2021.07.28

高齢者の皮膚の乾燥や異常と介護者の対応について

最終更新日:2022.07.22
東海林 さおり
看護師

高齢者の皮膚について

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年齢を重ねるにつれ、肌の状態は大きく変化します。見た目や肌質が変化するだけではなく、皮膚のかゆみや乾燥、痛みなどを生じるようになるケースも少なくありません。高齢者の皮膚に乾燥など、どのようなことが起きているのか、正しく理解しておきましょう。

皮膚の乾燥による「老人性皮膚掻痒症」について

老人性皮膚掻痒症は、50代以上の男性によく見られます。加齢に伴う肌の乾燥が主な原因といわれていて、強いかゆみを感じることも大きな特徴です。老化により肌が本来もつバリア機能が低下し、些細な刺激にも敏感に反応してしまうためかゆみを感じてしまいます。肌の乾燥やかゆみだけで済むのならまだしも、人によっては痛みを生じてしまうこともあります。これは、かゆみの生じた部分を爪などで強くかきむしってしまい、痛くなってしまうためです。かゆいからと爪でかきむしってしまうと、傷ついた皮膚に湿疹ができてしまい、余計に症状が悪化してしまいます。そのため、かゆくても肌を爪でかきむしるのはNGです。

老人性皮膚搔痒症への対応

石鹸で洗い過ぎない

入浴時に、石鹸やボディソープなどで洗いすぎてしまうと、必要な皮脂まで洗い流してしまいます。皮膚の皮脂は、肌を守り潤いを保つためにも存在しています。洗い流してしまうと、乾燥しやすくなりかゆみの原因となってしまいます。こうした理由から、入浴時に石鹸などで洗いすぎてしまうのはNGです。使用する石鹸やボディソープも、できるだけ洗浄力の強すぎないものを選びましょう。また、洗うときに力を入れすぎてしまうのもNGです。ゴシゴシと肌をこすってしまうことで、乾燥やかゆみの原因になってしまうのです。刺激の強すぎない石鹸やボディソープを選び、やわらかいタオルなどで洗い、乾燥を防ぎましょう。

アルコールと香辛料は少量に

アルコールを飲むと、肌がかゆみを生じてしまうことがあります。同じように、香辛料をたくさん使用した料理も、かゆみの原因になることがあるため注意が必要です。もし介護をしている高齢者が肌にかゆみを訴えているのなら、食生活を見直してみてもいいかもしれません。日ごろから、アルコール飲料や香辛料をたくさん使用した料理を口にしていませんか?もし思い当たるのなら、食生活の見直しと改善が必要です。アルコールや香辛料を控えるのはもちろんですが、日ごろから栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。特に、高齢であればあるほど、栄養バランスは大切です。栄養に偏りがないよう、介護者がチェックしてあげてください。

室温と加湿を適度にする

部屋を適温に保つのはもちろん大事ですが、湿度にも気を配りましょう。部屋の湿度が低すぎると、皮膚の乾燥を招いてしまいます。冬季やエアコンを使用する環境下では、肌の乾燥を招きやすいため注意が必要です。必要に応じて、加湿器の導入を検討してください。石油ストーブの上に、水を入れたヤカンを置いて加湿する手もありますが、高齢の方がいる家ではリスクも考えられます。安全面を考えても、加湿器のほうがおすすめです。また、日ごろから、適時加湿を行うのも大切なポイントです。肌が乾燥しないよう、こまめな加湿を心がけましょう。また、保湿クリームを選ぶときは、肌質に合ったものを選ぶことも大切です。

化学繊維の肌着を綿にする

化学繊維の服を着たとき、チクチクと刺激を感じたことはありませんか?化学繊維は、皮膚に刺激を与えてしまうため、それがかゆみの原因となることがあります。もし、化学繊維の肌着を使用しているのなら、肌に優しい綿に変えてみましょう。肌着の素材だけでなく、サイズも重要です。肌着のサイズが合っていないと、必要以上に体を締め付けてしまい、かゆみの原因になってしまいます。高齢家族の肌着を、家族や介護者が購入しているのなら、定期的にサイズが合っているかどうか確認することをおすすめします。

高齢者に多い皮膚疾患

高齢者によく見られる皮膚疾患としては、疥癬や帯状疱疹、床ずれなどが挙げられます。発症する原因や具体的な症状、対策を把握しておきましょう。

疥癬

「かいせん」と読みます。ヒゼンダニと呼ばれるダニが皮膚に寄生することで発症する皮膚の疾患で、人から人への感染も起こります。感染を防ぐためにも、早期の発見と治療が必要です。疥癬の主な症状としては、強いかゆみが挙げられます。かゆみが原因で、不眠に陥ってしまうケースもあるため注意してください。また、手首や手の平、指の間などには、疥癬トンネルと呼ばれる皮疹ができてしまうこともあります。疥癬を防ぐには、日ごろから入念に手洗いをし、洗い終わったあとはしっかりと水分を拭き取ることです。家族に介護が必要な高齢者がいる場合、かゆみを生じていないか、日ごろからチェックしてあげましょう。

帯状疱疹

帯状疱疹ウイルスによって発症します。風邪などにより、体の免疫力が低下しているときに発症しやすい病気です。高齢の方は、体力と免疫力が低下していることが多く、帯状疱疹を発症することが少なくありません。肌にブツブツができてしまうのが代表的な症状です。赤い発疹が現れ、発熱やリンパの腫れなどを伴うこともあります。発疹ができたあとは、水泡が現れます。強い痛みとかゆみを生じることも多く、人によっては不眠になってしまうことも。発症したときは、すぐ医療機関で診察を受けましょう。予防するには、免疫力を低下させないことが何より大切です。栄養バランスの整った食事とたっぷりの睡眠をとり、規則正しい生活を送りましょう。

褥瘡(床ずれ)

「じょくそう」と読みます。一般的には、床ずれと呼ばれることが多く、体の一部へ持続的に圧力がかかることで生じます。同じ体勢で長時間寝ているときや栄養不良、湿潤などが原因で 褥瘡ができやすくなります。初期段階では、患部に赤みがさしている程度ですが、進行するとただれや水ぶくれなどが確認でき、痛みも生じるため注意が必要です。酷くなると、 褥瘡が皮下脂肪に達し、細菌への感染や神経組織の浸食なども起こります。寝たきりの要介護者は、同じ姿勢で寝続けることが多いため、 褥瘡ができやすい状態となっています。こまめに姿勢を変えてあげることを心がけましょう。短期間で悪化することもあるため、早めに医療機関で相談してください。

介護者が注意すべきこと

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高齢者が皮膚の乾燥や異常を訴えた際には、症状を確認したうえで医療機関へ相談することをおすすめします。大したことはない、大事にはいたらないと放置してしまうと、症状が悪化してしまうおそれがあります。皮膚への異常を起こさないよう、介護者が日ごろから観察を欠かさないことも大切なポイントです。最初はわずかな赤みでも、大きな皮膚疾患に進行するおそれがあるため、素人判断をせず必ず医師に相談してください。また、高齢者の中には、皮膚の異常を訴えない方もいます。我慢している方もいれば、異常に気づいていない方もいます。日ごろから、乾燥していないか、かゆいところがないか、皮膚に何か異常はないかなどを、介護者が聞いてあげることも大切です。肌の保湿も、本人ができないのなら介護者がサポートしてあげましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。