介護保険証は、要介護認定の申請や介護保険サービスの利用開始時に必要になる証書です。医療保険の保険証と違って日常的に使用する頻度が低いのが特徴です。そのため、いざ提示を求められたときに紛失に気付き、不安感を抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、介護保険証を無くしたときの対応方法や悪用の可能性についてご紹介していきます。この記事を読めば、介護保険証の再発行の方法や紛失時に気を付けなければいけないことが分かります。
目次
介護保険証とは
介護保険証とは、正式名称を「介護保険被保険者証」と言います。縦12.8cm×横27.3cmの三つ折りの書類で、表面には介護保険に関する決定事項が、裏面には介護保険証の取り扱い上の注意事項などが記載されています。色は自治体によって異なり、オレンジやクリーム色・ピンク色・水色など様々です。
介護保険証は、介護認定を受けていなくても65歳になった時点で一部空欄の保険証が自動的に郵送されます。また、要介護認定がついたときは新たに要介護度が印刷された介護保険証が届く仕組みになっています。公的な介護保険サービスを利用するために必要になる書類なので、届いたら無くさないように大切に保管しておきましょう。
介護保険証を紛失した場合、再発行ができる
介護保険証を紛失した場合は、申請すれば再発行してもらえます。再発行の対象となるのは、紛失以外にも破れたり汚れたりして介護保険証が使用不能となった場合も含みます。
再発行申請をするために事前に確認が必要な事項は、以下の通りです。
・再発行の手続きを行う窓口
・再発行にかかる期間
・再発行の申請が出来る人
・再発行に必要な持ち物
・再発行にかかる費用
この章では、再発行に必要な情報についてご紹介していきます。なお、どこかで落としたり盗まれたりした可能性がある場合は、念のため警察にも届出をしておきましょう。
再発行の手続きを行う窓口
介護保険証の発行元は、住民票のある市区町村です。よって、再発行も住民票のある市区町村役場の介護保険担当窓口で行います。担当窓口の名称は「福祉事務所」「介護保険課」「長寿介護課」など市区町村によって異なるので、不安な方は事前に確認しておきましょう。具体的にどの窓口か知りたい場合は、役場の総合案内窓口に「介護保険証の再発行申請の窓口はどこですか?」と聞くと教えてもらえるでしょう。 なお、自治体によってはマイナンバーカード(スマホ用電子証明書搭載サービスを含む)を用いてオンライン申請も可能です。詳しくは住所のある自治体のWebサイトでご確認ください。
再発行にかかる期間
再発行にかかる期間は、即日交付~概ね10日程度です。 直接本人が窓口で手続きする場合、再発行に必要な書類が揃っていればその場で再発行して受け取れる市区町村が多いです。
なお、以下の事例では、市区町村に登録している住所に郵送となるため、申請から1週間~10日程かかる可能性があります。
・本人もしくは同居の代理人以外が再発行申請をした場合
・再発行に必要な書類に不備があった場合
・必要書類を郵送で提出する場合 など
本人が直接窓口に行って不備なく申請すればその場で再発行してもらえますが、それ以外の場合は家に郵送されてくるまで時間がかかると覚えておきましょう。
再発行の申請が出来る人
介護保険証の再発行申請ができるのは、以下に該当する人です。
・本人
・法定代理人(成年後見制度に基づく法定後見人など)
・本人または法定代理人から依頼された家族、ケアマネジャー、介護事業所職員など)
なお、本人以外が再発行申請となる場合は、別途追加で書類が必要になります。詳細は次の「再発行に必要な持ち物」でご紹介しているので、併せてご覧ください。
再発行に必要な持ち物
