2021.09.20

介護保険でレンタルできる福祉用具 安定した歩行をサポートする歩行補助杖|快適介護用品・福祉用具

最終更新日:2022.12.01
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

歩行補助杖はどんな状態のときに使うべきか

高齢者_杖

歩行補助杖とは、杖のことです。ただ、杖といってもさまざまな種類があり、すべての杖が介護保険でレンタルできるわけではありません。歩行補助杖として認められているもののみ、介護保険を使ってレンタルできます。介護保険の貸与対象となっているのは、ロフストランド杖やサイドウォーカー、多脚杖などです。歩行補助杖は、主に歩行困難な方が使用します。足腰が弱っている方や、自力で安定した歩行ができない方などの、歩行をサポートするためのアイテムです。高齢者の歩行機能を維持するためにも、歩行補助杖が用いられるケースが少なくありません。

歩行補助杖はどんな悩みを解決することができるのか

高齢者

安定した歩行をサポート

加齢により足腰の筋肉は衰えてしまい、通常の歩行を困難にしてしまうことが珍しくありません。歩行時に不安定となってしまい、転倒による打撲、骨折などのリスクも発生します。また、歩行時の姿勢が安定しないため、歩くスピードが必然的に遅くなってしまいます。歩行補助杖を用いれば、こうした問題を解消できます。歩行補助杖を使用することで身体を支える支持基底面が広がり、安定性を高められるのです。安定した歩行をサポートでき、歩くスピードも速くなります。転倒によるケガのリスクも軽減できるため、利用者が安心できるメリットもあります。

足腰への負担軽減

足腰の筋力が衰えている高齢者が歩行すると、どうしても足腰に負担がかかります。そのため、少し歩いただけで疲れてしまい、動けなくなってしまうことも珍しくありません。歩行補助杖を使えば、足腰にかかる負担を軽減できるため、こうした問題を解消できます。足腰への負担を軽減できる理由は、身体を支える軸がひとつ増えるからです。2本の脚だけでなく、杖が加わるため、複数の軸で体を支えられるのです。本来自身の足腰にかかるはずの負担を、複数の軸へ分散できるため、負担を軽減できます。足腰への負担が軽減すれば、歩行しやすくなり、疲労も抑える効果も期待できます。

行動範囲を広げられる

足腰が弱った高齢者や要介護者は、外出するのを嫌がり自宅へ閉じこもってしまうケースが少なくありません。すぐに疲れてしまう、周りに迷惑をかけてしまう、といった理由で外出したがらなくなってしまうのです。しかし、外出する機会が少なくなると、足腰を使う頻度が少なくなり、さらに筋力の衰えを招いてしまうリスクがあります。歩行補助杖があれば、足腰への負担を軽減でき、安定した歩行ができるため自宅への閉じこもりを回避できます。行動範囲を広げられ、自信も取り戻せるため、生きる意欲も湧いてくるでしょう。

歩行補助杖の利用時における注意点

高齢者_杖

足元をよく確認して歩く

歩行補助杖を使って歩くときは、足元をよく確認しましょう。大きめの石や空き缶など、障害物がある場合、そこに杖をついてしまい体勢を崩してしまう危険性があります。転倒につながるおそれもあるため、進行方向に障害物がないか確認しながら歩きましょう。また、歩行補助杖を使用するときは、原則舗装してある道を歩くことが基本です。未舗装の道を歩いてしまうと、路面の状態によっては杖が埋まってしまい、動けなくなるおそれがあります。杖が抜けなくなる、埋まった拍子に転んでしまう、といったことも考えられるため、コンクリートやアスファルトなど舗装してある道を選んで歩いてください。

杖が引っかからない服を選ぶ

歩行補助杖を使って歩くときは、服装にも注意が必要です。服が杖に引っかかってしまうおそれがあり、スムーズで安定した歩行を阻害してしまうおそれがあるのです。袖が長すぎる服や、だぼついた服は控えたほうがよいでしょう。服だけでなく、靴にも気を配りましょう。靴のサイズが足にマッチしていないと、転倒のリスクを高めてしまいます。正しい姿勢で歩けなくなり、靴ズレや転倒などの危険性もあります。特に、遠くへ外出するときには服と靴、どちらも注意してください。

利用者に合ったものを選ぶ

歩行補助杖にもさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。杖によって、適した利用シーンがあるため注意が必要です。利用者の身体状況や、利用シーンに合わせてベストな杖を選びましょう。たとえば、安定性に定評のある多脚杖ですが、平坦でない道で使用してしまうと、かえって不安定になってしまうおそれがあります。ベストな歩行補助杖がわからない場合は、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員など、プロに相談のうえ決めましょう。

歩行補助杖の種類と選び方

高齢者_杖

ロフストランド杖

前腕を通すカフが備わった杖です。前腕部支持型杖と呼ばれることもあります。体重を分散させられ、歩行時の安定性も高いことが特徴です。装着のしやすいU字型のオープンカフと、固定に優れたO字型のクローズカフの2つがあります。しっかりと手に固定できるため、杖を握る力が弱い方、手に麻痺がある方などに向いています。ただ、O字型は安定性に優れているものの、すぐに取り外しができません。そのため、転倒したときや、トイレへ行きたいときなどに多少不便さを感じる可能性はあります。

サイドウォーカー

歩行補助杖の中でも、もっとも安定性に優れた杖です。4本足で身体を支えるため安定性が高く、ベッドからの立ち上がりにも利用できます。折り畳み式の製品を選べば、収納場所にも困りません。歩行時の安定性を求める方に最適な歩行補助杖です。杖を握れない方、手に麻痺がある方などに適しています。いっぽうで、坂道や段差などでは転倒のリスクが高まるため利用できません。そのため、基本的には屋内での利用に限られてしまいます。屋内はサイドウォーカー、屋外はそれ以外の杖と使い分けるのもよいでしょう。

多脚杖

杖の先端が複数にわかれたタイプの杖です。複数の脚で支えられるため、通常の杖に比べて安定性に優れています。グリップには、L字タイプやT字タイプなどがあるため、身体状況や利用シーンに応じて選びましょう。先端が複数にわかれているため、平坦でない道での利用はリスクが高まります。基本的には、屋内や平坦な場所のみでの使用が安心でしょう。

まとめ

歩行補助杖を使えば、高齢者でも自分の脚で歩けるため、自信を取り戻せます。安定した歩行をサポートしてくれるため、利用者や家族も安心できるでしょう。ここでご紹介したように、さまざまなタイプの歩行補助杖があるため、利用者の身体状況や利用シーンに合わせ、ベストなものを選んでください。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。