2021.07.19

高齢者の嚥下障害の原因と予防、嚥下障害による危険性について

最終更新日:2021.07.19

高齢者の嚥下障害について

看護

嚥下とは、口から入れた食べ物や飲み物などを飲み込む動作を指します。嚥下障害とは、嚥下に障害が生じている状態で、食べるのに時間がかかる、きちんと栄養摂取ができないなど、さまざまな弊害ももたらします。

嚥下障害の兆候とは

嚥下障害のひとつとして、食事中にむせることが挙げられます。障害が生じていない方でも、食事中にむせてしまうことはありますが、嚥下障害のケースでは食事のたびにむせてしまいます。また、固形物をしっかりと咀嚼しても、飲み込みづらくなるというのもよく見られる症状のひとつです。食べ物が喉につかえてしまい、上を向かないと食べられないケースもあります。通常通り食事をしてしまうと、食べ物が口からこぼれてしまう、食後に咳が出るなども、嚥下障害ではよく見られる症状です。食べ物が喉につかえる、なかなか飲み込めずに吐き出してしまうなどの症状では、きちんと栄養が摂れず健康面の不安が考えられます。そのため、このような症状が確認できているのなら、介護者は何らかの対策を考えなくてはなりません。

嚥下障害の原因

さまざまな原因が考えられますが、ひとつには加齢が挙げられます。固形物の咀嚼や嚥下には筋力を使いますが、加齢に伴い衰えてしまいます。飲み込みやすい状態に咀嚼できず、結果的に嚥下できないケースは珍しくありません。何らかの病気で、嚥下障害が生じている可能性もあります。たとえば、口内炎の発生や扁桃腺の腫れなどが生じていると、通常通り嚥下するのは困難です。また、神経筋疾患(パーキンソン病)や脳卒中などが原因で、嚥下障害が生じることもあります。心因性の原因で、嚥下障害が起きるケースもあるため注意が必要です。ストレスや心身症などのほか、神経性の食欲不振などが該当します。このように、嚥下障害が生じる原因は、決してひとつではないことを理解しておきましょう。

嚥下障害の予防

食事中の姿勢が悪いと、嚥下障害につながる可能性があります。背中を丸めて食べていると、食道が曲がってしまうため、食べたものがスムーズに胃まで落ちていかないのです。日ごろから、姿勢を保持するトレーニングを取り入れましょう。また、首周辺の筋肉が凝り固まってしまうと、嚥下しにくくなります。入浴後など、筋肉が温まっているときにストレッチを行うことで、筋肉の凝りをほぐし柔軟性を高められることができるので、おすすめです。食事中の嚥下障害を未然に防ぐことも大切です。本人が飲み込みやすい状態で、食事を提供することを心がけましょう。しっかりと咀嚼できないのなら、食材を細かくカットする、ペースト状にするなどの方法があります。特に、肉など噛みきりにくい食材は、なるべく食べやすい状態にしてあげたほうが安心です。

嚥下反射の確かめ方

唾液の嚥下を繰り返してもらうことで、嚥下の状態を確認する方法があります。30秒のあいだ唾液を繰り返し嚥下してもらい、介護者は喉仏に指をあてて動きをチェックするのです。30秒に3回以上動くなら問題なし、以下なら問題があると考えられます。また、水を飲んでもらい、嚥下の状態をチェックする方法もあります。3mlの水を嚥下してもらい、むせや呼吸の変化があるかなどを確認するのです。これらは、医療機関でも行われている嚥下評価の方法です。食後に咳が集中的に出ないかどうかもチェックしましょう。もし、食後に咳がたくさん出るようなら、嚥下障害が生じている可能性があります。食事を始めてすぐに痰が増えたときも、誤嚥のおそれがあるため注意しましょう。

嚥下障害による窒息や誤嚥の危険性

嚥下障害を生じていると、きちんと咀嚼できていない固形物が、気道に入ってしまうおそれがあります。食べたものが気道を閉鎖してしまうため、窒息してしまうリスクがあるため注意が必要です。また、食事中にむせてしまうケースでは、口にする飲み物が少なくなるため、水分不足に陥いることが少なくありません。体に必要な水分をしっかり補給できないので、知らず知らずのうちに脱水症状になってしまうおそれもあるのです。栄養不良に陥るリスクがあることも、覚えておきましょう。嚥下障害が生じると、以前より食事量が減ってしまい、結果的に栄養不足に陥ることがあるのです。また、飲み込みやすいものを中心に食してしまうため、栄養バランスが偏るおそれもあります。

嚥下障害と食事介助について

食事介助で大事なポイントは、前述した通り本人が食べやすい状態で食事を提供してあげることです。咀嚼する能力が低下しているのなら、ゼリーやペースト状にする、食材を細かくカットするなどの対処をしなくてはなりません。ゼリーやペースト状にしたからといって安心はできません。スプーンで食べるとき、山型にすくってしまうと、喉に残りやすいため注意が必要です。スプーンでスライスするようにすくうと、喉に残りにくく嚥下しやすくなります。食事をしているときの様子も、観察しましょう。咳をしていないか、痰が増えていないか、水分をきちんと飲んでいるかなどをチェックしてください。むせることを嫌って、水分をあまりとらない方もいます。脱水症状の危険があるため、介助者がきちんと見守ってあげましょう。

嚥下障害の治療法

嚥下障害の治療は、手術とリハビリテーションの2つがあります。高齢者の場合、手術は体力的な問題もあるため、リハビリで改善を図ることがほとんどです。リハビリでは、唇や舌などを動かしたり、発声したりするトレーニングを行います。また、呼吸に関わる筋力を強化するため、呼吸筋のトレーニングも行い機能を改善します。リハビリによる治療には、間接訓練と直接訓練の2種類があり、前者は食べ物を使わずに行うことが一般的です。上半身のストレッチをはじめ、リラックスして食事ができる状態を整え、そのうえで唇や舌、頬の可動域を拡大し筋力の強化を図ります。直接訓練では、高齢者でも食べやすいやわらかい食べ物を使い、トレーニングを行います。一般的には、とろみ食やミキサー食などからスタートし、少しずつ通常の食事へ近づけていくのです。

介護者が注意すべきこと

介護_食事

一度にたくさんの食べ物を口に入れてしまうと、嚥下障害を引き起こすおそれがあるため、適正な量を口に運んであげましょう。要介護者が自ら口に運ぶときは、ひと口の量をチェックしてあげることも大切です。口の中にある食べ物をきちんと飲み込めてから、次のものを口に運んであげてください。次々と運んでしまうと、慌てて飲み込もうとしてしまい、嚥下障害を引き起こすおそれがあります。要介護者が、食事に集中できる環境を整えてあげるのも、介護者の役目です。たとえば、テレビを見ながら食事をしてしまうと、誤嚥につながるおそれがあります。テレビを消し、集中して食事ができる環境を整えてあげましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。