2021.09.01

高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅|サービス付き高齢者向け住宅

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

サービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅として、サービス付き高齢者向け住宅があります。サービス付き高齢者向け住宅は、要支援や要介護高齢者が、さまざまなサービスを受けながら生活を送れる住宅です。介護福祉施設と混同されがちですが、サービス付き高齢者向け住宅とはさまざまな部分で違いがあります。基本的には、一般的な賃貸住宅と考えて差し支えありません。マンションやアパートのような建物の1室で暮らしますが、一般の賃貸住宅と異なるのは、介護職員や生活相談員などが常駐していることです。以前は、申し込みから入居まで相当な時間を要することもあったのですが、近年では緩和されつつあるようです。

入居条件

サービス付き高齢者向け住宅には、誰でも入居できるわけではなく、条件を満たしていなければ利用できません。これも、一般的な賃貸住宅との大きな違いといえるでしょう。基本的には、60歳以上の方を対象としており、60歳未満の方でも要介護や要支援の認定を受けていれば入居が可能です。なお、単身でも夫婦世帯でも、サービス付き高齢者向け住宅には入居できます。届出をしておらず、婚姻関係はないものの、実質夫婦と同様の関係にある、いわゆる内縁の妻、夫でも問題ありません。注意点として、施設による入居条件の違いが挙げられます。先ほどご紹介したのは、あくまで大原則であり、施設ごとに独自の入居条件が定められていることもあるのです。

受けられるサービス

サービス付き高齢者向け住宅には、職員が常駐またはいつでも連絡の取れるところに待機しています。その職員が、高齢者が生活を送るうえで発生する、さまざまな困りごとの相談に応じてくれるのです。スタッフが対応してくれるのは、大きく生活相談と安否確認が挙げられます。定期的にスタッフが部屋を訪問し、問題なく生活を送れているかどうかを確認してくれるのです。これなら、単身で暮らす方も、家族の方も安心です。生活相談は、日常生活におけるさまざまな困りごとを相談できます。相談を聞いたうえで、適切なアドバイスをしたり、具体的な解決策の模索をしたりしてくれます。なお、夜間にスタッフが常駐しない場合は、緊急通報システムにより対応してくれるケースがほとんどです。

設備・規模

居室の広さが決められているのも、サービス付き高齢者向け住宅ならではの特徴です。また、バリアフリー仕様となっているのも特徴です。高齢者が、安全かつ快適に暮らせることを第一に考えて設計しているため、手すりの設置や段差の解消など、バリアフリー仕様となっているのです。施設によっては、広々とした共有スペースが設けられていることもあります。施設内に、シアタールームやレストラン、温泉設備などが整っているところもあります。共有スペースが設置された施設なら、ほかの入居者と交流する機会が増えるため、楽しい生活を送れるでしょう。

費用について

お金

費用は、入居する施設により大きく変わります。以下、大まかにまとめました。

・初期費用 敷金/0~20万円前後
・月額利用料 11~20万円前後

なお、これは一般型と呼ばれるタイプの、サービス付き高齢者向け住宅における費用の目安です。介護型と呼ばれる、介護度が重い方向けの施設では、費用がもっと高くなる傾向があるため注意が必要です。

・初期費用 敷金など/数百~数千万円
・月額費用 15~40万円

介護型は、介護度の高い方を対象とし、なおかつ施設スタッフから直接介護サービスを受けられるため、費用が高めに設定されています。具体的なサービス内容は、施設により大きく異なるため、事前に必ず確認しておきましょう。

メリットデメリット

記入用紙

サービス付き高齢者向け住宅への入居を検討するにあたり、まずはメリットとデメリットをきちんと理解しておきましょう。

代表的なメリット

高齢者が自立した生活を送れる

一般的な賃貸住宅へ入居したときと同じように、ほぼ自由かつ自立した生活を送れます。外出制限をかけられる心配もありません。入居者同士が交流できる、談話室が設けられていることもあり、楽しく日々の生活を送れます。また、自分で介護サービスが選べることも利点です。

安心して暮らせる環境が整っている

サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造を採用しており、高齢者が安心して暮らせる環境が整っています。職員や相談員が常駐しているため、日常生活のサポートも受けられます。

高齢者に適している

一般的な賃貸住宅の場合、高齢を理由に入居を断られてしまうケースが少なくありません。収入面や健康面で不安があると判断されることが多いからです。サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が入居することを前提に建てられているため、そのような心配がないのです。

デメリット

入居者の介護度が高くなった場合、退去させられる可能性がある

医療スタッフの常駐が義務づけられておらず、夜間の見守りに対応していない施設も少なくありません。提供されるサービスの質も、施設によって大きく異なります。ただ、近年では24時間体制で介護職員が常駐するタイプのサービス付き高齢者向け住宅も増えています。

サービス付き高齢者向け住宅が向いている方

高齢者

・自立した生活を送りたい方
・自分に合った外部のサービスを利用したい方
・安心できる生活拠点を手に入れたい方

サービス付き高齢者向け住宅なら、住居部分は完全に独立しているため、介護職員や相談員からの干渉は必要最小限です。必要なときだけ相談ができ、サポートを受けられるため、自立してのびのびと暮らせることがメリットです。また、外部サービスを利用できるため、自分に合ったサービス事業者を選べるのもメリットといえるでしょう。高齢者が安心して暮らせるバリアフリー構造の住居であり、入居者はもちろん家族も安心です。

入居前にじっくりと検討しよう

サービス付き高齢者向け住宅へ入居するには、一定の条件をクリアしなくてはなりませんが、たくさんのメリットがあるのも事実です。安心して暮らせる環境で、自立した生活を送れるのは魅力的なポイントです。少子高齢化がますます進む日本において、サービス付き高齢者向け住宅は今後さらに数が増えると考えられます。施設により、設備や提供しているサービスが大きく異なるため、入居前にじっくりと検討して選びましょう。ほとんどのサービス付き高齢者向け住宅では、見学を受け付けています。自身はもちろん、家族と一緒に見学し、自分に合ったサービスが用意されているか、安心して暮らせる環境なのかどうかを確認のうえ、入居を検討してみましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。