2022.10.06

高齢者の食事の特徴と注意点、おすすめの調理法や栄養素について解説

最終更新日:2022.12.01
東海林 さおり
看護師

遠方に住んでいる高齢の親から「こっちは心配いらないよ」と言われても、体調だけではなく日々の食生活は心配です。仕事と家庭で手一杯な人も多く、高齢者向けの栄養学や介護食に詳しくない人は多いことでしょう。そもそも高齢者の安全な食事とは、どのような食材や調理法なのでしょうか。そこで今回は、高齢者の食事の特徴や必要な栄養素、調理方法や注意点についてご紹介します。「親の介護経験がない人」や「遠距離介護の人」に向けて、高齢者が安心して召し上がれる介護食も紹介していますので、参考にしてみてください。

高齢者の食事の特徴

高齢者の食事

高齢になり食べる力が衰えると、味がわかりにくくなったり、噛み切れなくなったりします。自歯が義歯に置き換わると噛む力がさらに弱まり、飲み込む力が低下すると誤嚥などの危険もあります。食事が摂りにくくなった結果、栄養が足らずに健康を損なう可能性もあります。そこで、高齢者の食事の特徴についてお伝えします。

味覚の衰え

味覚が衰えると味がわかりにくくなり、食欲が落ちるケースがあります。必要な栄養が摂れず、病気に対する抵抗力が弱まったり、ケガの回復が遅くなったりします。食事に工夫がない状況が続くと、食事の摂取量が減り続け、筋力低下により運動能力が落ちる悪循環に陥ります。日常生活に支障をきたし、要支援・要介護状態になるケースがあります。

噛む力の衰え

歯の役割は前歯で食材を噛み切り、奥歯で細かくすり潰します。しかし、噛む力が低下すると、口腔内で食材を消化吸収に適した大きさに噛み砕けず、消化不良・未消化で栄養を吸収しにくくなります。噛む行為はアゴの機能の維持のほか、脳への刺激や血流の増加するため、食事が細くなると認知症の発症と進行の原因にもなります。

飲み込む力の衰え

飲み込む力が衰えると、食べ物がのどに詰まったり飲み物で誤嚥したり、場合によっては命に係わるときがあります。実際に正月の三が日で、餅をのどに詰まらせたニュースや記事を見聞きした人もいるでしょう。また、水分不足と食事量の減少から熱中症や脱水、腸内の活動が低下による便秘の原因になります。

高齢者に必要な栄養素

高齢者に必要な栄養素

体を構成する不可欠な栄養素として、骨を作るカルシウムや筋肉の基になるタンパク質などがあります。しかし、栄養素が体に及ぼす作用を知っている人は少ないでしょう。各栄養の役割について解説します。

骨を構成するカルシウム

高齢者が自宅で転倒して骨折などのケガは、よくある事故のひとつです。骨粗しょう症や加齢により、骨がもろくなるからです。高齢者の1日に必要なカルシウムの量は約500グラムといわれています。牛乳やチーズなどの乳製品や煮干し・しらすなどの小魚を食事に取り入れ、上手にカルシウムを摂取してください。

筋肉の基になるタンパク質

体の筋肉や臓器はタンパク質で構成されています。タンパク質の摂取量が低下すると、筋力が衰えて歩行時に足がもつれたり転倒したり、思い通りに体が動かなくなります。また、タンパク質は病気の抵抗力を高める免疫に関連するアミノ酸も含まれています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日あたり体重をグラムに変換した量を推奨しています。

※例 体重が50キロであればタンパク質の必要量は50グラム

タンパク質は主に肉・魚・玉子などから摂れますが、豆類にはタンパク質のほか、カルシウムが含まれているため、納豆や煮豆・豆腐などの大豆製品を食べると効率よく栄養を摂取できます。

健康維持に必須のビタミン

ビタミンの種類は数多く、それぞれが体に必要な要素です。例えばキノコ類に含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を助ける働きがあるため、小魚などと一緒に食べると相乗効果があり、マグロなどの赤みの魚はビタミンだけではなく、タンパク質や後述するミネラルが豊富です。また、緑黄色野菜に含まれるビタミンKが不足すると、ケガで出血した際に血液が止まりにくくなるため、日頃から幅広く栄養を摂る必要があります。

体の調子を整えるミネラル

ミネラルは全部で16種類あり、主に体の調子を整える作用があります。一部紹介すると以下の通りです。

・鉄分 貧血を予防する効果

・亜鉛 タンパク質の合成を助ける役割

・マグネシウム 新陳代謝に欠かせない成分

注意点として、日本人が好む調味料であるしょうゆ・みそには、塩分に含まれるミネラルの一種であるナトリウムが多く含まれているため、過剰摂取に注意が必要です。ビタミン同様ミネラルの種類も多いため、食材を単独ではなく煮たり焼いたりして、いろいろな食材を一緒に食べるといいでしょう。

高齢者が食べやすい食品と食べにくい食品

高齢者が食べやすい食品と食べにくい食品

すでにお伝えした通り、高齢者は飲み込む力が衰えています。プリンのようになめらかな食品は食べやすい一方で、弾力が強い食品はのどに詰まりやすく窒息の危険があります。そのため調理をする家族や高齢者自身が食べやすい・食べにくい食品に注意しなければいけません。具体的な食材について、以下に詳しく解説します。

