、電気刺激療法などを行うことで効果的に治療が進みます。複数の治療を行なっても改善がみられない場合はボツリヌス毒素の膀胱壁注入治療や仙骨刺激治療などもあります。以下に代表的な治療をご紹介します。

薬物療法

排尿筋を緩める薬が用いられます。膀胱が収縮することを防ぎ、尿を溜める機能を高めます。副作用は唾液の分泌が減り、口が渇いてしまう事です。あとは便秘になることもあります。便秘により過活動膀胱の症状が悪化することも考えられますので副作用の程度によっては医師に相談しましょう。

生活指導

過剰な水分摂取やカフェインの摂り過ぎに注意することや、外出時にはトイレの位置の確認など、まずは日常生活の改善をおこないます。症状の軽い方は日常生活を見直すだけでも頻尿や切迫性尿失禁の改善が期待できます。

骨盤底筋訓練

骨盤底筋がゆるいと尿道を締める力が弱まり、尿漏れの原因になります。骨盤底筋とは骨盤の底に広がっている筋肉で、膀胱、子宮、直腸など骨盤内の臓器を支える役割を担っています。この骨盤底筋を鍛えることで尿漏れを防ぐ事ができます。具体的には、腹筋に力が入らないように膣や肛門周囲の筋肉を鍛える訓練です。これは、出産後の女性が経験することのある腹圧性尿失禁にも有効な訓練です。

膀胱訓練

膀胱訓練は尿意をもよおしても出来るだけ我慢し、少しずつ排尿間隔を延ばすことにより膀胱容量を増やす訓練です。具体的な方法としては、排尿計画を立て短時間から始めて15〜60分単位で排尿間隔を延ばし、最終的には2〜3時間の間隔が得られるよう訓練します。

電気刺激療法

膀胱や膀胱周囲の排尿筋、尿道括約筋、骨盤底筋に刺激を与えます。切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁に有効です。専用の粘着パッドを下腹部と臀部に貼り、寝ているだけの治療です。痛みや副作用がないので、体の弱い方や高齢の方にも安心です。

頻尿の兆候が見られたら、医療機関を受診しよう

カウンセリングを行う看護師

過活動膀胱や頻尿は命に関わる病気ではありませんが、周囲の人が考える以上に本人にとってはつらいものです。日常生活もままならない状態になりますし、外出を控えたり飲食も制限したりしてしまうことがあるかもしれません。夜、ぐっすり眠れない日が続いている方もいるのではないでしょうか。8人に1人の割合で過活動膀胱の症状に悩んでいます。あなただけではありませんので、1人で悩まないでくださいね。特に女性は泌尿器科への受診は「恥ずかしい」という思いからハードルが高いかもしれません。かかりつけ医や内科でも大丈夫ですので、まずは相談してみましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。