2021.07.29

認知症の方向けの入居サービス|グループホームとは

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは?

高齢者_夫婦

高齢者を受け入れている介護施設です。地域密着型の介護施設で、少人数の高齢者がひとつ屋根の下で共同生活を送ることが特徴です。認知症の高齢者を受け入れており、住み慣れた地域でのびのびと生活を送れるよう、さまざまなサービスを提供しています。グループホームには、複数の介護スタッフが常駐していますが、基本的に家事は入居者である高齢者が行います。最大9名でユニットを組み、家事を分担しながら共同で生活を送るのです。もともと、グループホームは国のモデル事業としてスタートしたのですが、少子高齢化が進むに伴い数多くの施設が誕生しました。厚生労働省が行った令和元年介護サービス施設・事業所調査の概況によれば、グループホームの事業所数は13,760となっています。

入居条件について

グループホームは、高齢者なら誰でも入居できるわけではありません。入居条件が定められており、満たしていないと入居はできないのです。65歳以上の方で、要支援2、または要介護1以上の認定を受けた方で、医師から認知症の診断を受けた方、施設と同じ市区町村に住民票がある方を対象としています。また、65歳未満で若年性認知症、初老期認知症と診断を受け、要支援2、要介護1以上の認定を受けた方も対象です。

費用について

費用は、入居するグループホームによって大きく変わります。以下、必要な費用をまとめました。

・初期費用 入居一時金/保証金
・月額費用 介護サービス料
・生活に必要な費用 家賃/光熱費/食費など

入居の際に必要な初期費用は、0~100万円とかなり幅があります。月額費用や生活費は、15~30万円程度が相場といわれています。入居する施設や、入居する本人の要介護度などにより、最終的な費用が大きく変わることは覚えておきましょう。

サービスの内容

具体的なサービスの内容を詳しく見ていきましょう。

配置基準

地域密着型の介護施設であることから、医療機関や入居型施設の敷地外で運営されています。1つのグループホームには2ユニットまで設けられ、1ユニットにつき5~9人で構成されます。入居者は基本的に個室に1人で入居することが一般的です。

設備

入居者が過ごす個室のほか、ほかの入居者たちと交流できる公共スペースが用意されています。調理を行うキッチンや食事をとるダイニングなどのほか、トイレや浴室といった、日常生活に必要な設備も整っています。ほかにも、レクリエーションルーム、リハビリルームなどが設置されているのも特徴です。

サービス内容

共同生活を送る高齢者たちを、サポートするためのサービスが提供されています。入浴や排泄、食事などのほか、機能訓練も行われます。介護を行う職員が常駐しているのも、グループホームの特徴です。医療スタッフが常駐することは少ないですが、近年では需要が高まりつつあるのが現実です。試験的に配置を始める施設も増加しており、今後さらに増えると考えられます。

グループホームのメリットデメリット

グループホーム

グループホームには、メリットもあればデメリットもあります。どちらも正しく理解しておきましょう。メリットとしては、以下のことが挙げられます。

高齢者が安心して暮らせる

介護職員が常駐し、高齢者の生活をサポートしてくれるため、安心して暮らせるメリットがあります。認知症ケア専門のスタッフもいるため、適切な対処が期待できます。そもそも、グループホームへ入居できるのは認知症を患っている方です。そのため、グループホームには認知症ケアに長けたスタッフが常駐しており、症状に合わせたケアを受けられます。

プライベートを確保できる

グループホームの入居者は、個室もしくは準個室で生活を送ります。いずれにしても、プライベート空間を確保できるため、プライバシーを侵される心配がありません。

住み慣れた地域で生活できる

グループホームは、地域密着型の福祉施設です。その地域で暮らしている方が利用できる福祉施設であるため、住み慣れた土地を離れる必要がありません。子供や孫たちと離れることなく日々の生活を送ることができ、家族や友人が気軽に訪れやすいのはメリットです。周りの変化に対応しにくい認知症患者にとって、環境が変わらないのは大きなメリットといえるでしょう。

楽しく共同生活が送れる

1ユニットは最大9人で構成され、他の入居者と共同生活を送るスタイルであるため、日ごろから交流ができ、楽しく生活できます。他の入居者と日常的にコミュニケーションをとることで、孤独感を和らげられ、認知症ケアにも効果が期待できます。一方のデメリットとしては、医療ケアの面で不安があることが挙げられます。グループホームには、医療スタッフの配置が義務付けられていません。近年では、独自に配置を始める施設も増えつつあるものの、義務ではないため多くの施設には医療スタッフがいません。また、定員が決められている施設であるため、入居したくてもできない可能性があります。なかなか空きができず、いつまで経っても入居できない、といったことになるかもしれません。入居するための費用が高いのもデメリットです。他の福祉施設に比べ費用が高くなるケースが多く、入居時に一時金を求められることも少なくありません。収入に応じた減免制度もなく、費用負担が大きくなりやすいのです。実際には、入居する施設によって費用は大きく異なるため、事前にきちんと確認しなくてはなりません。

グループホームが向いている方

高齢者

グループホームへの入居が向いているのは、以下のような高齢者だと考えられます。

認知症ケアが必要な方

グループホームは、同じユニットメンバーと共同生活を送るため、認知症ケアに向いているといわれています。

地元を離れたくない方

住み慣れた土地を離れたくない方にとって、グループホームはおすすめの選択です。地域密着型の介護施設であるため、地元や実家、子供や兄弟、孫などと離れずに生活を送れます。

楽しく共同生活を送りたい方

入居している他の高齢者たちとの共同生活は、新たな刺激をもたらしてくれるでしょう。交流を図りながら、和気あいあいと楽しい共同生活を送りたい方に適しています。

本人の状態によっては入居できない場合もある

ベッド

グループホームへ入居するには、条件を満たしていることが前提です。しかし、条件を満たしていても、集団生活に支障をきたすような方だと入居させてもらえない可能性があります。また、基本的にグループホームでは、医師から認知症の診断を受けていない方は、入居を断られてしまいます。その他にも、グループホームごとに異なり、独自の基準を設けているケースも少なくないため、事前によく確認したほうがよいでしょう。

入居前の事前チェックを忘れずに行おう

グループホームなら、介護を必要とする認知症高齢者が地元を離れる必要がなく、子供や孫といつでも会えます。頻繁に顔を見に行きたい、孫の顔を見せに行きたい、といった家族の方にも、グループホームは向いているのではないでしょうか。グループホームを選ぶときには、費用や介護体制などを、事前にきちんとチェックしたうえで決めることが大切です。特に、初期費用は0~100万円とかなり幅があるため、注意が必要です。入居する高齢者に、医療行為が必要となる可能性が高いのなら、医療体制が整っているところを選びましょう。費用や介護体制と併せて、医療体制もチェックし、安心して任せられるところを選ぶのが基本です。事前の見学に対応しているところがほとんどなので、必ず入居前の見学はしておきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。