2021.08.16

廃用症候群の症状と介護者の対応について

最終更新日:2021.08.16

介護の最大の敵「廃用症候群」とは

手

廃用症候群とは、長期にわたる安静状態を続けたのち体に生じる、さまざまな変化、状態を指します。たとえば、1ヶ月ほど入院して安静にした場合、退院してもすぐに体は元通りに動かせません。筋力が低下しているからです。これも、廃用症候群のひとつです。次から、高齢者に見られる廃用症候群の症状と、対応策について詳しく見ていきましょう。

意欲の低下

高齢になると、若いころのように体を動かせなくなります。行動範囲が狭くなり、家に閉じこもってしまうケースもあります。自宅で何もせず座って過ごす時間が多くなり、あらゆることに関心をなくしてしまうのです。また、自分で何かをしようとしても、周りの人がさせてくれないケースも見受けられます。「高齢だから危ない」と決めつけてしまい、高齢者のやる気、意欲を削いでしまいます。これでは、意欲がどんどん低下してしまうのも仕方ありません。

対応「役割を持ってもらう」

何かしら役割を持ってもらうことで、生きるうえでの意欲を湧かせられるかもしれません。たとえば、家庭内で何か役割を持ってもらってはどうでしょうか。小さな孫を保育園へ迎えに行ってもらう、庭の草むしりをしてもらう、など。役割を与えることにより、「頼られている」と自信も取り戻せるかもしれません。その結果、より意欲的となり、いきいきと生活できるようになる可能性があります。これからの目標や、新しい趣味を見つけてもらうのもよいでしょう。

呼吸機能の低下

寝たきりの高齢者によく見られる症状です。寝たきり状態や寝たまま過ごすことの多い方の場合、呼吸筋と呼ばれる筋力の低下を招いてしまいます。その結果、肺活量が低下してしまい、呼吸機能全体の低下につながってしまうのです。また、背臥位のまま過ごす時間が多い方では、細気管支の低いところへ粘液が溜まってしまい、細菌感染を引き起こすおそれがあるといわれています。

対応「座位で呼吸する」

このような症状を改善するには、寝たままの姿勢で過ごす生活習慣を改善しなくてはなりません。もちろん、寝たきりでないといけない方もいますが、そうでない方ならなるべく体を起こし、座位で呼吸することを心がけましょう。座位で呼吸すれば、粘液が細気管支の下部へ重量で溜まることを回避できます。また、呼吸筋の衰えを防ぐことにもつながります。1人で座位になるのが難しいのなら、家族や介護者がサポートしてあげてください。

筋力の低下

廃用症候群の症状で、もっともポピュラーです。安静にして過ごす日々が長くなると、筋委縮が起きてしまい筋肉がやせ細ってしまいます。筋肉がやせ細ってしまうと、当然これまでのように筋力を使えません。筋肉は、日ごろから使っていないと簡単に衰えてしまいます。高齢者に限らず、若い方でも運動習慣をやめてしまうと、すぐに筋肉が衰え筋力が低下してしまいます。高齢者は、こうした症状がより顕著に現れてしまうでしょう。

対応「抗重力位をとる」

抗重力位とは、体にきちんと重力がかかるように座ることを指します。わかりやすくいえば、イスやベッドなどに腰かけて、骨盤を立ててしっかり足の裏を床に接地させて座っている状態です。これだけでも、体には重力による負荷がかかり、筋力の低下を最小限に留められます。体を普通に動かせるのなら、運動の機会を与えてあげるのもおすすめです。元気な方なら、スポーツを始めてみるのもよいかもしれません。そこまでするのが難しいのなら、日常の中でできるだけ体を動かせる機会を設けることです。自分で着替えてもらう、自力で起き上がってもらうなど、小さなことから取り組んでみてください。

腸の機能低下

胃腸の働きが少なくなると、腸の機能低下につながります。胃腸の働きが少なくなる原因として考えられるのは、食事量の減少です。また、嚥下障害の方では固形物でなくペースト状の食事を主にとるため、胃腸の働きが弱くなってしまいます。胃腸の機能が低下してしまうと、便秘になりやすいです。その結果、腸内にガスが溜まってしまったり、急な腹痛を生じたりしてしまいます。健康面を考えた場合、便秘は早期の改善が望ましいため、きちんと対策しなくてはなりません。

対応「便器に座らせる」

対処としてはシンプルで、とりあえず便器に座らせましょう。便意がなくても、規則的に便器へ座らせるようにすると、改善の兆しが見えるかもしれません。また、排便前にシャワートイレを使い、肛門に刺激を与えると、便意をもよおすことがあります。きちんと食事を3食とり、食物繊維や水分をしっかり補給することも忘れないでください。

褥瘡の発生

褥瘡とは、要するに床ずれのことです。寝たまま生活する日々が長くなると、床ずれを起こし皮膚がダメージを受けてしまいます。何の問題もなく体を動かせる方ならともかく、体力の衰えが顕著な高齢者の場合、寝返りを打てない可能性もあります。そのため、1日中ほとんど同じ姿勢のまま過ごしてしまうことも少なくありません。これでは、どうしても褥瘡が発生してしまいます。

対応「座る生活にする」

ベッドで寝る時間が多ければ多いほど、褥瘡が生じてしまうおそれがあります。そのため、寝たままで過ごす時間を少しずつ少なくし、なるべく座って過ごすようにすれば、褥瘡を未然に回避できます。完全に座ることができなくても、たとえば上半身だけベッドから起こすことなら可能でしょう。1人で体を起こせない方なら、周りの方がサポートしてあげてください。

骨粗鬆症

骨粗鬆症とは、骨がもろくなってしまう病気です。骨のカルシウム量が減少してもろくなることで、些細な衝撃でも骨折してしまうリスクがあります。高齢者の場合、トータルでの食事量の低下により、カルシウムの摂取量も低下してしまいます。その結果、カルシウム不足となり、骨粗鬆症を発症してしまうのです。また、運動不足も骨粗鬆症の原因となることがあるため、注意が必要です。

対応「カルシウムの摂取・歩行する」

普段の食事から、なるべくカルシウムを摂取するよう心がけましょう。カルシウムは、牛乳や魚などにたくさん含まれています。また、ビタミンDも、骨折リスクの低減に効果があるといわれているため、カルシウムと併せて積極的に摂取してください。食事だけでなく、散歩やウォーキングなど、適度な運動を日々の生活に取り入れるのもおすすめです。

廃用症候群の原因ついて

介護

原因として挙げられるのが、長期の入院です。長期入院すると筋力や体力が衰えてしまい、今まで通り体を動かせません。その結果、行動範囲が狭くなる、意欲をなくすといったことが起きてしまいます。また、周りの人が過度に介護をしてしまうと本人が体を動かす機会を奪われてしまい、それが廃用症候群を引き起こす原因となることもあります。

介護者が注意すべきこと

介護

過度に介護をするのは、本人の行動意欲を失わせてしまうおそれがあり、筋力の低下を招くリスクもあります。できることはなるべく本人に任せ、過度な介護は控えましょう。寝たきりで過ごす時間を、できるだけ少なくすることも大切です。自分で体を起こせるのなら、1日の中で何度か体を起こし、座って過ごす時間を増やしてください。介護サービスを利用するのもひとつの手です。介護サービスを利用すれば、適度に運動する機会が増え、他の利用者とも交流を図れます。家族の負担を軽減できるのもメリットといえるでしょう。

東海林 さおり
看護師
看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。