2022.02.01

終活のススメ|認知症の方を支援する「成年後見制度」について詳しく解説

最終更新日:2022.03.03
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

成年後見制度

成年後見制度

認知症などにより判断能力が不十分な方々(以下「本人」といいます)のために、本人の権利を守る支援者(以下「成年後見人」といいます)を選び、その人に本人を支援してもらう法律上の制度のことを、成年後見制度といいます。成年後見制度には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。

利用するメリット

成年後見制度を利用するメリットを3つ挙げるとすれば、次のようになります。
・成年後見人に財産を管理してもらうことができる。
・成年後見人に契約などを代表してもらうことができる。
・家庭裁判所や成年後見監督人(成年後見人を監督する人のこと)によって成年後見人の行動は監督されているから、不正の心配が少ない。

成年後見制度を利用する大きなメリットは、成年後見人に財産を管理してもらうことができることと、契約などを代表してもらうことができる点が挙げられます。認知症になると、例えば介護施設に入所するための契約などをご自身で行うことが難しくなります。また、結ぼうとする契約が不利益なものであっても、その判断が難しいために、つい契約を結んでしまい、高額の商品を購入してしまうなどというおそれもあります。このようなときに成年後見制度を利用していると、本人に代わって成年後見人が財産を管理したり、契約を結んでもらったりすることができます。また、成年後見人は、家庭裁判所や後見監督人によって監督されていますので、不正の心配が少ないです。

利用するデメリット

成年後見制度を利用するデメリットを3つ挙げるとすれば、次のようになります。
・成年後見監督人がいても、成年後見人による不正のリスクはゼロではない。
・成年後見制度を利用する手続が、少し難しい。
・成年後見人に報酬を支払う場合がある。

成年後見人によるトラブルというのは、少なからずあるのが現実です。成年後見人に不正防止についてお話しをすると、疑っているようで気が引けるとか、成年後見制度の利用を説明したら「不正が起きたら嫌だから」という理由で利用を拒むというケースもあります。しかし、このような理由で成年後見制度の利用を控えるのは本人の保護という視点では望ましくありません。そこで昨今では、不正に対する保険の充実化が行われています。成年後見制度の利用手続に必要な書類は、申立書、診断書、手数料、郵便切手、本人の戸籍謄本などです。複雑な手続は、専門家に相談して依頼するとよいでしょう。また、成年後見人に報酬を支払う場合があります。成年後見制度を利用するために、多少の貯えが必要です。

成年後見制度の種類

成年後見制度の種類

さて、成年後見制度には2種類あります。それは、「法定後見制度」と「任意後見制度」です。成年後見制度の主なメリットは、成年後見人に①財産を管理してもらうことができ、②契約などを代表してもらうことができる点です。これに加えて、法定後見制度と任意後見制度はそれぞれ次のようなメリットが付け加えられます。

法定後見制度

法定後見制度とは、民法という法律に基づく成年後見制度です。法定後見制度では、成年後見人に財産を管理してもらうこと、契約などを代表してもらうことに加え、本人がしてしまった契約を原則として取り消すことができます。認知症などの方は、契約の内容を判断することが難しく、悪徳商法の被害にあうおそれがあります。そのような場合に泣き寝入りをすることを法律は認めません。そこで民法には、本人や成年後見人などが契約を取り消すことができると定められています。この点が、法定後見制度の特徴です。

任意後見制度

任意後見制度は、法定後見制度と異なります。成年後見人が契約を取り消すことはできません。ではどのような制度かというと、本人がまだ認知症ではなく十分な判断能力があるときに、あらかじめ信頼できる方との間で、認知症になった後の本人の生活・療養看護・財産の管理をしてもらい、契約などを代表してもらう契約です。本人がまだ判断能力があるうちに、認知症になった後のことをあらかじめ契約で決めておくことができるという点が、任意後見制度の特徴です。

見守り契約とは

見守り契約

さて、成年後見制度のメリットは成年後見人に①財産を管理してもらうことができ、②契約などを代表してもらうことができる点です。そして法定後見制度は契約を取り消すことができ、また、任意後見制度は認知症などになる前にする契約ということをお伝えしました。任意後見制度についてもう少し踏み込んでみましょう。一般的に、人はある日突然判断能力がなくなることはあまりありません。認知症になり、それがだんだんと進行することにより、判断能力がなくなると考えられています。そうすると、その認知症の進行中についても見守ってもらいたいという需要がでてきます。そこで役に立つのが、見守り契約です。これはいわば、判断能力がある時期と任意後見制度との橋渡し的存在です。

見守り契約のメリット

見守り契約とは、任意後見制度が始まるまでの間に、支援する人が定期的に本人と電話連絡や自宅訪問をするなどして、本人の健康状態や生活状況を確認し、任意後見制度をいつから始めるのが適切かを判断するための契約です。特に、1人暮らしの高齢者の方にとっては重要な契約の一つです。3つメリットを挙げるとすれば、次のことが挙げられます。
・身近に頼れる親族がいない場合に、見守ってもらうことができる。
・比較的手軽に契約書を作ることができる。
・契約の内容はある程度自由に決めることができる。

任意後見制度を利用するには、公正証書(公証人と呼ばれる法律に長く携わった方が作る証書のこと)を作成しなければなりませんが、見守り契約はそのような条件はありません。内容についてもある程度自由に決められます。例えば、「1か月に1回、本人の自宅を訪問して、本人と面談する」とか「訪問日は毎月15日とする」なども記載できます。

見守り契約のデメリット

見守り契約のデメリットを挙げるとすれば、次の2つが挙げられます。
・あまり有名ではない。
・契約の内容をはっきり決めないとトラブルになる。

見守り契約は、あまり有名ではありません。また、必ずしも公正証書で作る必要はありません。そのため、契約の内容についてしっかりと打ち合わせをしておかないと、後々トラブルになる可能性があります。せっかく信頼できる方と契約をしたのに、見守り契約がもとでトラブルになるのは避けたいところです。お互いの認識に間違いがないように、しっかりと確認しながら契約を結びましょう。

まずは専門家に相談してみよう

専門家に相談

これまで、成年後見制度と見守り契約について説明しました。成年後見制度は、専門家に相談するとよりその効果を発揮します。専門家には社会福祉士、弁護士、司法書士や行政書士などの法律の専門家がいます。また、成年後見制度については保険の充実化も図られており、銀行、保険会社などにご相談すると新しい情報が得られるかもしれません。老いは誰にでも訪れるものですが、それをしっかりと受け止め、事前に準備することで、周りの人と調和することができます。その手助けができる専門家に、まずは相談してみて、不安なことを整理してみましょう。

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増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。