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高齢者の視力低下を示す兆候
加齢に伴い、人の体はさまざまな機能が低下していきます。視力も加齢により低下する機能のひとつであり、日常生活にさまざまな弊害をもたらすことも少なくありません。次からは、具体的に高齢者の視力低下を示す兆候を見ていきましょう。
しきにり目をこする
視界がぼやけてしまう、かすんでしまうといったときに、目をこすることが多いようです。視力低下や目の病気でなくても目をしきりにこする方はいますが、高齢者がこのような動作を頻繁にするのなら、視力の低下を疑いましょう。テレビを見ているときやパソコンを操作しているとき、車の運転をしているときなどに目をこする回数が明らかに多いのなら、何かしら目に問題があるのかもしれません。目を頻繁にこすると、角膜を傷つけたり細菌が付着したりするおそれがあるため、注意が必要です。
テレビを見なくなる
テレビを見る頻度が少なくなったのは、視力の低下が原因かもしれません。視力が低下すると、テレビの画面が見づらくなってしまい楽しめないため、見る頻度が少なくなってしまいます。また、テレビの画面がまぶしいと感じている可能性もあります。テレビの光がまぶしいのなら白内障を発症しているかもしれないため、より注意が必要です。以前に比べて明らかにテレビを見る頻度が少なくなったのなら、一度眼科で診察を受けることも検討しましょう。
目測を誤ることが増える
歩いているとき、頻繁に段差でつまづくことが増えた、物を取ろうとして失敗するといったことが増えたのなら、視力の低下が関わっている可能性があります。視力が低下し、きちんと見えないため目測を誤ってしまうのです。このような状態では、日常生活にさまざまな弊害をおよぼしてしまいます。目測を誤る以外にも、テレビや新聞などを見にくそうにしている、目を細めて見ることが多い、といった状態なら、著しく視力が低下しているかもしれません。
歩行がおかしくなる
視力が低下してしまうと、進行方向がよく見えないため歩行がおかしくなるケースが少なくありません。ヨタヨタと頼りなく歩くようになった、壁に手を添えて歩いている、ぎこちない歩き方をしている、といった状態なら、視力低下を疑いましょう。不自然な歩き方になってしまうため、体のさまざまな部分に余計な負担をかけてしまうリスクもあります。片側の膝や腰に負担がかかり、健康を損ねてしまうかもしれません。また、不自然な歩き方ゆえに、小さな段差につまづいてしまい、転倒するリスクもあります。
トレイがうまく使用できない
著しく視力が低下していると、トイレの使用も困難になってしまいます。家の間取りによっては、1人でトイレにたどり着くことすら困難となってしまうかもしれません。また、男性の場合なら、便器を尿で汚してしまうことも考えられます。排出される尿を目で確認できないため、便器のふちや床などを濡らしてしまうこともあります。
外出の機会が少なくなる
視力低下が進むと、外出するのが怖くなってしまい自宅へ閉じこもることが増えます。特に、視力が低下した状態で外出し、車や自転車にひかれそうになった、人とぶつかりそうになったなど、怖い思いを経験していると外出することをおそれてしまいます。友達とのお出かけや買い物などが好きだった方がまったく家から出ずに過ごす日が多くなった、といったケースでは、視力の低下を疑ったほうがよいかもしれません。
白内障や緑内障に注意する
高齢者に多い目の病気として知られているのが、白内障です。65歳以上の方で特によく見られる病気で、約2,000万人の方が白内障だともいわれています。加齢や糖尿病などが原因で発症することもありますが、主な原因といわれているのは加齢です。白内障の症状としては、目のかすみやぼやけ、物が二重に見えるなどが挙げられます。また、常にまぶしく感じる、薄暗くなると絵や文字が見えない、といった症状もあります。白内障は、治療すれば回復が見込める病気のため、兆候が見られた場合には早めに眼科を診察しましょう。一方緑内障は、眼圧が高くなることで視神経に大きなダメージを与えてしまう病気です。目が疲れやすい、かすむなどの症状が見られますが、進行するとやがて失明してしまうおそろしい病気でもあります。緑内障は自覚症状がないことでも知られており、手遅れになってから眼科を受診するケースも少なくありません。早期発見し治療をすれば失明を免れる可能性があるため、目に違和感を訴えているのなら早めに眼科を受診することをおすすめします。
高齢者の難聴を示す兆候
加齢とともに低下するのは、視力だけではありません。聴力も低下し、日常生活に悪影響をおよぼすことがあります。以下、高齢者の難聴を示す代表的な兆候をピックアップしたので、気になる方はチェックしてみましょう。
耳鳴りがする
難聴になると、今まで通りに音が聴こえないため、脳が音の不足を感じてしまいます。そのため、足りない音を補おうとして、新たな音を作り出してしまいます。これが耳鳴りです。具体的には、加齢性難聴が耳鳴りの原因だといわれています。加齢性難聴は、生活習慣病でも症状が進行するほか、騒音にさらされる生活を続けている方も、進行が早まるといわれています。
会話の聞き取りの悪さを訴える
会話の中で、同じことを何度も聞き返したり、もっと大きな声で喋ってほしいと訴えたりする方は、難聴である可能性があります。難聴により音を拾いづらくなっているため、このようなことが起きてしまうのです。声をかけたときに一度では振り向いてもらえないのも、難聴が関係している可能性があります。もし、頻繁にこのようなことがあるのなら、難聴を発症しているかもしれないと考えましょう。
生活での変化
たとえば、テレビを見るときにやたらとボリュームを上げるようになったら、難聴の可能性があります。今までと同じ音量ではテレビの音が聴こえないため、自然と音量を上げてしまうためです。また、スマホのアラームや体温計の音などが聴こえないのも、難聴かもしれません。大きい音にはしっかり反応できても、小さな音には反応できないのが難聴の特徴です。インターホンの音に気づけない、街中で人に声をかけられても気づかない、といった症状も考えられます。
老人性難聴と突発性難聴に注意する
高齢になればなるほど発症率が高くなるといわれている、老人性難聴。生活習慣病や心疾患、ストレスなど、さまざまな原因で発症するといわれています。老人性難聴は、音が聴こえにくくなるだけでなく、聴こえ方が変わってしまうため、相手が何を喋っているのか理解できなくなってしまいます。突発性難聴は、未だに原因が明確になっていない病気です。ウイルスやストレスが原因ともいわれており、発症すると突然耳が聴こえなくなってしまいます。基本的には、片側の耳のみ聴こえなくなりますが、めまいを誘発することがあるため注意が必要です。どちらも、耳が聴こえづらくなる病気であるため、日常生活にさまざまな弊害をもたらしかねません。そのため、難聴の症状が確認できたのなら、なるべく早めに医療機関で診察を受けましょう。難聴の状態で生活を送っていると、接近する自転車やバイクの音に気づけず、ケガをするリスクも考えられます。安全の面で考えても、早めに医療機関で受診することをおすすめします。
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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。