高齢者が食べやすい食品

飲み込む力が弱くても食べやすい食品は以下の通りです。

高齢者が食べやすい食形態と食品例
食品の形態 食品例
おかゆ状 玉子がゆ・パンがゆ
半固形 ゼリー・プリン
ミンチ状 ハンバーグ・つくね
ペースト状 ヨーグルト・ジャム
ポタージュ状 シチュー・カレー

介護度が高くなると上記のほか、ミキサー食や流動食など液状の食事形態があります。固形の食材は調理の際、やわからく形成すると口の中でほぐれやすくなり、食べやすさの向上になります。

高齢者が食べにくい食品

誤嚥や窒息の危険がある、食べにくい食品は以下の通りです。

高齢者が食べにくい食品と食品例
食品の形態 食品例
硬い生野菜 キャベツ・レタス
繊維が残るもの ゴボウ・タケノコ
スポンジ状 凍り豆腐・はんぺん
弾力が強い うどん・スパゲッティ
酸味が強い レモン・果汁100%ジュース
水分がない 蒸しパン・ビスケット・クッキー
のどに詰まりやすい もち・だんご・ちくわぶ・ねりきり

上記の食品は、食卓に並べるのをやめたり調理法を工夫したり、高齢者にやさしい食事作りが必要です。

高齢者の食事の調理方法

親子で料理をしている様子

高齢者の食事は先に紹介した食べやすい食材を用意するだけではなく、調理の方法に工夫が必要です。適切な調理を行わなかった場合、噛み砕けなかった食片が詰まったり、むせた結果として誤嚥性肺炎の原因になったりします。そのため、以下では高齢者に適した調理法をお伝えします。

噛みやすくする工夫

高齢者が食材を噛めない原因は、主に硬いか大きいかのどちらかです。そのため、以下の5つの調理法をお試しください。

①蒸す

②細かく刻む

③切れ目を入れる

④煮込む

⑤ジャム状に加工

サツマイモやカボチャのような繊維質が多めの野菜は、温野菜か刻んで炒め物に。トマトやナスは皮をむくか、切れ目を入れて調理してください。タイやヒラメなどの魚類は圧力鍋で煮魚にすると、義歯や歯ぐきでも噛み潰しやすくなります。果物をジャム状に加工して、ヨーグルトや食パンに乗せるのもいいでしょう。

飲み込みやすくする工夫

介護の現場でも実践している、高齢者に向けた飲み込みやすくする工夫は以下の3つがあります。

①おかゆにする

②とろみをつける

③ゼリー状にする

ご飯はおかゆのほうが飲み込みやすく、しかも消化吸収が早いです。しかし、水っぽいおかゆはむせ込みの原因になるので、水分量の調節は大切です。サラサラしたカレーやシチューは、片栗粉やとろみ剤でとろみをつけると、嚥下反射と呼ばれる体が持っている飲み込む機能を助けます。また、飲み物をゼラチンなどでゼリー状に加工すると、舌触りやのどごしがよく、高齢者も飲み込みやすくなります。

高齢者の食事の注意点

高齢者の食事の注意点

健康維持には1日3食しっかり食べる必要があります。そのために、盛り付けや適切な食器で見た目を楽しむ工夫や、安全に食事を摂るために姿勢維持が大切です。心身が充実した日常を送るために、次のことに気を付けてください。

口から食べることを大切にする

食事は栄養を摂りこむ以外に、日常生活動作の維持につながります。舌の味覚や食器を掴む手の触覚、料理の香りで嗅覚などが脳を刺激して老化を抑えたり、食材を消化・吸収をするため胃腸の動きが活発になったりします。変化と刺激が少ない高齢者の楽しみのひとつは食事です。美味しい食事を摂ることで精神面が活発になるでしょう。

食欲がでるように工夫する

食事を口に運ぶ前に見た目で味の感想が思い浮かぶため、食器と食材の色合いは大切です。例えば、真っ白な器にご飯や白身魚が盛り付けてあれば無機質に見えますが、薄い黒のガラスの器にお刺身を盛り合わると、美味しさの演出につながるでしょう。味は濃すぎず薄すぎず、出汁や香味野菜を使って食材を引き立ててください。和食や和菓子が世界で評価されている理由は、味や食材だけではなく目で楽しめるからです。そのため、見た目の工夫や香りづけは食欲増進の大きな要因になります。

姿勢を整えて食事をする

姿勢が崩れると食道が狭まり、誤嚥の危険が増えます。姿勢を保つためには、イスには深く座り背筋を伸ばしましょう。イスの高さは足の裏が接地する高さに調整が必要です。車イスに乗ったまま食事を摂る場合、適切な座位と姿勢を保てるクッションを用意してください。姿勢を保てない場合は、リクライニング機能が付いているベッドやソファーで食べたほうが安全です。角度は45~80度を目安に調整してください。また、正しい姿勢を保持して食事を摂ると、誤嚥のリスクを抑えるだけではなく、全身の自重トレーニングになります。

