2021.07.15

食後に声がガラガラ? 誤嚥性肺炎の起こしやすい兆候と予防について

最終更新日:2022.09.02
東海林 さおり
看護師

誤嚥性肺炎とは

病院

誤嚥性肺炎は、高齢者に多い肺炎のひとつとして有名です。「食後に声がガラガラする」といったことで気づくケースもあります。高齢者の生活においては誤嚥性肺炎の予防を心掛けることが大切です。神経疾患を持つ人や、寝たきりの高齢者には特に多く、主に食べ物の誤嚥が原因となって起こるものですが、唾液や胃液で起こることもあります。症状は一般的な肺炎と同じで、発熱や咳、膿のようなたんが出るのが典型的ですが、高齢者で注意が必要なのが、症状が出にくい、わかりにくいということ。普段よりも元気がないとか、食欲がないというような症状の場合もあり、誤嚥性肺炎には結びつかないケースも多いようです。

誤嚥性肺炎を起こしやすい兆候

夫婦_食事

高齢者は嚥下機能が低下している人が多く、口腔内が清潔ではない場合は、誤嚥性肺炎になる可能性がさらに高くなります。まずは誤嚥性肺炎の兆候を知り、高齢者の病気の早期発見に努めるようにしましょう。

むせて食べられない

食事中にむせてしまったという経験をしたことがある人は多いことでしょう。若い世代でもむせるというのは結構辛いことですが、高齢者はむせることが多くなる傾向があります。それは、加齢によりのど周辺の筋力が低下すると、飲み込む機能が衰えやすくなるからです。食事中にむせてしまうということは、気管に飲食物が混入してしまっているということなので、誤嚥性肺炎になる可能性があると思っておいた方がいいでしょう。食事中にむせるのを防ぐ方法として、テレビを観ながら食事をせずに、少量ずつ食べるようにするのがおすすめです。介護者は、高齢者の食事中はできるだけ側につき、誤嚥しないように注意を払うようにしたいものです。

食べると疲れてしまう

高齢者は、一般的に食事の時間を楽しみにしているものです。その食事をすると、ぐったりして疲れてしまうという場合、誤嚥性肺炎の可能性があります。誤嚥性肺炎を起こしている、もしくは起きる可能性があるという場合、飲み込むことそのものが苦痛になることが分かっています。これは、若い世代は何も問題なく食事ができるので、介護者は意外と気が付きにくいものだとか。介護者は食事中の高齢者の表情にも注意し、辛そうだとか、元気がないようなことがないのか、チェックすることで誤嚥性肺炎を防ぐことができるでしょう。また、調理については野菜など小さく切るようにし、高齢者が食べやすく配慮することが予防策となります。

食事時間が長くなる

誤嚥性肺炎の兆候として、食事時間が長くなる傾向があります。これは、食事の際に飲み込みにくいためだったり、これまでと比べて少量ずつしか食べることができなかったりするためです。加えて、食事中にむせたり、飲み込みにくかったりするということが起きれば、食事そのものが辛いものとなってしまうため、箸が進まないということにもなりがち。介護者にできることは、高齢者が食物を口に入れて、かみ砕き、飲み込むということの一通りのことをするのに、これまでとどう違うのかということに注目すること。だいたいの食事時間を計っておくと、これまでとの違いに気が付くかもしれません。高齢者の中には介護者に気を遣って、自分からは言わないということもあるので、食事中に困ったことがないか聞いてみるのもいいでしょう。

食後ガラガラ声になる

誤嚥性肺炎の兆候として、食後にガラガラ声になるというものがあります。誤嚥性肺炎とガラガラ声が結び付かないような気がするのですが、実は食事中に気管内に飲食物が入り込んでしまい、声帯などに付着することによって、食後にガラガラ声になってしまうことがあるのです。食後だけ声がガラガラになることは、高齢者だけではないため、いつものことだとか、昔からよくあるといって、そのままにしている人もいるでしょう。習慣化されると、特に対処しないということが多いので注意が必要です。高齢者はむせる反射機能が鈍く、排出できなかった異物が肺に入ったままで炎症を起こすこともある。そこに細菌などが付着していれば、誤嚥性肺炎になってしまうことがあるので、注意深く見守りましょう。