介護保険証の再発行に必要な書類は、本人が申請する場合と代理人が申請する場合で異なります。代理人が申請する場合は、本人が申請する場合の書類に加えて委任状や代理人の身分を証明する書類が必要です。一部の申請書類はWebサイトからダウンロードすることもできますし、窓口に行ってその場で書くことも可能です。 それぞれのケースで必要な書類は以下の通りです。
本人が申請する場合
1. 介護保険被保険者証等再交付申請書 ※市区町村によって名称が異なる場合あり
2. マイナンバーが記載された書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバーが記載された住民票など)
3. 本人確認書類
<1点で本人確認できる書類>
・マイナンバーカード
・住基カード
・運転免許証
・運転経歴証明書
・障害者手帳
・パスポート
・その他官公庁が交付した顔写真付証明書で住所・氏名・生年月日の記載があるもの
<本人確認に2点必要になる書類>
・公的医療保険の被保険者証(健康保険証・後期高齢者医療証など)
・年金手帳
・介護保険負担割合証
・介護保険資格者証
・介護保険負担限度額認定証
・預金通帳
・その他、住所・氏名・生年月日・被保険番号等が確認できるもので、保険者が適当と認めるもの
4. 使用不能になった介護保険証(汚れ・破れなどの場合)
家族やケアマネが申請する場合
1. 委任状(本人の署名があるもの)※法定代理人の場合は、登記事項証明書
2. 介護保険被保険者証等再交付申請書 ※市区町村によって名称が異なる場合あり
3. 被保険者(本人)のマイナンバーが記載された書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバーが記載された住民票など)
4. 代理人の身元を確認できるもの
<1点で身元確認できる書類>
・代理人のマイナンバーカード
・代理人の住基カード
・代理人の運転免許証
・代理人の運転経歴証明書
・代理人の障害者手帳
・代理人のパスポート
・代理人の介護支援専門員証(ケアマネジャーが再発行申請する場合)
・その他官公庁が交付した顔写真付証明書で代理人の住所・氏名・生年月日の記載があるもの
<身元確認に2点必要になる書類>
・代理人の公的医療保険の被保険者証(健康保険証・後期高齢者医療証など)
・代理人の年金手帳
・代理人の介護保険被保険者証
・代理人の介護保険負担割合証
・代理人の介護保険資格者証
・代理人の介護保険負担限度額認定証
・代理人の預金通帳
・代理人の職員証
・その他、代理人の住所・氏名・生年月日・被保険番号等が確認できるもので、保険者が適当と認めるもの
なお、郵送で再発行申請する場合は、本人若しくは代理人のマイナンバーカードや確認書類はコピーを提出することが認められています。
介護保険証の再発行手続きは、本人が直接市区町村の窓口にて行うことが最も早く・最も少ない書類で済む方法です。本人以外が申請する場合は追加の書類が必要になったり、その場で再発行してもらえなかったりするなどのデメリットがあるので覚えておきましょう。なお、申請時に必要な書類は市区町村によって異なる場合があります。詳しくは直接お住いの申請窓口に確認してから手続きを行うことをおすすめします。
再発行にかかる費用
再発行に関する費用は、基本的に無料です。ただし、本人確認のために住民票や登記事項証明書を用いる場合、本人確認のための書類も紛失している場合などは別途必要書類の発行手数料が必要ですので覚えておきましょう。
なお、再発行を何度も繰り返している場合や郵送での再発行を希望する場合など、市区町村独自のルールで別途手数料や送料を請求される可能性もあります。詳しくは事前に市区町村の窓口に問い合わせておくとよいでしょう。
介護保険証を紛失すると悪用される?