高齢者の孤食のリスク

高齢者の孤食のリスク

独居の高齢者は年々増加しています。一人暮らしでは「調理が手間・面倒」といった理由から簡素な食事になりがちです。結果として、栄養バランスが崩れやすく、低栄養状態に陥りやすいといわれています。低栄養になると病気のリスクが上がり、体力が落ちて食欲をさらに失う悪循環になります。また、高齢者の多くは現役世代のとき「今晩飲みに行こう」や「食事に行こう」など、同僚や部下を誘い、飲食を通じてコミュニケーションと楽しみを共有していました。しかし、年齢とともに他者との交流が減ったり途絶えたりして、社会的に孤立するケースもあります。生き甲斐がなくなり精神的に落ち込み、うつ病になる事例があります。そのため、栄養バランスに優れ、食べやすさを加味した食品の用意が必要です。

食欲低下を防ぎ、「食べたくなる気持ち」を作ろう

食事をする親子

今回は「高齢者の食事」をテーマにお伝えしてきました。ここまでをまとめると以下の通りです。

・味覚、噛む力、飲む力が衰える

・食べやすい食品の厳選は重要

・調理に手間と工夫は必須

・孤食は栄養バランスが崩れやすい

・食欲低下は低栄養状態になりえる

食事は健康維持だけではなく、日々の活力になります。高齢者が安心して美味しく召し上がれる食事を用意して、いつまでも活力があふれる元気高齢者を目指してください。

おすすめの介護食を紹介

キユーピー「やさしい献立1 鶏だんごの野菜煮込み」Y1-4

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「鶏だんごの野菜煮込み」は、塩味を控えながらだしを使ってしっかりとした味付けにしています。やわらかく仕上げた鶏肉だんごを白菜、豆腐、大根、にんじん等と和風だしで煮込みました。具財の形を残し、スプーンで簡単につぶせるくらいにやわらかく調理しています。簡単にかむことができるのが特徴です。

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キユーピー「やさしい献立2 おじや牛すき焼き」Y2-5

介護食_やさしい献立2おじや牛すき焼き

「キユーピー やさしい献立2 おじや牛すき焼き Y2-5」は、牛肉や玉ねぎ、ごぼう、豆腐が入ったすき焼きを卵でふんわりとじたおじやです。とろみがついていて食べやすくなっており、歯ぐきでつぶすことができます。自分の口から食べることのリハビリにもつながるため、ご検討してみてはいかがでしょうか。

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キユーピー「やさしい献立2 肉じゃが」Y2-20

介護食_やさしい献立2肉じゃが

「キユーピー やさしい献立2 肉じゃが Y2-20 」は、やわらかく仕立てた牛肉とじゃがいも、にんじん、玉ねぎを醤油をきかせただしでじっくり煮込みました。適度な大きさの具材を歯ぐきでつぶせるくらいに調理師、とろみをつけて食べやすくしています。舌でつぶせるほどの柔らかさが特徴です。

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キユーピー「やさしい献立4 鶏肉と野菜」Y4-6

介護食_やさしい献立4鶏肉と野菜

「キユーピー やさしい献立4 鶏肉と野菜 Y4-6 」は、鶏肉、玉ねぎ、セロリをじっくりと炒めて素材の本来の美味しさを引き出し、じゃがいも、大豆と一緒になめらかに裏ごししました。素材の風味をいかしたなめらかな食感のペースト食です。かまずに栄養を補給ができるため、かむことにお悩みを抱えている方におすすめです。

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大和製罐「エバースマイル ムース食 20種セット 和食8種洋食8種中華4種」

介護食_エバースマイルムース食20種セット和食8種洋食8種中華4種

「大和製罐 エバースマイル ムース食 20種セット 和食8種洋食8種中華4種 」は、舌でつぶせるやわらかさ(ユニバーサルデザインフード 舌でつぶせる に準拠)にしており、調味液(あん)とムースを和えながらつぶすことで、より柔らかくすることができます。見た目の彩りと、それぞれの素材が持つ風味を楽しむことができるムース食です。和食・洋食・中華等のたくさんの種類の味を楽しむことができます。栄養も豊富なエバースマイルをお得なセットでご検討してみてはいかがでしょうか。

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平野たけし
介護福祉士、介護支援専門員、 第一種衛生管理者、 社会福祉主事任用資格、 認知症ライフパートナー3級 、福祉住環境コーディネーター2級 、メンタルヘルス・マネジメント検定試験2種 、ファイナンシャル・プランニング技能士3級

2018年9月まで、老人保健施設の介護士として14年間従事し、身体介護だけでなくイベントのプロジェクトリーダーを経験。介護福祉士・介護支援専門員・社会福祉主事、第一種衛生管理者、他多数の資格を習得する。2021年よりWebライター・電子書籍(Amazon Kindle)編集者として活動開始。様々なジャンルの書籍編集(加筆修正・構成・タイトル提案など)に8件携わり、ベストセラーを獲得。2年間の育児休業の経験があり、介護・子育ての記事執筆を得意とする。

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東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。