2021.06.29

高齢者の不調を発見する|発熱の危険性と対応について

最終更新日:2022.07.22
東海林 さおり
看護師

ささいな体調の変化から、重篤な病気を早期発見できることがあります。また、ちょっとした不調を見逃すことで、深刻な症状に発展することもあるでしょう。この記事では高齢者発熱から分かることや発熱を放置するとどうなるかについて解説しています。発熱時の対応についても紹介しますのでぜひ参考にしてください。

体温計による計測

体温計

普段の体調を管理するうえでも、体温を毎日計測することは大切です。介護施設で暮らす高齢者は毎日検温し、発熱していないかチェックするなど、体調管理の基本項目とされています。体温は起床後や運動後、入浴後に上昇しやすいので、できるだけ平熱と思われるタイミングで測定するようにします。毎日同じ時間や状況で測定すれば、平熱をつかみやすく体調も把握しやすくなるでしょう。検温する際は、体温計が濡れないように注意することも大切です。濡れていると熱の伝導率が変わり、正しい数値が表示されない恐れがあります。例えば、わきの下が濡れている場合は汗をふき取り、乾いた皮膚に体温計を当てるようにしましょう。また、下着やパジャマなどの布類が体温計の先にあたる場合も、熱の伝導率が変わってしまい、正しい体温が表示されにくくなります。素肌に直接体温計を当てているか、検温時に確認するようにしましょう。痩せている方は脇の下で測定する場合、体温計の先端が肌に密着せず、正確な体温が測定できないことがあります。舌の裏の付け根に当てて測定するか、耳式体温計を使用するようにしましょう。太っている方は脇の下に汗をかいていることも多いです。しっかりと汗を拭きとってから体温計を挟むようにしてください。片麻痺の方は、麻痺していないほうの側で体温を測定しましょう。麻痺している側は脇が長時間密着していることが多いため、脇の下に熱がこもり、健康な側と比べて高温になっていることがあります。

高齢者の発熱による危険性

体温計

高齢者は体温を調整する機能や刺激に対する反応が低下しているため、発熱しても本人が自覚しない可能性もあります。また、発熱すると喉が渇いたり発汗したりしますが、高齢者は喉が渇きにくく汗もかきにくい方が多いため、本人だけでなく周囲も発熱に気付くにくくなってしまうでしょう。毎日、あるいは1日に何度か検温し、体温と測定時間を記録することで発熱(平熱よりも高い体温)に早めに気付けるようにしておきます。また、発熱に気付いたときは、介護をする方や周囲の方は重大な病気が潜んでないかを疑う習慣もつけておきましょう。

発熱で疑われる病気

高齢者の発熱が続くときは、何らかの病気が潜んでいる可能性が考えられます。たとえ微熱であっても症状が続くときは病気を疑うことができるでしょう。

微熱が続く場合

膠原病やがんにかかっている場合、微熱が続くことがあります。結核も微熱が長期間続くことがある病気です。また、細菌やウイルスに感染している場合、通常なら高熱が出ることがありますが、日常的に解熱鎮痛剤を服用しているならば体温があまり上がらないこともあるでしょう。解熱鎮痛剤はひじやひざなどの関節痛がある方に処方されることがありますので、服用している場合は微熱であっても高熱が出たと考えて早めに医療機関を受診することが大切です。

高熱を発した場合

インフルエンザやMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症)などの感染症に罹患した場合は、38℃以上の高熱を発することがあります。また、肺炎や膀胱炎で高熱が出ることもあるでしょう。そのほかにも熱中症で高熱が出ることもあります。高齢者は周囲の温度変化に気付きにくいことがありますので、室温が高くなり過ぎないようにこまめに管理し、快適な部屋で過ごせるように周囲が配慮しましょう。高熱を放置すると腎盂腎炎などの病気や意識障害などの重篤な症状に発展することもあるので、早めに医療機関を受診してください。

発熱の経過と対応

高齢者

発熱すると、時間が経過するにしたがって症状が変わっていくことがあります。また、発熱した高齢者への対応も、症状に合わせて変えていかなくてはいけません。熱野で始めと発熱期、解熱期に分けて症状と対応を紹介します。

熱の出始め

熱の出始めは「悪寒」がするため、布団を1枚多くかけたり厚手の靴下や下着を着たりして体感温度を調整することが大切です。体温を下げるためには、しっかりと汗をかく必要があります。水分を多めに摂り、発汗を促してください。水分を多めに摂ると尿量が増えるので、尿によっても体内にこもった熱を放出することができます。

発熱期

体温が本格的に上がってきたら、発汗量が増え、脱水症状のリスクも増えます。脱水症状にならないためにも、水分だけでなくミネラル等の電解質が入った飲み物を飲むようにしてください。経口補水液をストックしておくと、発熱したときにもすぐに水分とミネラルを補給できます。経口補水液がない場合は、水1Lあたりに3g程度の食塩を入れ、適度に砂糖を加えてよくかき混ぜて飲料を作って飲みましょう。レモンなどの柑橘系の絞り汁を少量入れるとさらに飲みやすくなります。

解熱期

熱が下がるときは汗で身体を冷やさないようにこまめに乾いたタオルなどで拭き、しっかりと経口補水液を飲みましょう。咳や喉の痛み、頭痛などの発熱以外の症状が深刻な場合には、医療機関を受診するようにしてください。また、口から水分を十分に摂取できないときも、医療機関を受診し、点滴などから水分を体内に補給するようにしましょう。高齢者は体温や室温の変化に気付きにくく、自分自身も気付かないまま発熱していることがあります。また、汗が出にくいため、周囲の人々も発熱していることに気付きにくいことが多いです。毎日時間を決めて体温を測り、平熱を把握して早めに発熱状態に気付けるようにしておきましょう。発熱した場合は水分を多めに摂り、発汗している場合は経口補水液などでミネラルも補給するようにしてください。発熱に重篤な病気が隠れていることや、発熱から重篤な症状に発展することもあるので注意しましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。