2021.06.04

介護保険でレンタルできる福祉用具 介護者の負担も軽減する体位変換器|快適介護用品・福祉用具

最終更新日:2022.08.18
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

体位変換器はどんな状態のときに使うべきか

介護

体位変換器は、ポジショニングツールとも呼ばれる福祉用具です。高齢者や要介護者など、主にベッドで寝たきりの方に使用する用具です。寝ているときの体位変換を容易にしてくれるアイテムで、さまざまな形状のものがリリースされています。体位変換器が必要な方は、自身で寝返りを打てない方、もしくは体を動かしにくい方などです。また、寝返りを自分で打てない要介護者に、つきっきりで介助できない介護者や家族にも適したアイテムです。

体位変換器はどんな悩みを解決することができるのか

ベッド

寝返りを容易にしてくれる

高齢者や要介護者によっては、筋力が著しく低下し、自分で寝返りを打てない方もいます。自分で体を思うように動かせないため、寝ているときに呼吸が苦しくなったり、つらい体勢で寝ることになってしまうことも珍しくありません。体位変換器を使用すれば、こうした問題を解決できます。あらかじめ体の下に挿しこんだり、そばに置いておいたりすれば、自ら寝返りを打ちやすくなります。

床ずれを防止できる

ベッドで寝たまま過ごすことの多い高齢者や要介護者の中には、床ずれを起こしてしまう方もいます。床ずれの原因はさまざまですが、寝返りを打たずに同じ体勢で寝続けていると、体の同じ部位に体圧が集中してしまい、危険です。床ずれも、初期段階なら大した問題ではありませんが、症状が悪化すると皮膚を大きく損傷してしまうことも珍しくありません。さらに悪化が進むと、組織の破壊が筋肉、骨などにも及んでしまい、酷い皮膚損傷を引き起こしてしまう恐れもあります。床ずれを回避するには、長時間体の同じ部位に体圧がかかりすぎないようにしなくてはなりません。そのためには、体位変換器を用いてこまめに体を動かしてあげる必要があります。

介護者の負担を軽減

寝たきりの要介護者を動かすのは骨の折れる作業です。介護職でも、寝たきりの方を動かすのは体力と技術が必要で、素人ならなおさら大きな負担がかかります。また、こまめに要介護者の状態をチェックし、必要に応じて体を動かしてあげなければいけないため、介護者は睡眠時間を削られてしまうでしょう。これらの問題を解決するのに、体位変換器は役立ちます。製品によっては、動力を用いて自動するものもあるため、体位変換作業の手間を大幅に軽減してくれます。介護者の肉体的、精神的負担を大きく軽減してくれるでしょう。

体位変換器の利用時における注意点

介護ベッド

状況に応じて選ぶ

詳しくは後述しますが、体位変換器にはさまざまな種類があります。枕型やスネーク型などクッションタイプのものもあれば、スライディングシートと呼ばれるものもあります。どれが適しているかは、利用者の身体状況によって大きく異なるため、しっかりと見極めなくてはなりません。形状や大きさも製品によって異なります。ベストだと思って選んだものが、利用者にとっては使い心地が悪く、眠れないといった可能性もあります。身体状況を見極めて選ぶことはもちろんですが、利用者の好みや使用感なども参考にしつつ選ぶことが大切です。

素材にも注意する

体位変換器の製品によって、使用されている素材はさまざまです。素材によって、利用者の使い心地のよさが変わってくるため注意が必要です。たとえば、ウレタンやビーズなどを内部に使用したものは、体にしっかりとフィットしますが、広い面をカバーすると蒸れてしまうおそれがあります。そのため、広い面をカバーできるタイプなら、通気性のよい素材を用いたものを選ぶのがベストです。通気性のよくない素材を使用した体位変換器を選んでしまうと、夏場に蒸れてしまい、利用者が不快な思いをしてしまいます。通気性がよく、洗浄が容易なものを選ぶと安心です。

利用者の意見をよく聞く

体位変換器の中には、動力を用いたものもあります。エアを注入するタイプの製品は、自動的に一定の周期で用具がふくらむため、体位変換が容易です。介護者の負担を大きく軽減してくれる一方で、自動的に動くことから利用者が不快な思いをしてしまうこともあるようなので、注意が必要です。一方的に押し付けるのではなく、利用者の意見をきちんと聞きましょう。介護者の負担を軽減したいのも理解できますが、体位変換器を使うのは利用者であるため、意思を尊重してあげることが大切です。

体位変換器の種類と選び方

手

クッションタイプ

体位変換クッション

もっともポピュラーな体位変換器です。枕型やスネーク型と呼ばれることもあり、簡単に体位変換ができることから人気があります。設けられている持ち手を引っ張るだけで体位変換が可能なため、力はほとんどいりません。そのため、腕力があまりない介護者にも適しています。なお、このタイプは体位変換後に姿勢保持が可能なのも特徴です。

スライディングシート

 

使用方法をきちんとマスターしていれば、1人でも簡単に体位変換が可能です。薄型のシートなうえ、滑りやすい加工を施してあるため、軽々と体を移動できます。スライディングシートには、さまざまなサイズがあるため、利用者の体格に合わせたものを選びましょう。また、シートの敷き込み方や抜き方などを、介護者が正しく覚える必要があります。このあたりは、お世話になっているケアマネージャーや介護職がいるなら直接質問してみるとよいでしょう。

バナナ型クッション

 

バナナのような見た目をしたクッションです。両端にグリップがあるため握りやすく、介護者の負担を軽減できる設計です。使い方も簡単で、直感的に使用できるのが魅力といえるでしょう。体の下に挿しこんで体を移動させるだけでなく、姿勢保持にも使えます。介護施設で導入されているケースも少なくありません。サイズも、小さなものから大きなものまでさまざまで、利用者の体格に合ったものを選べます。中の詰め物や外側のカバーに使用されている素材も製品によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

まとめ

体位変換器を導入すれば、高齢者や要介護者の方を悩ませる床ずれや寝苦しさなどを解消できます。それだけでなく、介護者の肉体的な負担も軽減してくれるため、双方にとってメリットのある福祉用具といえるでしょう。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。