2021.08.05

特別養護老人ホームとは|費用や受けられるサービスについて説明

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

介護が必要な高齢者向けの施設のひとつに、「特別養護老人ホーム」があります。「特養(とくよう)」とも呼ばれますが、どのような方が入居し、どのようなサービスを受けられる施設なのでしょうか。また、費用やメリットとデメリットについても見ていきましょう。

特別養護老人ホームとは

老人ホーム_ベッド

特別養護老人ホームとは、自宅での介護が難しく、なおかつ常時介護を必要とする高齢者のための施設です。食事や入浴、排せつなどの日常生活の介護から、リハビリや健康管理などのサービスまでを受けられます。

入居条件

特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上の方が入居できる施設です。しかし、要介護1もしくは2の方も、以下の条件のいずれかに該当する場合は入居できることがあります。詳しい条件に関しては、お住まいの自治体にお問い合わせください。

● 単身世帯のため、もしくは年齢や病気などの理由により、家族からの支援を受けられない場合
● 介護サービスの供給が不十分な地域に住んでいるため、在宅介護が難しい場合
● 認知症によって引き起こされる状態により、在宅介護が難しい場合
● 知的障害や精神障害があり、意思疎通が困難で在宅介護が難しい場合
● 家族による虐待が疑われ、在宅生活が難しいと考えられる場合

サービスの内容

特別養護老人ホームでは、次のようなサービスを受けられます。

● 食事や入浴、排せつ、着替えの補助などの日常生活に必要なサポート
● 寝たきり状態を回避するために着替えなどで生活にリズムを与える
● 入所者に合わせた機能回復訓練
● 医師や看護師による健康管理
● 急変したときの医療機関への引き継ぎ
● 入居者や家族の相談への対応
● レクリエーション

居室タイプ

特別養護老人ホームには、個室と多床室、ユニット型個室、ユニット型準個室の4つの部屋タイプがあることが一般的です。ユニット型とは共用スペースを囲むように個室が位置することで、ユニットごとに職員を配置し、個々の生活を尊重しながらユニット単位で家庭のように過ごします。

費用について

介護_費用

特別養護老人ホームの費用は比較的安価のため、利用希望者が多く、入居を希望しても数か月~数年待たなくてはいけないケースも少なくありません。特別養護老人ホームの費用は、原則として施設サービス費とサービス加算によってかかった費用の1~3割です。なお、負担割合は収入によって決まります。

費用の減免制度について

施設サービス費やサービス加算に関しては、上限額はあるものの介護保険が適用されるため1~3割の自己負担となります。しかし、住居費や食費は介護保険が適用されないため、所得が少ない方にとっては毎月の利用額が大きく、特別養護老人ホームに入居できない方もいるかもしれません。低所得のために施設利用が難しい方は「特定入所者介護サービス費」制度を利用できることがあります。特定入所者介護サービス費制度とは所得によって居住費や食費の負担限度額が設けられる仕組みで、少ない負担で特別養護老人ホームを利用できるようになるでしょう。なお、特定入所者介護サービス費が支給されるためには、利用する施設やケアマネジャーを通して管轄の市区町村に申請手続きをする必要があります。配偶者の市民税や預貯金の額によっては利用できないこともあるため、まずは相談してみましょう。

メリットデメリット

メリット_デメリット

特別養護老人ホームを利用することには、メリットもあればデメリットもあります。費用が比較的安価なことは特別養護老人ホームならではのメリットです。例えば要介護3で介護保険1割負担の方なら施設サービス費は1日697円(多床室・従来型個室の場合、1点=10円で換算)のため、1か月あたり(30日)の自己負担額は20,910円です。食費を1日に1,500円、居住費を1,000円とすると1か月あたり(30日)では75,000円、さらに日常生活費が10,000円ほどかかったとしても1か月あたりの利用料は約106,000円となり、他の入居施設と比べて負担が少ないと言えます。

また、特定入所者介護サービス費が適用されれば、さらに安価に施設を利用できるようになります。地域によっても異なりますが、世帯の市民税が非課税で老齢福祉年金を受給している場合は食費の限度額が月に10,000円、多床室の居住費が無料という地域もあり、少ない負担で入居することができるでしょう。

施設内で健康管理や機能訓練を受けられることも、特別養護老人ホームのメリットです。在宅で健康管理や機能訓練を受ける場合は医療機関やデイサービスに出向いたり、訪問看護サービスや訪問介護サービスに登録したりする必要がありますが、特別養護老人ホームに入居している場合は施設内の移動だけでサービスを受けられます。

しかし、特別養護老人ホームは医師の常勤が義務付けられている施設ではないため、医師の診察や治療を受ける場合には、医療機関に行かなくてはいけません。定期的に診察・治療が必要な方にとってはデメリットと言えるでしょう。

また、常勤の看護師は入居者30人に1人以下という配置基準のため、急変したときに迅速な対応が得られない可能性があります。その他にも、入所希望者が多く、順番を待たなくてはいけない施設が多いという点もデメリットです。中には数年以上待たなくてはいけない特別養護老人ホームもあり、介護を受けるために本来の希望とは異なる施設へ入所せざるを得なくなるケースもあります。

納得のいく施設を選ぼう

医師
特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢の方が利用できる施設のひとつです。原則としては要介護3以上の方が利用できますが、家族が高齢の場合や一人暮らしの場合には要介護1、要介護2の方も利用できることがあります。入居すると介護が受けられるだけでなく、機能訓練や健康観察も受けられ、健康的な生活を維持しやすくなるでしょう。また、費用面が安価に抑えられていることも特別養護老人ホームの特徴です。低所得の場合には介護保険適用外の居住費や食費に上限が設けられるため、さらに利用しやすくなります。特別養護老人ホームを利用するためにはケアマネジャーと相談することが必要です。また、医療を常時受けられる施設ではないため、主治医とも話し合うことが必要となるでしょう。どのような介護を望むのか、どのような生活を希望するのか家族も交えてケアマネジャーと話し合い、患者本人の意思を尊重して希望や病態に合った施設を選んでいきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。