「親の介護にはお金がかかるけど、子育てや自分の老後費用も心配」「自分の時間も欲しいけど、介護サービスを利用するとお金がかかる」そんな風に悩んでいる方もいらっしゃいます。親の介護費用の負担軽減には、本人・親族から援助を受ける方法や公的な援助を検討することが必要です。今回の記事では、親・兄弟から援助を受ける方法や税金面の知識、公的な介護費用援助の種類・申請方法について詳しくご紹介します。
目次
親の介護で親や兄弟からお金をもらえる?
介護サービスの利用や介護用品の購入にはお金がかかります。金銭的な援助についての知識はとても重要です。この項目では、親の介護で親・兄弟からお金がもらえるのか?もらう場合の注意点について紹介します。初めに、親から介護費用の援助について解説します。
親の介護で親からお金をもらえる?
親の介護でお金をもらえるかどうかは、各家庭の経済状況や親の介護に対する考えしだいです。親が自分の介護を依頼している家庭では、定期的に介護の報酬を家族に支払っている家庭もあります。一方で、経済的に厳しく無報酬で介護を実施している家庭もあります。
他には親自身の介護に対する考え方も大きいです。「親の介護は無報酬でやって当たり前」とする価値観もあります。良い悪いではなく、価値観の違いで介護費用の援助が親から難しい場合もあります。他に相談できる親族がいれば、介護費用について相談することが重要です。次の項目で解説します。
親の介護で兄弟からお金をもらえる?
兄弟から親の介護費用をもらう家庭は多いです。遠方に住んでいる場合や子育て中などの理由で、親の介護ができない場合が多いからです。主に介護を担当する人を「キーパーソン」といいます。キーパーソンは介護関係の連絡調整や主に介護を担当するため、どうしても自分の時間が削られます。それらの対価的な考えも念頭において、兄弟間でトラブルにならないよう、役割分担や金銭的な負担割合を相談しておくことが大切です。次に公的な金銭的援助について解説します。
親の介護で申請したらもらえるお金
親の介護費用の援助には、公的な金銭的援助もあります。子供の就学費用など、自分自身の経済状況も心配です。公的な金銭的援助などを活用し、親の介護を実施しましょう。最初に10万円が支給される家族介護慰労金についてご紹介します。
家族介護慰労金
家族介護慰労金は各自治体によって、詳細が異なります。大阪市を例に解説します。対象は、要介護認定を受けた方を介護する世帯です。支給の条件は要介護者が「1年間・介護保険サービスを利用していない」などを満たすと年額10万円が支給されます。
申請方法はお住まいの市町村に問い合わせ、該当する場合は申請書が送付されます。申請書に必要事項を記入し、送付します。支給条件の確認及び自宅訪問等の調査を受けて、審査が通れば、市役所から専用の請求書が届きます。その後、必要事項を請求書に記載・送付して終了です。後日、指定の口座に10万円が支給されます。※自治体によっては、実施していない場合もあります。
大阪市役所. 「家族介護慰労金」.https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000370517.html, (参照 2023-05-10).
介護保険の住宅改修費
介護保険の住宅改修制度とは、簡単な介護リフォーム工事の費用援助制度です。例えば、住宅の手すりや段差の解消、扉の変更などがあります。
支給条件は住宅改修が必要な理由書及び見積もり、申請書を提出。工事完了後に領収書等を提出することで、改修費の9割が支給されます。改修費の上限は20万円なので、支給上限は18万となります。
申請条件は要支援、要介護認定が必要です。また、住居の変更や介護区分(7段階ある介護のレベル)が3段階以上繰り上がった場合、支給上限もリセットされます。理由書は専門的な知見から書く必要があるので、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談するとよいでしょう。
介護休業給付金
介護休業給付金とは、同居の有無を問わず家族の介護のために休業し、賃金が8割以下に低下した場合、ハローワークに申請すると給与の7割が支給される給付金です。限度は93日間の約3ヶ月。3回に分割して申請・支給を受けることが可能です。雇用保険に加入していれば、有期雇用の方でも申請は可能になります。
支給条件として、雇用保険の継続加入者で介護休業前2年間の間に賃金が支払われた日数が11日以上・12カ月あること。介護休業をした月の就業日数が10日以下及び介護対象者が2週間以上、常時介護が必要な状態であることなどです。支給金額は約7割が支給され、休業・就業日数により支給割合は低下します。申請先は雇用先の事業主です。
親からもらった介護報酬に税金はかからない
子が親の介護をして親からお金をもらうケースがあります。このようケースでは生活費の範囲内であれば贈与税はかからないとされています。相続税法では親子や兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費をもらうことは、課税の対象外としているからです。
ただ、生活の範囲を超えるような多額のお金をもらう場合は贈与税の対象です。「1年間で110万円以下なら贈与税の対象にならない」という話をよく聞きますが、あくまでも目安として考えてください。もし、介護をすることで親からお金をもらうという話が出ているのなら、課税対策のためにも、金額の大小にかかわらず最寄りの税務署で相談するほうがよいでしょう。
親の介護費用でお悩みの方は専門家に相談しよう
今回は、親の介護費用の援助について紹介しました。親の介護費用の援助には、公的な援助や親・親族から援助を受ける方法があります。注意点としてトラブルを防止するため、兄弟間で親の介護の考え方、介護負担、費用負担について相談しておくことが大切です。介護の負担は精神的・身体的にも大変です。一人で悩まず、地域の福祉サービスや兄弟など皆で支えあいましょう。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。