「老人ホームは種類が多くてわかりづらい…」介護を必要としながらも、そのように思う方も多いのではないでしょうか。介護老人保健施設は、リハビリを主とした施設。介護老人福祉施設と混同されがちですが、対象者や目的は大きく異なります。こちらの記事では、介護老人保健施設のサービス内容についてわかりやすく解説。費用や介護老人福祉施設との違いも紹介します。
介護老人保健施設とは
介護老人保健施設とは、医療的ケアを受けながらリハビリを行い、在宅復帰を目指すための施設です。食事や入浴、排泄の介助といった介護サービスも利用できます。施設に在中するのは、介護職や看護師のほか、理学療法士や作業療法士といったリハビリを専門とするスタッフ。「退院することになったけれど、以前のように自宅で生活できるか不安」という方が入居することの多い施設です。退院した方を迎え入れるご家族も、住環境を整えるまでの準備期間を安心して過ごすことができます。居室のタイプは2~4人で共同利用する大部屋のほか、1人用の個室タイプ。そのほか、「ユニット型」と呼ばれる居室は、個室と10人ほどで利用する生活設備がセットになっています。「介護老人福祉施設」と混同されがちですが、介護老人保健施設は、リハビリが充実しているのが大きく異なる点です。また、入居期間は約3~6か月と短いことも特徴となっています。そのため、介護老人福祉施設と比べると入居待ちの方も少なく、比較的入居しやすいことも違いとしてあげられるでしょう。
入居条件
介護老人保健施設の入居条件は、要介護1~5に認定された方と定められています。特別養護老人ホームの条件は要介護3以上のため、ここにも違いがあることがわかりますね。要介護認定を受けていない場合には、認定申請をする必要があります。申請先は、お住いの市町村の担当窓口です。入院中で本人が申請できないという場合には、家族が代理申請することもできます。ひとり暮らしで親族の支援が受けられない場合は、病院のソーシャルワーカーが代行手続きを進めてくれることもあるため相談してみましょう。
サービスの内容
介護老人保健施設では、個々の状態に合わせたリハビリサービスを利用できます。回数は少なくとも週に2回です。希望すれば、入居初期は週3回以上利用することも可能です。1回の時間は20~30分で、ベッドから車いすへの移乗動作や、歩行訓練といった日常生活のためのリハビリが中心となります。また、介護老人保健施設には医師や看護師が勤務しています。そのため、必要に応じた医療的ケアが受けられるのが特徴です。床ずれの処置やインスリン注射、経管栄養にも対応可能。食事は栄養士が管理しており、持病や嚥下能力に応じたものが提供されます。さらに、食事や入浴、排泄、着替えといった介護サービスも利用可能です。必要に応じ、居室の掃除や洗濯、買い物といった生活支援サービスも提供されます。このように、介護と看護、医療、リハビリが一体型なっていることが、介護老人保健施設の大きな特徴であるといえるでしょう。
費用について
介護老人保健施設は、介護保険が適用されるため比較的費用を安く抑えられる施設です。自己負担は、利用額の1~3割となります。入所時に支払う一時金も必要ありません。所得が一定額を下回る場合には、減免措置を利用することもできます。基本的な費用は、「介護サービス費」と「居住費」、「食費」です。要介護度3の方が入居した場合を例に費用を確認してみましょう。
(例)要介護度3(自己負担1割)の方が30日入居した場合(単位:円)
介護サービス費(828円/日) | 24,840 |
居住費(377円/日) | 11,310 |
食費(1392円/日) | 41,760 |
合計 | 77,910 |
※細かい費用は地域や施設により異なるため注意
個室を利用する場合には、居住費が増加し、介護サービス費は介護度が高いほど増加します。利用するサービスによっても加算される額は異なるため、費用は入居前によく確認しておきましょう。
メリットデメリット
介護老人保健施設のいちばんのメリットは、在宅復帰に向けたリハビリ訓練を受けられることです。リハビリ内容は医師の指示のもと決定され、個々の状態にもっとも適したものであることも心強いでしょう。また、常勤看護師は、たん吸引やインスリン注射、経管栄養といった医療的ケアに対応します。介護職も配置されており、充実した介護サービスを利用できるのもポイントです。一方、デメリットとしては入居期間が3~6か月と短い点があげられます。介護老人福祉施設のように終身利用できるわけではなく、あくまでも在宅復帰のリハビリが入居の目的です。そのため、楽しみを目的としたレクリエーションはさほど充実していません。利用される方によっては、その点がデメリットとなるケースもあるでしょう。
介護老人保健施設が向いている方
リハビリを目的とした介護老人保健施設は、退院後の在宅復帰を目指す方に向いている施設です。身体状況に不安がある場合でも、充実した医療的ケアを受けることができます。退院後は、必要に応じて住宅のリフォームや福祉用具のレンタルなど、生活環境を整える必要があるでしょう。その準備期間に施設でリハビリに専念できることは、本人にとっても家族にとっても大きなメリットとなります。また、公的施設の介護老人保健施設は、民間施設より安い費用で利用できることも特徴です。そのため、なるべく費用を抑えたいという方にとっても向いている施設であるといえます。
慎重に検討していこう
介護老人保健施設は、要介護状態にある高齢者の在宅復帰をサポートするための施設です。リハビリ設備とスタッフが充実しており、必要に応じた訓練を受けることができます。医療体制も整い、安心して入居できることもポイントです。必要に応じた介護サービスも利用可能です。高齢者の入退院は、体力を低下させる場合も多く、自宅に戻っても退院前と同じ生活が送れるかという点は、本人や家族にとって大きな問題です。介護老人保健施設を利用すれば、本人はリハビリに、家族は住環境の整備に取り組むことが可能です。担当ケアマネジャーや施設と相談を重ねながら、より良い利用方法を検討していきましょう。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。