仮に介護保険証が他人の手に渡ってしまったとしても、介護保険証だけで何かに悪用されるという心配は少ないでしょう。確かに介護保険証は行政が発行する公的な書類ですが、顔写真がないため、単体では本人確認書類としての効力がないからです。介護保険証を紛失したからといって、身分を偽って受診したり借金をしたりすることはできないのでご安心ください。
<参考>法務省 本人確認の具体的な証明の例(令和4年2月1日現在)
1枚の提示で足りるもの | 2種類以上の提示が必要なもの |
・運転免許証 ・個人番号カード(マイナンバーカード) ・写真付き住民基本台帳カード ・旅券(パスポート) ・国又は地方公共団体の機関が発行した身分証明書 ・海技免状 ・小型船舶操縦免許証 ・電気工事士免状 ・宅地建物取引士証 ・教習資格認定証 ・船員手帳 ・戦傷病者手帳 ・身体障害者手帳 ・療育手帳 ・在留カード又は特別永住者証明書など |
・写真の貼付のない住民基本台帳カード ※学生証、法人が発行した身分証明書で写真付きのもの ※の書類のみでは2種類あっても確認不可 |
※氏名及び住所または氏名及び生年月日が確認できるものに限る
法務省Webサイト.戸籍の窓口での「本人確認」が法律上のルールになりました.https://www.moj.go.jp/MINJI/minji150.html,(参照 2023-06-12)
ただし、上記の通り介護保険証に加えてその他氏名・住所・生年月日が確認できる公的機関が発行した書類が同時に他人の手に渡った場合は悪用のリスクが発生するので、直ちに警察に届出を行いましょう。
なお、信用情報機関「一般社団法人 全国銀行協会」「株式会社日本信用情報機構」「株式会社CIC」では、万が一本人確認書類を紛失したり盗難に遭ったりしたときに活用できる「本人申告制度」を運用しています。「本人申告制度」とは、本人確認書類の紛失や盗難の事実を本人が登録することで悪用を防止する制度です。100%悪用を防ぐことができるものではありませんが、万が一介護保険証を紛失した場合は登録しておくと安心です。
介護保険証を持っている方が死亡した場合の対処法
介護保険証を保有している65歳以上の方や要介護認定を受けている40~64歳の第2号被保険者が死亡した場合は、死亡後14日以内に介護保険証を発行している市区町村に届出が必要です。具体的には、以下のような手続きが必要です。
・介護保険被保険者証の返却(「介護保険資格取得・移動・喪失届」の提出)
・介護保険負担割合証の返却
・介護保険負担限度額認定証など減免関係書類の返却 ※交付されている場合
・「介護保険住所地特例適用・変更・終了届の提出」 ※住所地特例を受けている場合
・介護保険料の清算
介護保険証を持っている65歳以上の方が死亡した場合は、戸籍上の死亡届だけでは足りません。詳細については必要に応じて住所のある市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせるか、Webサイトで確認するようにしましょう。
介護保険証を紛失した場合は、早めに再発行手続きを行おう
介護保険証は、住民票のある市区町村が発行する被保険者の介護保険情報を記載した重要な書類です。使用する頻度は多くありませんが、介護保険サービスを利用する際や要介護認定の申請・更新などの手続きの際に必要です。紛失に気付いた場合は速やかに再発行の申請をしましょう。 介護保険証単体では紛失しても悪用の恐れはありませんが、他人の手に渡っている恐れがある場合は警察に届出をしたり、「本人申告制度」に登録したりして万が一に備えましょう。もし本人が死亡した場合も所定の手続きが必要になるので、市区町村に問い合わせながら漏れがないように手続きをお願いします。
「介護保険証を紛失した際の再発行手続きとは?悪用のリスクを解説」に関連する記事
大学卒業後、通所介護・訪問介護・福祉用具貸与・居宅介護支援・グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・有料老人ホーム・障がい者施設などを運営するNPO法人にて様々な種別の事業所に所属。高齢者支援だけでなく、障害者総合支援法に基づく業務の経験や知識も併せ持っている。事業所の新規立ち上げや初任者研修・実務者研修の設立・運営にも携わる。その後は地域でも有数の社会福祉法人に転職し、特別養護老人ホーム・ショートステイの事業所に所属した。現在は在宅高齢者を支援するケアマネジャーとして約50件を受け持つ。3児の父で、自身の祖父と父を介護した経験もあり、サービス利用者側・提供者側双方の視点を持ち、読者に寄り添う記事の執筆をモットーとしている。
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。