2021.08.11

老人ホームに入るまでの流れ|最適な老人ホームに入るためのポイント

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

高齢者が入居する老人ホームには、公的施設から民間企業が運営するものまでさまざまな形態があります。入居する本人はもちろん、家族も満足できる施設を選ぶには、長期的な視野にたって比較検討することが大切です。こちらの記事では、老人ホームの入居を検討する方にむけ、一連の流れと知っておきたいポイントを解説していきます。

本人と家族の状況を確認する

夫婦

老人ホームへの入居は、入居する本人や家族の希望を整理するところから始まります。「入居先でどのような生活を送りたいのか」、「終の棲家となる施設を選ぶのか」など今後のことを検討する時間が大切です。その上で、予算や立地といった現実的な問題を整理していきます。ひとくちに老人ホームといっても、公的なものから民間のものまで形態はさまざま。民間の有料老人ホームはより多くの形態がある分、価格帯にも幅が出やすい傾向にあります。また、本人の住み慣れた土地であり、家族が訪問しやすい立地もおさえておきたいポイントです。緊急時に家族が駆けつけられる場所であることも、施設選びには重要でしょう。担当のケアマネジャー(介護支援専門員)がいれば、これらの状況を踏まえたうえで施設選びを相談することができます。本人の身体状況に応じた施設はどのような施設なのか、家族がどの程度訪問にいけるのかなど、まずは具体的な状況を確認しておきましょう。

条件を考えて老人ホームを絞り込む

夫婦

現在の状況を確認したら、本人の身体状況、要介護度、認知症の有無といった入居条件を洗い出してみます。特に、持病の有無や通院の必要性などは重要なポイントです。要介護度が高く医療的ケアが必要な場合には、それらに対応できるのか考える必要があるでしょう。また、認知症の方は生活環境の変化によって症状が進行する場合もあります。なるべく安心した環境で過ごすためにも、住み慣れた土地にあり、家族が訪問しやすい施設を選ぶことも大切です。さらに、選んだ施設がどのようなサービスを提供しているのかも重要なポイント。特に、設備やレクリエーションといった、基本的な介護以外のサービスもチェックしておきたい項目です。地域の方との交流行事や定期的な季節行事、認知機能を高めるための運動や園芸など、施設の取り組みはさまざまに異なります。本人の趣味や生活習慣と照らし合わせながら、どのような施設を選べば入居後の満足度が高まるのか検討していきましょう。

資料の取り寄せ

夫婦

いくつか候補があがったら、老人ホームの資料をもとに比較検討していきましょう。施設の資料は、電話やインターネットを通じて取り寄せが可能です。取り寄せた資料で確認したいのは、対応している要介護度や費用、サービス内容などです。入居してから後悔しないためにも、施設の運営理念もよく確認しておきましょう。また、資料だけでは施設の雰囲気をつかみきることはできません。そのため、見学に行くことをふまえ、利用したい施設をさらにピックアップする必要があります。

施設見学

老人ホーム

施設をより知るためには「見学すること」が何より重要です。電話やインターネットで見学を申し込む際は、見学できる時間帯や内容について相談しておきましょう。施設によっては、居室や設備を見学するだけでなく、食事の試食が可能な場合もあります。

実際の見学で注意して見るべき点は、以下のような項目です。

● 職員の働く姿勢(挨拶は丁寧か、笑顔で働いているかなど)
● 施設の環境整備は行き届いているか
● どのようなサービスが提供されているのか

適切なサービスが提供され満足できる施設かどうかは、そこで働く職員の姿勢や環境整備に現れます。実際の施設の雰囲気を肌で感じながら、気になる点は担当者に細かく質問しておきましょう。

申し込み・必要書類の準備

介護

入居したい老人ホームが決定したら、仮押さえの形で申し込みを行います。施設によって異なりますが、仮押さえ期間は約1か月です。その間に、以下のような書類を用意します。

● 診療情報提供書
● 健康診断書

診療情報提供書は、主治医に作成してもらう書類です。健康診断書は、病院で健康診断を受ければ発行されます。健康診断を予約してから診断書が発行されるまでの期間は、2~3週間。施設によっては提出が求められないこともあるため、時間や費用が必要な書類については事前によく確認しておきましょう。

面談・入居審査

老人ホーム_面接

施設側が利用される方の健康状態や希望条件を確認するのが「面談」です。面談では、入居する方と家族、施設の担当者が面接します。必要に応じ、担当のケアマネジャーが同席することもあります。入院中で本人が施設に行けない場合には、施設側に出向いてもらうことも可能です。その際は、事前に施設側に相談してみましょう。対応できない重要な疾患や、他の入居者との共同生活が難しいと判断された場合には、この段階で審査に落とされる可能性もあります。面談で問題が無ければ、要介護度や健康状態、経済状況について施設内で審査が行われます。経済状況の審査にあたっては、身元保証人の有無が重要なポイントです。身元保証人がいない場合には、後見人制度や民間の保証会社の利用を検討するとよいでしょう。

体験入居

介護

利用する施設を決定しても、入居までは不安を感じることもあるかもしれません。そのようなときに活用できるのが「体験入居」です。体験入居は、3日~1週間を目安に利用できるサービス。実際にスタッフからサービスを受けながら、施設の雰囲気を把握することができます。特に、人手が少なくなる朝晩の時間帯のサービスや生活音などは、パンフレットや見学だけでは知ることができません。家族にとっては、施設の立地を改めて確認できる良い機会となります。新しい環境に不安を覚えやすい認知症の方にとっては、施設に徐々に慣れていけるという点が大きなメリットとなるでしょう。

契約・入居

介護_契約

見学、体験入居を経て問題が無ければ実際の契約へと移ります。契約時に必要となるのが、以下のような書類です。

● 住民票
● 印鑑
● 連帯保証人、身元引受人の印鑑
● 印鑑証明、連帯保証人と身元引受人の印鑑証明(施設による)

契約にあたっては、「入居契約書」「重要事項説明書」「管理規定」をもとに、施設側から入居に関する説明を受けます。金銭的なことはトラブルになりやすいため、必要な費用や入居一時金の返還規定などについては、この段階でよく確認しておきましょう。

また、入居にあたっては以下のような生活用品が必要です。

● 衣類(下着やパジャマ、服、紙おむつなど)
● タオル類
● 靴(外履きと内履き)
● 食器類

これらの基本的な生活用品のほか、施設によってはテレビやタンス、冷蔵庫などが個別で必要です。これらは早い段階で準備できるため、入居を検討する段階で必要なものをピックアップしておきましょう。

自分に合った施設を選ぼう

夫婦

老人ホームを選ぶ際は、本人や家族にどのようなサービスが必要なのか事前に見極めることが大切です。長期的な視点にたち、立地やサービス条件を見比べることが最適な老人ホーム選びへとつながります。老人ホームへの入居は、緊急性を要する場合も少なくありません。そのようなときは担当ケアマネジャーに相談し、よりよい施設を検討していきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。