誤嚥性肺炎の原因

食事

誤嚥性肺炎の兆候が分かったところで、実際にどのようなことが原因で病気の発症となってしまうのかについて、詳しく見ていくことにしましょう。私たち介護者には気が付かなかったことが原因になっていることがあります。

食べ物の誤嚥

どの世代でも食べ物を誤嚥してしまうということはありますが、特に高齢者や脳卒中の病後は誤嚥をしてしまうことが多くなります。食べ物の誤嚥が誤嚥性肺炎となってしまう理由は、食べ物に細菌が付着しており、その細菌によって肺炎を引き起こすからです。特に高齢者は口腔内環境がよくないことが多く、清潔ではない状態であることが多いため、どうしても口腔内の細菌が飲食物に付着するようです。誤嚥性肺炎を予防するには、食事中に誤嚥しないような食事の仕方をすることはもちろんですが、口腔内の環境を清潔な状態にすることも必要だと言われています。このほかにも、誤嚥した場合にせき反射が起きますが、このせき反射が高齢者は衰えてしまうことも原因だとされています。

唾液などの誤嚥

先程説明した食事中の誤嚥については、まだ気が付きやすいことと言えるでしょう。しかし、唾液の誤嚥については意外と気がつきにくいものだと言われています。それは、唾液の誤嚥が起床時だけに起きるものではなく、睡眠中にも起きることがあるためです。唾液中にはおよそ1ml中に約1億個の口腔内細菌が含まれていると言われますが、唾液の誤嚥の回数が多ければ多いほど、これらの細菌が気管内に入り込むため、どうしても誤嚥性肺炎になりやすいということが言えるでしょう。睡眠中の唾液の誤嚥は高齢者だけの問題ではなく、若い世代で起きているケースも。しかし、回数が少ないということと、口腔内が清潔であるということが、誤嚥性肺炎を起こしにくい理由でしょう。

胃の内容物の逆流

実は、逆流性食道炎が誤嚥性肺炎の原因のひとつとも言われています。逆流性食道炎とは、食事後の胸やけや、胃もたれ、ゲップ、のどの違和感などが症状としてあるものです。食後にいつものようにこれらの症状があるという場合は、逆流性食道炎になっている可能性があり、そのことが誤嚥性肺炎を起こす可能性があるということを心得ておいた方がよさそうです。逆流性食道炎は加齢によって起きやすくなるのは、筋肉が年を取ることで衰えてしまい、萎縮してしまうことで逆流を防ぐ弁の働きが衰えるためです。加えて、高齢者は背中が丸くなってしまっていることが多く、その結果、逆流性食道炎が起きやすいことも分かっています。さらに、過去胃がんの手術をしたことがあるという場合は、逆流性食道炎が起きやすいので注意が必要です。

誤嚥性肺炎の予防

夫婦_パソコン

高齢者が誤嚥性肺炎を起こしやすいのは、さまざまな理由がありましたが、なかには介護者が注意することによって、予防できることもいくつかありました。食事中の誤嚥については、介護者が見守ったり、調理を工夫することによって、飲み込みやすくすることで予防できそうです。思わぬ誤嚥性肺炎の理由として、睡眠中の唾液の誤嚥というものがありましたが、これに関しては口腔内の環境をできるだけ清潔にするということで、ある程度は予防できるでしょう。とはいえ、誤嚥性肺炎を起こす理由はこのほかにもいくつかあり、なかには介護者が注意することは難しい場合もあります。加齢や過去の病歴などはどうにもしようがないため、誤嚥性肺炎を完全に予防にすることは難しいでしょう。誤嚥性肺炎は高齢者がなりやすい疾患だということを認識して、介護者は病気の兆候を見逃さず、予防することが必要です。やはり、介護をするにおいて、高齢者が陥りやすい状況を認識し、罹患しやすい病気について知ることが大切でしょう。高齢者は肺炎によって亡くなることが多いので、介護者は配慮し、予防に努めたいものです。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。