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頻尿・尿漏れの薬物療法
頻尿や尿漏れがおこる原因として考えられるのは、過活動膀胱や尿路感染症、腫瘍、心因性、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、溢流性尿失禁、機能性尿失禁などがあります。原因に応じて、水分摂取量の見直しや排尿時間のコントロール、筋力トレーニング、薬物療法をおこないます。これらの治療で効果が不十分な場合には手術療法などが選択されます。この記事では腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、前立腺肥大、膀胱炎の薬物療法と漢方薬や市販薬、サプリメントの効果などについてもご紹介します。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、重い荷物を持った時などお腹に力が入り、膀胱に圧がかかります。その圧に耐えきれずに尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です。出産や加齢などによる骨盤底筋の筋力低下が原因としてあげられ、女性特有の尿失禁です。排便時のいきみや喘息も骨盤底筋を痛める原因といわれています。治療法としては骨盤底筋の筋力トレーニング、薬物療法、手術療法があげられ、症状に応じた治療法が選択されます。
β2刺激薬
β2刺激薬は、膀胱の筋肉をリラックスさせ、尿道を閉じる働きがあります。腹圧性尿失禁の治療薬として認められている薬です。手の震えや動悸、気分不快、頭痛などの副作用がでることがあります。心配な症状がある時には医師に相談しましょう。
切迫性尿失禁
急に尿意をもよおし、我慢できずに尿もれをしてしまうのが切迫性尿失禁です。本来、排尿は脳からの命令でおこなわれますが、その命令がうまく伝わらず勝手に膀胱が収縮することで急な尿意につながります。外出している時にトイレにかけ込むようなことが起きますので、日常生活に支障をきたします。治療は薬物療法が中心です。ほかに骨盤底筋の筋力トレーニングや膀胱訓練も有効ですので併用して治療をすすめます。
抗コリン薬
抗コリン薬は膀胱排尿筋に作用します。膀胱の筋肉が勝手に収縮するのを抑え、膀胱に尿を溜められるようになります。口腔内の乾燥や便秘の副作用が見られることがあります。
β3作動薬
β3作動薬は筋肉をゆるめ、膀胱の容量を増加させる働きをします。抗コリン薬であらわれる口腔内の乾燥や便秘などの副作用が少ないのも特徴です。症状に合う薬が選択されます。
前立腺肥大
前立腺肥大は男性ホルモンが関与していると考えられており、ホルモンバランスの崩れる50歳頃より増加します。前立腺は尿道を囲むように存在していますので肥大することで尿道が狭くなり頻尿や残尿感があらわれます。全ての方に治療が必要なわけではなく、症状や生活に与える影響がどの程度かなど総合的に判断されます。治療法は、飲食、運動などの生活指導や薬物療法、手術療法になります。
α1遮断薬
α1遮断薬は肥大した前立腺を縮小させ、尿道をゆるめる働きをします。前立腺肥大による尿の出づらさを改善します。高血圧の治療にも使用されている薬であるため、副作用に血圧低下やめまい、ふらつきがあります。
PDE-5阻害薬
PDE-5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬は血管を拡げ血流と酸素の供給を増加させ、前立腺や膀胱の若返りを促します。消化不良、頭痛などの副作用があります。
膀胱炎
外部からの菌が尿道をさかのぼって膀胱に侵入することによって発症するのが膀胱炎です。尿道が短い女性に多い病気です。身体が疲れていたりストレスを感じていたりする時など免疫力が低下している時になりやすい病気です。排尿時痛や頻尿、残尿感、血尿などがあらわれます。治療法は水分を多く摂取することや薬物療法になります。
抗生剤
ニューキノロン系かセフェム系といわれる抗生物質を内服します。3日から1週間程度で改善します。症状がおさまったあとも菌が残っている場合がありますので処方された薬は最後まで飲みきりましょう。尿が膀胱にたまっている時間が長いと菌が繁殖しやすくなりますので、水分を多くとり尿量を増やすことが早い改善につながります。
頻尿・尿もれに効果的な漢方薬とは
最近ではドラッグストアにも多くの漢方薬が販売されています。その中でも頻尿や尿もれに効果がある漢方薬をご紹介します。
・八味地黄丸(はちみじおうがん)
体を温め、身体の機能低下を改善します。胃腸の弱い方は注意が必要です。
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
排尿を促進し、足腰のだるさやしびれ、痛み、むくみを改善します。
・猪苓湯(ちょれいとう)
尿量を増やすことで洗い流す作用があります。排尿時の痛みを緩和します。
・清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
精神の高ぶりをおさえます。膀胱の筋肉を緩める働きをします。
漢方薬には副作用がないイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。漢方薬は生薬と呼ばれる植物や動物、鉱物の組み合わせでできています。漢方薬を複数内服されている場合、生薬の重複が原因で副作用がでる可能性もあります。手軽に購入できるようにはなりましたが、心配な方は薬剤師に相談しましょう。
市販薬やサプリは効果があるのか
頻尿に効果があると記されている市販薬は牛車腎気丸、八味地黄丸、フラボキサート塩酸塩が配合されているものです。尿もれに効果があるのは、八味地黄丸のみとされています。フラボキサート塩酸塩は病院でも処方される医療成分であり、膀胱の収縮をおさえ尿をためる作用があります。ただし、男性は前立腺肥大を悪化させる危険性があり内服することができません。サプリは健康食品であり、体が持っている機能をサポートするものです。医薬品のように特定の箇所に作用するものではありません。症状がごく軽い時には市販薬やサプリを試してみるのもいいかもしれませんが、改善が見られない場合は早めに受診することをおすすめします。尿に関する悩みは日常生活に影響することが多いと思います。外出を控えたり、何をしていても楽しめなかったりしますよね。早めに受診して、原因を特定し適切な治療を受けましょう。
薬物療法は医師の指示を守りましょう
薬物療法は医師の指示を守ることで効果を発揮します。内服の時間や量、飲み方など医師の指示を守りましょう。「良くなったから」と自己判断で内服をやめてしまう方がいらっしゃいますが、体の中にはまだ菌が残っている場合もあります。きちんと指示の通りに内服しましょう。また、途中で心配な症状があらわれた時には遠慮なく医師に相談しましょう。
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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。