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ものわすれがひどくなったら受診する
会話した内容を覚えていない、以前買ったものと同じものを購入したなど、ものわすれがひどくなったら、主治医に相談しましょう。ものわすれは、認知症でよく見られる症状のひとつだからです。「加齢によるものわすれとは違うの?」と思った方もいるかもしれません。たしかに、人の脳は加齢とともに機能が低下し、それが原因で物わすれしてしまうこともあります。しかし、加齢によるものわすれと、認知症のものわすれではさまざまな部分に違いがあるのです。加齢による物わすれは、加齢に伴う脳機能低下により起こります。しかし、このケースではものわすれしていることを本人が自覚しており、何かヒントがあれば思い出せることがほとんどです。そのため、日常生活に大きな支障をきたすこともありません。一方、認知症による物わすれは、「過去に起きたことそのもの」を忘れてしまいます。本人は物わすれしている自覚がなく、ヒントを与えられても思い出せません。行為やできごと自体を覚えていないのですから、思い出せないのです。
認知症が疑われる場合、どこに受診するべきか
普段からお世話になっている、主治医がいるのなら、相談にのってもらいましょう。主治医が認知症の診断もできるのならしてもらい、そのうえで必要に応じて専門医を紹介してもらってください。主治医がいないのなら、心療内科や精神科、脳神経外科などで診察を受けましょう。認知症の診察や治療を専門的に行っている医療機関もあるため、そのようなところなら安心です。自治体によっては、認知症の診断や治療が受けられる医療機関を、リストアップして公式ホームページで公開しています。一度チェックしてみましょう。診断や治療を受ける医療機関を選ぶときは、なるべく自宅から近いところにすることも大切です。場合によっては、何度も通院しなければならなくなる可能性もあるため、自宅からのアクセスがよい医療機関がおすすめです。なお、診断を受けるにあたり、本人に納得してもらわなければなりません。だまして診断を受けさせると、家族の関係性が悪化するおそれがあります。納得してもらえないようなら、本人が信頼する主治医や、地域包括支援センターの手も借りて説明し、理解してもらいましょう。
検査の方法
まずは医師との面談です。ケガや病気をしたときと同様に、医師から問診が行われます。どのような症状が見られるのか、これまでの病歴、大きなケガをしたことはあるかなど、さまざまなことを聞かれます。血液検査や心電図検査、エックス線撮影など、検査も行いますが、これはほかに疾患がないか確認するためです。v検査が終わると、神経心理学検査と脳画像検査の2つが行われます。神経心理学検査では、記憶について質問したり、簡単な計算をしたりします。また、本人に絵を描いてもらう、字を読んでもらうといったテストも一般的です。脳画像検査では、CTやMRI、SPECT、VSRADなどの方法を用いて、脳が萎縮していないか、脳血流の低下はないかなどをチェックします。
診断の際の注意
本人にとっても、認知症だと診断されるのはショックなことです。本人に、認知症の検査といわず、ただの健康診断などと偽って検査を受けさせた場合には、結果を聞かせたくないと考えるのが普通です。もし、本人に直接認知症だと伝えてほしくないときは、事前に医師へ相談しておきましょう。また、本人が聞いたら傷つきそうなことについても、事前に内容をメモなどにまとめ、前もって医師に伝えておくことをおすすめします。普段どのような症状が見られるのかを、正確に伝える必要があるため、事前にメモやノートにまとめておきましょう。覚えていたとしても、いざ診断のときになると、忘れたりうまく伝えられなかったりすることは珍しくありません。伝えやすいよう、日常的な言葉でまとめておきましょう。認知症と診断されたあと、すぐに治療を始めるのではなく、セカンドオピニオンも検討してみましょう。診断を受けた病院が、必ずしも正しいことを言っているとは限りません。もしかすると、認知症でないのに認知症だと誤診してしまう可能性もあるのです。ひとつの病院で診断を受け、すぐ治療開始となると、本人も納得できない方がいます。認知症治療は、本人が納得しなければスムーズに進みません。セカンドオピニオンも活用し、本人が納得したうえで治療を開始しましょう。
認知症と診断されても家族はあわてない
家族が認知症だと診断され、あわててしまうのは理解できます。自分の知っている家族でなくなってしまいそうな絶望感に、押しつぶされそうになってしまう方もいるでしょう。しかし、認知症だと診断されてもっともショックなのは本人です。そのことを忘れてはいけません。認知症だと診断された本人は、いずれ自分が自分でなくなる恐怖と戦わなければなりません。その恐怖は、本人以外誰もわからないのです。それを理解したうえで、家族は取り乱すことなく接してあげなくてはなりません。なお、診断結果を聞くときは、なるべく家族が付き添ってあげてください。1人では、今後に対する不安や恐怖で頭が真っ白になってしまい、医師から伝えられたことを覚えていられないかもしれません。絶望感を抱き、生きる意欲をなくしてしまうおそれもあります。ショックを受けるであろう家族に、しっかりと寄り添ってあげましょう。大切な家族が認知症になるのは、誰でもショックです。しかし、現実から逃げても問題は解決しません。認知症であることは紛れもない事実であるため、家族はきちんと受け入れる必要があります。家族が認知症を受け入れることで、適切な介護や生活のサポートができるのです。
認知症をよく知ることが大切
家族が認知症であることを受け入れるにあたり、まずは認知症という病気を正しく理解する必要があります。正しく理解していないと、認知症を患った家族に、不適切な接し方をしてしまうおそれがあるからです。認知症に関する誤解をしている方も少なくありません。危険だから家事はいっさいやらせない方もいますが、実際にはできることは自分でやってもらったほうが、生活に張り合いができいきいきと過ごせます。人となるべく会話させないほうがいい、というのも間違いです。積極的に人と交わることにより、生きる意欲を生み、はつらつと日々を過ごせるのです。認知症の家族と一緒に暮らし、適切なサポートをするためにも、まずは認知症について正しく理解することから始めましょう。
まずは認知症診断を受けよう
物わすれがひどいと感じたのなら、まずは医療機関での受診を検討しましょう。主治医に相談し、信頼できる専門医を紹介してもらったうえで、認知症診断を受けてください。認知症だと診断されてすぐに治療を始めるのではなく、セカンドオピニオンも検討してみましょう。認知症の治療は、本人の納得なくしてできません。誤診である可能性もあるため、セカンドオピニオンの活用は有効です。また、家族が認知症に関する正しい知識を身につけることも大切です。認知症がどのような病気なのかを正しく理解し、どのようにして接すればいいのかを知る必要があります。医師からのアドバイスだけでなく、書籍やネット上のサイトなど、日ごろから情報収集と勉強を忘れないでください。認知症だと診断された家族は、ひどいショックを受けるかもしれません。家族もショックかもしれませんが、それ以上に本人はショックを受けるでしょう。しかし、それを支えてあげられるのも、家族であるあなたたちです。それを忘れないでください。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。